1 営業秘密侵害を行った者の民事責任|損害賠償・差止
2 営業秘密侵害→信用回復措置
3 営業秘密侵害を行った者の刑事責任|不正競争防止法違反
4 営業秘密侵害→会社(雇用主)の責任;ノーマル
5 営業秘密侵害→会社(雇用主)の責任;特大=3億円以下の罰金
6 営業秘密侵害→不正競争防止法上の損害額推定規定
7 中途採用の際に会社が営業秘密侵害のリスク抑制方法

1 営業秘密侵害を行った者の民事責任|損害賠償・差止

<典型例>

営業職の従業員Aが勤務先Bの顧客名簿を持ちだして,その後別の会社で活用した

営業秘密を不正に使用した者はいくつかの法律的な責任を負います。
民事上,これによって生じた損害について,損害賠償責任が生じます(民法709条,不正競争防止法2条,4条)。
侵害された会社Bから,不正行為について差止請求を受けることもあり得ます(不正競争防止法3条)。
さらに,取引先に対して,不正行為を説明する,などの信用回復措置を講じる義務が認められることもあります(不正競争防止法14条)。

2 営業秘密侵害→信用回復措置

営業秘密を不正に使用した場合,金銭的な賠償以外に,信用回復措置を講じる義務が認められることもあります(不正競争防止法14条)。
この制度の着目点は取引先その他の関係者が,『加害者がノウハウを持っている』と誤解しているというところです。
関係者の,この誤解を解消しないと,関係者は誤解を前提として,今後も加害者と取引をしようと判断することになりましょう。
結局,不正行為発覚後も,被害者の損害は生じ続ける,ということになります。
そこで,関係者に真相,つまり,不正な行為があったことを知らせる,ということが必要になってくるのです。
条文上は営業上の信用を回復するのに必要な措置という表現です。
実際には,裁判例(判決文)において,具体的な方法が指定されます(裁判例1,裁判例2,裁判例3,裁判例4)。

<信用回復措置の内容の例>

・新聞,業界紙への謝罪広告掲載
・関係者への個別的な謝罪の通知

3 営業秘密侵害を行った者の刑事責任|不正競争防止法違反

一定の態様の行為については,刑事的な責任として,罰則の対象となります。
不正競争防止法の『営業秘密侵害』の刑事罰の主なものをまとめます。

<『営業秘密』の定義>

秘密として管理されている生産方法,販売方法その他の事業活動に有用な技術上or営業上の情報であって,公然と知られていないもの
※不正競争防止法2条6項

<不正競争防止法|営業秘密に関する罪>

あ 共通する要件(主観)

不正の利益を得る目的or保有者に損害を加える目的

い 個別的犯罪類型

ア 『取得』
詐欺等行為or管理侵害行為により,営業秘密を取得した者
イ 『使用・開示』
詐欺等行為or管理侵害行為により取得した営業秘密を,使用or開示した者
ウ 『預かった者の任務違反による領得』
営業秘密を保有者から示された者であって,その営業秘密の管理に係る任務に背き,次のいずれかの方法で領得した者
・営業秘密の記録媒体or物件を横領する方法
・営業秘密の記録媒体or物件の複製を作成する方法
・営業秘密の記録媒体oの記載・記録であって,消去すべきものを消去せず,かつ,消去したように仮装する方法

う 法定刑

懲役10年以下or罰金1000万円以下
※不正競争防止法21条1項

<補足;用語の定義>

あ 『詐欺的行為』の定義

人を欺き,人に暴行を加え,又は人を脅迫する行為

い 『管理侵害行為』の定義

財物の窃取,施設への侵入,不正アクセス行為(不正アクセス禁止法2条4項)

4 営業秘密侵害→会社(雇用主)の責任;ノーマル

<事例設定>

従業員Aは会社Bで,営業職として働いていた
AはBを退職した
この時,Bの顧客名簿を無断で持ち出した
Aは会社Cに就職した
Cの営業において,Bの顧客名簿を使っていた
Bの上司や同僚など,B本人以外はそのような不正なことが行われていたことを知らなかった

