【別表第2事件の家事調停の不成立による審判移行(対象事件・管轄・資料の扱い)】

1 別表第2事件の家事調停の不成立による審判移行
2 審判移行の家事事件手続法の条文
3 審判移行が適用される事件
4 審判移行における管轄
5 審判移行における資料の扱い

1 別表第2事件の家事調停の不成立による審判移行

家事調停不成立として終了することがあります。
詳しくはこちら|家事調停が不成立となった後の扱い(手続終了・審判移行・訴訟提起)
家事事件の分類の中で,審判対象事件のうち別表第2事件については,調停不成立となっても単純にすべての手続が終了することにはなりません。自動的に家事審判手続に切り替わります。
これを審判移行と呼んでいます。
本記事では,審判移行について説明します。

2 審判移行の家事事件手続法の条文

まず,審判移行を規定する家事事件手続法272条4項(と1項)の条文を押さえます。別表第2事件の調停が不成立で終了した場合に,家事審判の申立があったものとみなすことになります。要するに審判に切り替わったことになるのです。

<審判移行の家事事件手続法の条文>

(調停の不成立の場合の事件の終了)
第二百七十二条 調停委員会は、当事者間に合意(第二百七十七条第一項第一号の合意を含む。)が成立する見込みがない場合又は成立した合意が相当でないと認める場合には、調停が成立しないものとして、家事調停事件を終了させることができる。ただし、家庭裁判所が第二百八十四条第一項の規定による調停に代わる審判をしたときは、この限りでない。
2〜3項(略)
4 第一項の規定により別表第二に掲げる事項についての調停事件が終了した場合には、家事調停の申立ての時に、当該事項についての家事審判の申立てがあったものとみなす。

3 審判移行が適用される事件

審判移行が適用されるのは,別表第2事件だけです。別表第1事件訴訟対象事件には審判移行は適用されません。また,申立によって調停が始まったものだけが対象です。
なお,家事事件の種類の分類については別の記事で説明しています。
詳しくはこちら|家事事件(案件)の種類の分類(別表第1/2事件・一般/特殊調停)

<審判移行が適用される事件>

あ 事件の種類

(審判対象事件のうち)別表第2事件だけである
※家事事件手続法272条4項

い 手続開始のプロセス

調停を申し立てた事件が対象である

う 付調停事件の適用(なし)

家事審判の手続から調停に付された事件について
詳しくはこちら|一般的付調停|事実上の調停前置・必要的付調停との違い
家事調停が不成立となって終了した場合
既に係属している家事審判の手続を進めることになる
これは審判移行ではない
※金子修編著『逐条解説 家事事件手続法』商事法務2013年p817,818

4 審判移行における管轄

審判移行となった場合の裁判所の管轄は少し複雑です。単純にそれまで調停を進めていた裁判所がそのまま審判を進める結果となることも多いですが,そうとは限りません。とは言っても,同一の裁判所でそのまま手続(審判)を進めることが望ましいことも多いです。自庁処理の決定という事務的な手続を行えば(本来管轄外でも)そのまま審判手続を進めることができます。

<審判移行における管轄>

あ 審判が係属する裁判所

家事審判の手続に移行した時に事件が係属している裁判所は,調停裁判所が所属する家庭裁判所である
家事調停事件が係属していた家庭裁判所に家事審判の管轄が生じるわけではない

い 自庁処理による同一裁判所の処理

調停事件が係属していた家庭裁判所に管轄がない場合に
引き続き当該裁判所が家事審判の手続を進めようとする時は
自庁処理の決定の手続を経る必要がある

う 自庁処理の判断の傾向

家事調停の手続に当事者が出頭して話合いに応じていた場合には自庁処理の要件を満たすことが多い
※金子修編著『逐条解説 家事事件手続法』商事法務2013年p818

5 審判移行における資料の扱い

審判移行となった場合,実際にはそれまでの調停の裁判所がそのまま審判手続を進めることが多いです(前記)。そうは言っても,手続としては別のものです。そこで,判断の基礎とする資料は自動的に流用される(共有される)わけではありません。事実の調査または証拠調べという手続によって,新たに審判の資料とするというプロセスが必要になります。

<審判移行における資料の扱い>

あ 基本的事項

家事調停の手続において収集された資料が直ちに家事審判の資料となるわけではない

い 資料とするための手続

家事審判の資料とするためには,家事審判の手続において,事実の調査or証拠調べをする必要がある
裁判所が職権で家事調停事件の記録について事実の調査を行うことが多い

う 心証の承継(なし)

家事調停における裁判所の心証が家事審判に引き継がれるわけではない
※金子修編著『逐条解説 家事事件手続法』商事法務2013年p818,819

本記事では,別表第2事件の家事調停が不成立となった時の審判移行について説明しました。
実際には前記のような管轄や(審判の基礎とする)資料の扱いが問題となることがあります。
実際に家事調停や審判の手続に関する問題に直面されている方は,みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。

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