1 信託財産限定責任負担債務の意味と内容
2 信託財産限定責任負担債務の意味と位置づけ
3 信託財産責任負担債務と信託財産限定責任負担債務の関係
4 信託財産限定責任負担債務に係る債権の内容
5 信託法の規定により責任が限定される債権の主な内容
6 責任財産限定特約に係る信託債権の意味
7 信託財産の破産(概要)

1 信託財産限定責任負担債務の意味と内容

信託法には,信託財産責任負担債務が9種類規定されています。
詳しくはこちら|信託財産責任負担債務の意味と内容の具体例
この信託財産責任負担債務の中に信託財産限定責任負担債務があります。似ていますが『限定』という2文字の有無が違います。
本記事では,信託財産『限定』責任負担債務について説明します。

2 信託財産限定責任負担債務の意味と位置づけ

信託財産限定責任債務とは,文字どおり,信託財産だけが責任を負担する債務のことです。つまり,受託者の固有財産は責任を負担しないということです。

<信託財産限定責任負担債務の意味と位置づけ>

あ 信託財産限定責任負担債務の意味(定義)

受託者が信託財産に属する財産のみをもって履行する責任を負う信託財産責任負担債務である
※信託法154条(定義が規定されている)

い 受託者の固有財産との隔離

信託財産限定責任負担債務(あ)について
→受託者の固有財産は責任を負担しない

う 信託財産限定責任負担債務の内容

信託財産限定責任負担債務の内容は信託法21条2項に規定されている(後記※1)

3 信託財産責任負担債務と信託財産限定責任負担債務の関係

信託財産責任負担債務信託財産限定責任負担債務の違いは,責任の負担が信託財産に限定されるか否かということにあります。受託者の固有財産も責任を負担するか否かということもできます。

<信託財産責任負担債務と信託財産限定責任負担債務の関係>

あ 2つの債務の関係

信託財産限定責任負担債務(信託法21条2項)は
信託財産責任負担債務(信託法21条1項)に含まれる
※信託法154条参照

い 1項プロパーの債務の扱い

信託法21条1項に掲げられていて2項に掲げられていない債務
→責任の負担が信託財産に限定されるわけではない
信託財産固有財産の両方が責任財産となる
※道垣内弘人編著『条解 信託法』弘文堂2017年p99

4 信託財産限定責任負担債務に係る債権の内容

信託財産限定責任債務(に係る債権)としては4種類が規定されています。

<信託財産限定責任負担債務に係る債権の内容(※1)>

あ 受益債権

※信託法21条2項1号

い 限定責任信託の信託債権

限定責任信託における信託債権
ただし,受託者による不法行為により生じた権利(信託法21条1項8号)は除外される
※信託法21条2項2号,217条1項

う 信託法の規定により責任が限定される債権

信託法の規定により信託財産限定責任負担債務とされる場合における信託債権(後記※2)
※信託法21条2項3号

え 責任財産限定特約に係る信託債権

信託債権のうち,特約(合意)により責任財産が限定されたもの(後記※3)
※信託法21条2項4号

5 信託法の規定により責任が限定される債権の主な内容

信託法の規定により責任が信託財産に限定される債権にはいろいろなものがあります。主なものをまとめておきます。

<信託法の規定により責任が限定される債権の主な内容(※2)>

信託法の規定 債権(責任)の内容
75条6項 前受託者の新受託者に対する費用償還請求権など
76条2項 承継された債務に対する新受託者の責任
83条2項本文 受託者間で職務の分掌に関する定めがある場合の分掌していない受託者の債務の負担関係
104条12項 受益権取得請求に係る債務
122条2項 受益者集会の費用の負担
127条4項,137条,144条 信託管理人・信託監督人・受益者代理人の費用・報酬
183条5項 帰属権利者が有する債権で残余財産の給付をすべき債務に係る清算受託者の責任

6 責任財産限定特約に係る信託債権の意味

個々の契約において責任財産を信託財産に限定する(固有財産を除外する)合意をすることがよくあります。これを責任財産限定特約と呼びます。

<責任財産限定特約に係る信託債権の意味(※3)>

あ 責任財産限定特約の意味

取引によって生じた債権に係る債務について
信託財産だけが責任を負い,受託者の固有財産は責任を負わない旨の合意である

い 実情

受託者が,信託の取引を行うに際して
相手方との間で,個別の責任財産限定特約を締結することが実務では行われている
※道垣内弘人編著『条解 信託法』弘文堂2017年p105

7 信託財産の破産(概要)

前記のように,信託財産限定責任負担債務は,受託者の固有財産とは隔離され,信託財産の範囲内で弁済します。
信託財産だけで弁済しきれないことも実際に生じます。この場合は,信託財産の破産によって一定割合だけが配当されることになります。

<信託財産の破産(概要)>

あ 信託財産の負う責任の増大

信託財産が責任を負担する債務が想定外に生じた場合
責任財産だけでは弁済できないことになる

い 信託財産の破産

信託財産(責任財産)支払不能or債務超過になった場合
信託財産の破産手続開始原因となる(破産手続ができる)
詳しくはこちら|信託財産の破産(手続開始原因・破産者の範囲・損失填補請求権の扱い)

本記事では,信託財産限定責任負担債務の意味や内容を説明しました。
個別的な事情によって,実際の法的な扱いは違ってくることもあります。
実際に信託に関する問題に直面されている方は,みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。