このような場合でも雇用主(会社C)も法的責任を負うことがあります。
上司その他の責任者が違法行為に気付いていたような場合は,会社の判断での会社としての違法行為という扱いになります。
会社と従業員個人による共同不法行為として,会社も損害賠償責任を負います(民法719条,不正競争防止法4条)。
刑事罰も,従業員個人と同様になります(不正競争防止法21条1項)。
ただし,従業員が秘密情報を取得した態様が悪質な場合は,会社が負う刑事責任は従業員よりも特に重くなる場合があります(不正競争防止法22条)。

会社(責任者)は知らなかったという場合でも,これらの責任を負わないとは限りません。
過失により知らなかったという場合でも損害賠償責任は生じます(民法709条,不正競争防止法4条)。
刑事責任は,故意がある場合だけが対象です。
過失に過ぎない場合は刑事罰は適用されません。
ただし,現実的に知らなかった知っていたということは間接的な証拠で判断します。
証拠の状況によっては,不利な事実認定を元に,責任が認められてしまうリスクもあります。

5 営業秘密侵害→会社(雇用主)の責任;特大=3億円以下の罰金

<事例設定>

従業員Aは会社Bで,営業職として働いていた
AはBを退職した
この時,Bの顧客名簿を無断で持ち出した
Aは会社Cに就職した
Cの営業において,Bの顧客名簿を使っていた

このケースで,会社Cが特に思い法的責任を負うことがあります。
まず,従業員が秘密情報を取得する方法,態様が前職における適法な業務であれば,会社の特大の刑事罰は適用されません。
一定の違法行為によって情報を取得した,という場合については,会社の法定刑が3億円以下の罰金と,一気に特大なものとなります(不正競争防止法22条)。
この条文上,従業員の情報取得の態様が指定されています。
条文の構造がちょっと複雑なので,次に典型例としてまとめます。

<会社が負う特大の刑事罰の対象と法定刑>

あ 対象行為

従業員が前の勤務先での適法な業務以外の手段で秘密情報を取得した場合

い 法定刑

法定刑 法人については3億円以下の罰金

適法な業務以外の手段での秘密情報取得手段の例>

あ 転職後の会社内PCから前職PCに不正アクセスして営業秘密を取得した

従業員=21条1項1号該当
会社=22条1項適用

い さらに,これを転職後の業務上使用した

従業員=21条1項2号該当
会社=22条1項適用

う 前職を退職する際に,自分が業務上関与して知った会社の営業秘密を自分のPC等に複製して持ち出した

これを転職先で上司となる者に渡した=21条1項4号該当
その者(上司)が業務上利用した=21条1項7号該当→会社=22条1項適用

6 営業秘密侵害→不正競争防止法上の損害額推定規定

一般的に損害の算定については,差額説が取られています。
不法行為がなかった場合,と,不法行為があった場合,の2つの状況を算定,想定して,その差額を損害とするものです。
実務上,この算定は多くの前提の設定が必要であり,明確に算定できないことが多いです。
そこで,算定すること自体の負担を軽減するため,不正競争防止法に推定規定があります(不正競争防止法5条)。
推定規定は被害者が請求時に用いることができるとされています。
あくまでも算定方法の選択肢の1つです。

<不正競争防止法による損害額の推定;抜粋>

あ 不正競争防止法5条1項

加害者が,不正競争によって侵害行為を組成した物を譲渡した場合
損害額 = 1個あたりの利益 × 譲渡数量

い 不正競争防止法5条2項

不正競争による侵害一般
損害額 = 加害者が得た利益

7 中途採用の際に会社が営業秘密侵害のリスク抑制方法

中途採用の場面では,会社としては,求職者の経験,前職でのノウハウ,に期待しているのが通常です。
一方,このような経験,知識,の程度が営業秘密の一線を超えてしまうと,法的責任が生じます。
理論的には会社が一切関知しないことであれば,会社自身が責任を負うということはないことになっています。
しかし,実際には会社自体の責任が肯定される,↓のようなリスクは存在します。

