1 妾契約・二号・援助交際と『売春』(違法)の判断基準と事例
2 売春防止法の『売春』の定義と禁止の規定
3 売春の違法性と罰則
4 『不特定』の判断基準
5 妾・二号・援助交際と売春の判別
6 連続妾契約事件における事案と判断
7 連続妾契約事件の詳しい事案内容
8 連続妾契約事件の詳しい裁判所の判断
9 男女交際・性行為に関する刑罰(概要)

1 妾契約・二号・援助交際と『売春』(違法)の判断基準と事例

男女の関係(性行為)に金銭的な対価が伴うと,『売春』として違法となることがあります。
一方,一般的に親密な関係の男女間で金銭のやりとりが行われることもあります。
夫婦や内縁であれば,扶養義務の一環として生活費を負担する義務があります。普通の交際中の男女間では扶養義務はないですが,自発的に生活費の一部を援助することはあります。
この点,昔は,妾契約として扶養義務が認められていた時代もあります。
本記事では,昭和30年代の妾契約として金銭を払った男女の関係が売春(違法)なのかどうかが問題となった裁判例を紹介します。

2 売春防止法の『売春』の定義と禁止の規定

まず最初に,法律上の『売春』の定義と,これを禁止する条文を押さえます。

<売春防止法の『売春』の定義と禁止の規定>

あ 『売春』の定義の条文

(定義)
第二条 この法律で『売春』とは、対償を受け、又は受ける約束で、不特定の相手方と性交することをいう。
※売春防止法2条

い 売春を禁止する条文

(売春の禁止)
第三条 何人も、売春をし、又はその相手方となつてはならない。

ポイントは不特定の相手方というところです。これの解釈は後述します。

3 売春の違法性と罰則

『売春』に該当したとすると,違法な行為となります。ただし,性行為(売春)をした当事者には罰則はありません。罰則が適用されるのは,売春をあっせんした者です。

<売春の違法性と罰則>

あ 性行為の当事者

性行為の当事者(男女)について
法律上禁止されているので違法(行為)である
しかし,罰則はない

い あっせんした者

売春のあっせんについて
→罰則がある
法定刑=懲役2年以下or罰金5万円以下
※売春防止法6条1項

『売春』といえるかどうかを判別する重要なポイントは不特定の相手方というところです。
普通の男女交際の相手は特定の異性です。そこで,交際する男女間で生活費やその他の金銭的援助をしても『売春』にはあたりません。

4 『不特定』の判断基準

男女で性行為があり,金銭の動きがあったとしても,これだけで違法(売春)となるとは限りません。
普通の男女交際の関係で,生活費やその他の金銭的援助をしただけかもしれません。
売春として違法となるのは,性行為の相手が不特定である場合に限られます。
ここで不特定といえるかどうかは,相手の個性を重視しないとか対価が主な目的であるという,男女関係の実態で判断します。

<『不特定』の判断基準>

『不特定』とは,不特定の男子のうちから任意の相手方を選定し,性交の対償(対価)に主眼をおいて,相手方の特定性を重視しないということを意味する
※大阪高裁昭和34年2月17日

5 妾・二号・援助交際と売春の判別

という地位は,江戸時代には隠し者でしたが,その後明治時代になり,『妻』(配偶者)と同じ扱い(2等親)まで向上しました。戸籍への記載や妾への扶養義務も裁判所で認められ,名実ともに公認のものでした。
昭和時代に入る頃には,妾は再び非公式な扱いに戻っていましたが,妾や二号は実際には多く存在しました。実際に婚外子が増えていたのです。
そのような状況で,昭和30年頃,真面目な妾契約(適法)なのか,売春(違法)なのかが問題となったケース(連続妾契約事件)があります。
判別の基準としては,男女関係が不特定であれば,名目が妾契約などであっても売春(違法)となる,というものです。

<妾・二号・援助交際と売春の判別>

妾・二号・援助交際としてであっても
その男女間の関係が不特定性を帯びるときは,『売春』と認められる
※大阪高裁昭和34年2月17日
※最高裁昭和32年9月27日参照