<会社自体の責任が肯定されるリスクの要因>

あ 『知るべきだった』と判断される

過失が認められる

い 証拠上『知っていたと認められる』

故意が認められる

ここから逆算すれば,リスク軽減策となります。
つまり,会社として営業秘密侵害がないかどうかを調査,判断する,というプロセスを持つということです。

<会社自体の責任発生を避けるリスク軽減策>

・採用選考時に,求職者が前の勤務先で調印・提出した秘密保持に関する誓約書等の書面の提出を求める
 →具体的には,前の勤務先に,求職者,または採用検討中の事業主から連絡して,書面をもらうことを要請する,という方法もあります。
・前の勤務先の営業秘密を使用・開示しない旨の誓約書の提出を求める
・採用後の業務遂行時の業務内容について,上司(責任者)が把握する
 →営業秘密の侵害行為がないか,確認する

条文

[不正競争防止法]
(定義)
第二条  この法律において「不正競争」とは、次に掲げるものをいう。
一~三(略)
四  窃取、詐欺、強迫その他の不正の手段により営業秘密を取得する行為(以下「不正取得行為」という。)又は不正取得行為により取得した営業秘密を使用し、若しくは開示する行為(秘密を保持しつつ特定の者に示すことを含む。以下同じ。)
五  その営業秘密について不正取得行為が介在したことを知って、若しくは重大な過失により知らないで営業秘密を取得し、又はその取得した営業秘密を使用し、若しくは開示する行為
六  その取得した後にその営業秘密について不正取得行為が介在したことを知って、又は重大な過失により知らないでその取得した営業秘密を使用し、又は開示する行為
七  営業秘密を保有する事業者(以下「保有者」という。)からその営業秘密を示された場合において、不正の利益を得る目的で、又はその保有者に損害を加える目的で、その営業秘密を使用し、又は開示する行為
八  その営業秘密について不正開示行為(前号に規定する場合において同号に規定する目的でその営業秘密を開示する行為又は秘密を守る法律上の義務に違反してその営業秘密を開示する行為をいう。以下同じ。)であること若しくはその営業秘密について不正開示行為が介在したことを知って、若しくは重大な過失により知らないで営業秘密を取得し、又はその取得した営業秘密を使用し、若しくは開示する行為
九  その取得した後にその営業秘密について不正開示行為があったこと若しくはその営業秘密について不正開示行為が介在したことを知って、又は重大な過失により知らないでその取得した営業秘密を使用し、又は開示する行為
十~十五(略)
2~5(略)
6  この法律において「営業秘密」とは、秘密として管理されている生産方法、販売方法その他の事業活動に有用な技術上又は営業上の情報であって、公然と知られていないものをいう。
7~10(略)

(差止請求権)
第三条  不正競争によって営業上の利益を侵害され、又は侵害されるおそれがある者は、その営業上の利益を侵害する者又は侵害するおそれがある者に対し、その侵害の停止又は予防を請求することができる。
2  不正競争によって営業上の利益を侵害され、又は侵害されるおそれがある者は、前項の規定による請求をするに際し、侵害の行為を組成した物(侵害の行為により生じた物を含む。第五条第一項において同じ。)の廃棄、侵害の行為に供した設備の除却その他の侵害の停止又は予防に必要な行為を請求することができる。

(損害賠償)
第四条  故意又は過失により不正競争を行って他人の営業上の利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責めに任ずる。ただし、第十五条の規定により同条に規定する権利が消滅した後にその営業秘密を使用する行為によって生じた損害については、この限りでない。

(損害の額の推定等)
第五条  第二条第一項第一号から第九号まで又は第十五号に掲げる不正競争(同項第四号から第九号までに掲げるものにあっては、技術上の秘密(秘密として管理されている生産方法その他の事業活動に有用な技術上の情報であって公然と知られていないものをいう。)に関するものに限る。)によって営業上の利益を侵害された者(以下この項において「被侵害者」という。)が故意又は過失により自己の営業上の利益を侵害した者に対しその侵害により自己が受けた損害の賠償を請求する場合において、その者がその侵害の行為を組成した物を譲渡したときは、その譲渡した物の数量(以下この項において「譲渡数量」という。)に、被侵害者がその侵害の行為がなければ販売することができた物の単位数量当たりの利益の額を乗じて得た額を、被侵害者の当該物に係る販売その他の行為を行う能力に応じた額を超えない限度において、被侵害者が受けた損害の額とすることができる。ただし、譲渡数量の全部又は一部に相当する数量を被侵害者が販売することができないとする事情があるときは、当該事情に相当する数量に応じた額を控除するものとする。
2  不正競争によって営業上の利益を侵害された者が故意又は過失により自己の営業上の利益を侵害した者に対しその侵害により自己が受けた損害の賠償を請求する場合において、その者がその侵害の行為により利益を受けているときは、その利益の額は、その営業上の利益を侵害された者が受けた損害の額と推定する。
3  第二条第一項第一号から第九号まで、第十二号又は第十五号に掲げる不正競争によって営業上の利益を侵害された者は、故意又は過失により自己の営業上の利益を侵害した者に対し、次の各号に掲げる不正競争の区分に応じて当該各号に定める行為に対し受けるべき金銭の額に相当する額の金銭を、自己が受けた損害の額としてその賠償を請求することができる。
一  第二条第一項第一号又は第二号に掲げる不正競争 当該侵害に係る商品等表示の使用
二  第二条第一項第三号に掲げる不正競争 当該侵害に係る商品の形態の使用
三  第二条第一項第四号から第九号までに掲げる不正競争 当該侵害に係る営業秘密の使用
四  第二条第一項第十二号に掲げる不正競争 当該侵害に係るドメイン名の使用
五  第二条第一項第十五号に掲げる不正競争 当該侵害に係る商標の使用
4  前項の規定は、同項に規定する金額を超える損害の賠償の請求を妨げない。この場合において、その営業上の利益を侵害した者に故意又は重大な過失がなかったときは、裁判所は、損害の賠償の額を定めるについて、これを参酌することができる。

(信用回復の措置)
第十四条  故意又は過失により不正競争を行って他人の営業上の信用を害した者に対しては、裁判所は、その営業上の信用を害された者の請求により、損害の賠償に代え、又は損害の賠償とともに、その者の営業上の信用を回復するのに必要な措置を命ずることができる。

(罰則)
第二十一条  次の各号のいずれかに該当する者は、十年以下の懲役若しくは千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
一  不正の利益を得る目的で、又はその保有者に損害を加える目的で、詐欺等行為(人を欺き、人に暴行を加え、又は人を脅迫する行為をいう。以下この条において同じ。)又は管理侵害行為(財物の窃取、施設への侵入、不正アクセス行為(不正アクセス行為の禁止等に関する法律 (平成十一年法律第百二十八号)第二条第四項 に規定する不正アクセス行為をいう。)その他の保有者の管理を害する行為をいう。以下この条において同じ。)により、営業秘密を取得した者
二  詐欺等行為又は管理侵害行為により取得した営業秘密を、不正の利益を得る目的で、又はその保有者に損害を加える目的で、使用し、又は開示した者
三  営業秘密を保有者から示された者であって、不正の利益を得る目的で、又はその保有者に損害を加える目的で、その営業秘密の管理に係る任務に背き、次のいずれかに掲げる方法でその営業秘密を領得した者
イ 営業秘密記録媒体等(営業秘密が記載され、又は記録された文書、図画又は記録媒体をいう。以下この号において同じ。)又は営業秘密が化体された物件を横領すること。
ロ 営業秘密記録媒体等の記載若しくは記録について、又は営業秘密が化体された物件について、その複製を作成すること。
ハ 営業秘密記録媒体等の記載又は記録であって、消去すべきものを消去せず、かつ、当該記載又は記録を消去したように仮装すること。
四  営業秘密を保有者から示された者であって、その営業秘密の管理に係る任務に背いて前号イからハまでに掲げる方法により領得した営業秘密を、不正の利益を得る目的で、又はその保有者に損害を加える目的で、その営業秘密の管理に係る任務に背き、使用し、又は開示した者
五  営業秘密を保有者から示されたその役員(理事、取締役、執行役、業務を執行する社員、監事若しくは監査役又はこれらに準ずる者をいう。次号において同じ。)又は従業者であって、不正の利益を得る目的で、又はその保有者に損害を加える目的で、その営業秘密の管理に係る任務に背き、その営業秘密を使用し、又は開示した者(前号に掲げる者を除く。)
六  営業秘密を保有者から示されたその役員又は従業者であった者であって、不正の利益を得る目的で、又はその保有者に損害を加える目的で、その在職中に、その営業秘密の管理に係る任務に背いてその営業秘密の開示の申込みをし、又はその営業秘密の使用若しくは開示について請託を受けて、その営業秘密をその職を退いた後に使用し、又は開示した者(第四号に掲げる者を除く。)
七  不正の利益を得る目的で、又はその保有者に損害を加える目的で、第二号又は前三号の罪に当たる開示によって営業秘密を取得して、その営業秘密を使用し、又は開示した者
2  次の各号のいずれかに該当する者は、五年以下の懲役若しくは五百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
一  不正の目的をもって第二条第一項第一号又は第十三号に掲げる不正競争を行った者
二  他人の著名な商品等表示に係る信用若しくは名声を利用して不正の利益を得る目的で、又は当該信用若しくは名声を害する目的で第二条第一項第二号に掲げる不正競争を行った者
三  不正の利益を得る目的で第二条第一項第三号に掲げる不正競争を行った者
四  不正の利益を得る目的で、又は営業上技術的制限手段を用いている者に損害を加える目的で、第二条第一項第十号又は第十一号に掲げる不正競争を行った者
五  商品若しくは役務若しくはその広告若しくは取引に用いる書類若しくは通信にその商品の原産地、品質、内容、製造方法、用途若しくは数量又はその役務の質、内容、用途若しくは数量について誤認させるような虚偽の表示をした者(第一号に掲げる者を除く。)
六  秘密保持命令に違反した者
七  第十六条、第十七条又は第十八条第一項の規定に違反した者
3  第一項及び前項第六号の罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。
4  第一項第二号又は第四号から第七号までの罪は、詐欺等行為若しくは管理侵害行為があった時又は保有者から示された時に日本国内において管理されていた営業秘密について、日本国外においてこれらの罪を犯した者にも適用する。
5  第二項第六号の罪は、日本国外において同号の罪を犯した者にも適用する。
6  第二項第七号(第十八条第一項に係る部分に限る。)の罪は、刑法 (明治四十年法律第四十五号)第三条 の例に従う。
7  第一項及び第二項の規定は、刑法 その他の罰則の適用を妨げない。

第二十二条  法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、前条第一項第一号、第二号若しくは第七号又は第二項に掲げる規定の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人に対して三億円以下の罰金刑を、その人に対して本条の罰金刑を科する。
2  前項の場合において、当該行為者に対してした前条第一項第一号、第二号及び第七号並びに第二項第六号の罪に係る同条第三項の告訴は、その法人又は人に対しても効力を生じ、その法人又は人に対してした告訴は、当該行為者に対しても効力を生ずるものとする。
3  第一項の規定により前条第一項第一号、第二号若しくは第七号又は第二項の違反行為につき法人又は人に罰金刑を科する場合における時効の期間は、これらの規定の罪についての時効の期間による。

[民法]
(不法行為による損害賠償)
第七百九条  故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

(共同不法行為者の責任)
第七百十九条  数人が共同の不法行為によって他人に損害を加えたときは、各自が連帯してその損害を賠償する責任を負う。共同行為者のうちいずれの者がその損害を加えたかを知ることができないときも、同様とする。
2  行為者を教唆した者及び幇助した者は、共同行為者とみなして、前項の規定を適用する。

判例・参考情報

(判例1)
[平成23年11月30日 東京地裁 平22(ワ)11017号 不正競争防止法に基づく差止め等請求、不正競争行為差止等請求事件]
主文(抜粋)
原告Aは,別紙送付先リスト記載1~19,42~634の各送付先に対し,別紙通知文を送付せよ。
理由(抜粋)
(6) 被告Bの信用を回復する措置が必要か(争点(3)オ)について
 上記(5)イのとおり,原告Aの不正競争行為によって被告Bの信用が低下したと認められる上,原告Aは,平成22年2月下旬以降,「C」の名称を使用し,旧Cの会員等に対し,文書を送付していること(前記1(8))を考慮すると,原告Aに対し,信用回復の措置を命ずるのが相当である。
 そして,証拠(甲130)によれば,上記文書の送付は,被告Bの顧客名簿(旧C会員の会名簿,受験団体名簿,大会参加団体名簿,通信教育顧客名簿等)を利用したものであると認められる。また,弁論の全趣旨により,別紙送付先リスト記載1~19,42~634の各送付先が毎日新聞社,関係省庁・自治体,被告Bの取引先,旧Cの会員・受験団体・受講生等であると認められるから,原告Aに対し,当該各送付先に限って,別紙通知文の送付を命じるのが相当である。
 被告Bの主張する送付先のうち,①別紙送付先リスト記載20及び21の各送付先は郵便関係の省庁であって,被告Bとはその限度で関係があるにすぎないし,②同リスト記載21~41の各送付先は審査員であって,第三者的な立場を有する者であり,③同リスト記載635~638の各送付先は原告Aを後援するものであって,被告Bとは関係がないと解されるから,当該各送付先に対して通知文を送付する必要性があるとはいえない。また,通知文の内容については,信用回復の措置に必要な限度にとどめるため被告Bの求める別紙通知文(案)の内容を別紙通知文のとおりに変更した。
 したがって,被告Bの原告Aに対する不正競争防止法14条に基づく信用回復の措置請求は,別紙送付先リスト記載1~19,42~634の各送付先に対し,別紙通知文を送付させる限度で理由がある。

(判例2)
[平成19年 6月11日 大阪地裁 平18(ワ)5437号 信用回復措置等請求事件]
主文(抜粋) 
被告は,次の刊行物に各1回ずつ,別紙謝罪広告目録記載の文案により,被告会社名と被告代表取締役名は4号活字,その他の部分は5号活字を使用した広告を掲載せよ。
  (1) 雑誌F(出版社D)
  (2) 雑誌G(出版社E)
理由(抜粋)
5 信用回復措置について
 前記4(2)アないしウ認定の部品Hの交換部品市場の状況からすれば,本件においては,損害の賠償とともに,原告の営業上の信用を回復するのに必要な措置として,本件広告が掲載された雑誌(「F」及び「G」)に,別紙謝罪広告目録のとおりの広告を掲載させることが相当である。「I」は,本件広告掲載紙ではないので,信用回復措置としての広告掲載は相当とは認められない。

(判例3)
[平成19年 5月25日 東京地裁 平17(ワ)8140号 不正競争行為差止等請求事件]
主文(抜粋) 
3 被告は,次の被告の商品説明会の出席企業に対し,別紙裁判所指定信用回復措置目録1記載の訂正文を,本判決確定の日から10日以内に送付せよ。
  ① 平成16年2月4日東京,
  ② 同月19日福岡,
  ③ 同年4月16日大阪
4 被告は,次の被告の商品説明会の出席企業に対し,別紙裁判所指定信用回復措置目録2記載の訂正文を,本判決確定の日から10日以内に送付せよ。
  ① 平成17年4月7日名古屋,
  ② 同月13日長野(松本),
  ③ 同月18日仙台,
  ④ 同月20日盛岡,
  ⑤ 同月22日八戸,
  ⑥ 同月25日青森
理由(抜粋)
3 信用回復措置
  (1) 平成16年
   ア 告知行為1(ロウの固さ)が告知されただけでは,信用回復措置の必要性は認められない。
   イ しかしながら,Aによる告知行為2は虚偽であり,その内容は,ローソクの根本に関わる火災原因についてされたものであるから,その違法性は高いといわなければならない。したがって,告知からの時間の経過等の事情を考慮しても,信用回復措置を講ずる必要があると認められる。
   ウ 告知の相手方は相当数に及ぶが,被告の特定の商品説明会への出席者と特定されているから,新聞への掲載の必要性までは認められず,Aがこれらの発言をしたと認定できる東京,福岡及び大阪の参加者に対し,別紙裁判所指定信用回復措置1の訂正文を手紙形式で送付することで足りると認められる。
 1社から数人の出席者があった場合は,当該参加社あて1通の訂正文を送付すれば足りる。
   エ 原告の信用回復の措置としての謝罪広告の掲載を求める請求の中には,上記訂正文の送付の請求も含まれているものと解する。
  (2) 平成17年
   ア 告知行為4も,虚偽であり,その告知内容は,ローソクの根本に関わる火災原因についてされたものであるから,その違法性は高いといわなければならない。したがって,告知からの時間の経過等の事情を考慮しても,信用回復措置を講ずる必要があると認められる。
   イ 告知の相手方は相当数に及ぶが,被告の特定の商品説明会への出席者と特定されているから,新聞への掲載の必要性までは認められず,本件配布資料が配付されたと認定できる名古屋,長野(松本),仙台,盛岡,八戸及び青森の参加者に対し,別紙裁判所指定信用回復措置2の訂正文を手紙形式で送付することで足りると認められる。
 1社から数人の出席者があった場合は,当該参加社あて1通の訂正文を送付すれば足りる。

別紙 裁判所指定信用回復措置1
 当社は,平成16年○月○○日(注1),○○(注2)で実施した当社商品説明会において,
 (1) ローソクにおいては,ロウの固さによって,その品質が変わってくる。A株式会社製のローソクと株式会社Bのローソクとを互いに押し付けると,株式会社Bのローソクの方が,折れたりへこんだりすることから,A株式会社製のローソクと比較して,株式会社Bのローソクの方が,品質が悪いことが分かる。
 (2) 株式会社Bのローソクは,安い,粗悪な原料を使用しているために,ローソクが倒れて火災の発生する確率が高い。このため関東では火災の発生率が一番高い。
との事実を告知し,貴社に対し,株式会社Bのローソクが粗悪品であるかのような印象を与えました。
 これらの事実は虚偽ですので,撤回いたします。
 今後,かかる行為を行わないことを誓約し,株式会社Bに対し,お詫び申し上げます。
 平成 年 月 日
                              A株式会社
 ○○(注3) 御中
 注1 各商品説明会の開催日時を入れる。例えば,東京であれば,「2月4日」と入れる。
 注2 各商品説明会の開催地区を入れる。例えば,2月4日に開催されたものであれば,「東京」と入れる。
 注3 参加企業名を入れる。例えば,「I」と入れる。担当部署を加えることは許される。 

別紙 裁判所指定信用回復措置2
 当社は,平成17年○月○○日(注1),○○(注2)で実施した当社商品説明会において,
 (1) 株式会社Bのローソクは「倒れたり,グラついたり」の理由により火災事故につながるおそれがあり,危険である。
 (2) 株式会社Bのローソクは,「芯糸が不揃い」との理由により火災事故につながるおそれがあり,危険である。
との説明文書を配布し,貴社に対し,株式会社Bのローソクが粗悪品であるかのような印象を与えました。
 上記(1)の事実は虚偽であり,上記(2)の事実は,実際よりも芯糸を不揃いとした写真を添えて告知した点で虚偽ですので,撤回いたします。
 今後,かかる行為を行わないことを誓約し,株式会社Bに対し,お詫び申し上げます。
 平成 年 月 日
                               A株式会社
 ○○(注3) 御中
 注1 各商品説明会の開催日時を入れる。
 注2 各商品説明会の開催地区を入れる。
 注3 参加企業名を入れる。担当部署を加えることは許される。 

(判例4)
[平成17年12月13日 東京地裁 平16(ワ)13248号 特許権侵害差止請求権不存在確認等請求事件]
主文(抜粋)
被告は、朝日新聞、読売新聞、毎日新聞、日本経済新聞及び産経新聞の各朝刊全国版の社会面広告欄に、別紙謝罪広告目録1記載の広告文を同目録記載の条件で、各1回ずつ掲載せよ。

理由(抜粋)
8 争点(7)(謝罪広告の要否)について
 上記4ないし6の認定のとおり、被告が過失により原告に対する不正競争行為を行ったこと、被告の不正競争行為により、原告の顧客らに対する営業上の信用が失墜し、現在も回復していないことが認められるから、その結果、原告の営業上の信用を害したことは明らかである。
 したがって、不正競争防止法7条に基づき、原告の営業上の信用を回復する措置を必要とするところ、原告は別紙謝罪広告目録2記載の広告文を求めるが、前記第2の1(5)の事実関係及び前記第4の5の認定判断に照らし、被告に別紙謝罪広告目録1記載の広告文を各新聞紙に掲載させるのが相当である。