6 連続妾契約事件における事案と判断

相手が不特定かどうか,という基準(前記)は,実際に判断しようと思うと簡単ではありません。
連続妾契約事件の事案の要点と裁判所の判断(結論)をまとめます。
1週間を空けて2人の旦那と妾契約を締結し,旦那の家族,職業を聞いてもいなかったことや,肉体関係を持つまでのフローが短かった(簡単だった)という特徴があります。
このように,金銭目的が強いと思われる事情があったので,裁判所は売春にあたると認定しました。

<連続妾契約事件における事案と判断>

あ 事案の要点

旦那のあっせん業者が男女を紹介した
女性Aは,1週間を空けて2人の男性と妾契約を締結した
女性Aは,業者を通じて手当金を受け取った
それぞれ相手の家族関係,職業,住所を明かさなかった
簡単な見合の後,すぐにホテルに行き,肉体関係を持った

い 裁判所の判断

女性Aは,真面目な妾関係を結ぶ意図があったとはいえない
女性Aとしては,専ら生活援助という金銭的対償を目当てにして不特定の男性の中から旦那となるべき男性の周旋を業者Yに依頼したといえる
男女の関係は『売春』に該当する
※大阪高裁昭和34年2月17日

7 連続妾契約事件の詳しい事案内容

連続妾契約事件の事案のもう少し詳しい内容をまとめておきます。前記の要点よりも,はっきりと金銭目的が強いことが分かります。

<連続妾契約事件の詳しい事案内容>

あ 動機

女性Aは看護婦という定職がありながら,別途に収入を図ろうという強い欲望にかられ,アルバイトをするような考えで,だれか生活援助をしてくれるいわゆる『旦那』の斡旋を業者Yに依頼した

い 愛情レベル

女性Aとしては,もとより相手の男性と愛情をもって長く結ばれようという考えはなかった
特に悪い印象さえなければ相手を選ばないというような気持を持っていた

う 第1妾契約

女性Aは,業者Yの斡旋で男性Mといわゆる妾関係を結び,手当をもらって,1,回肉体関係を交えた
その後間もなく男性Oの方から関係解消の申出があった

え 第2妾契約

女性Aは,男性Mの紹介の1週間後に,前と同趣旨で別の旦那の周旋を業者Yに依頼した
業者Yは女性Aに男性Oを紹介した
女性Aは,その際,男性Oの家族関係,職業,住所さえも聞かなかった
簡単ないわゆる見合をしただけで妾関係を結ぶことを承諾した
業者Yを通じて男性Oから手当金をもらいうけると唯々として直ぐに男性Oとともに街のホテルに行って肉体関係を結んだ
一方,男性Oも,女性Aの身元などを詳しく調査した形跡がない
男性Oは,自己の身元なども同女に告げず,さらに,偽名を用い,やはり簡単な見合だけで妾関係を結ぶことを承諾した
※大阪高裁昭和34年2月17日

8 連続妾契約事件の詳しい裁判所の判断

前記の事案内容から,常識的に金銭目的が強いといえますが,裁判所は細かく丁寧に評価を示しています。長期間の交際に発展する可能性を認めつつ,これだけでは売春を否定できないと判断しています。

<連続妾契約事件の詳しい裁判所の判断>

お 主目的

女性Aは,真面目な妾関係を結ぶ意図があったとはいえない
女性Aとしては,専ら生活援助という金銭的対償を目当てにして不特定の男性の中から旦那となるべき男性の周旋を業者Yに依頼したといえる

い 長期間の交際の可能性

男女の結びつきの関係が相当期間継続することが予定されていることは否めない

う 対価(対償)関係レベル

しかし,金銭と性交との対償関係が極めて露骨である
男女関係の結合や解消の方法が実に簡単,手軽である
性交の場所として街のホテルを利用するという点などにおいて通常の売春にすこぶる似かよっている

え 『不特定』の判断

妾,二号あるいは援助交際など名称のいかんにかかわらず,『不特定性』のものである
たまたまこの結合の結果,特定の男性とその関係が相当長期にわたって継続したとしても,それは事後のことである
業者Yが周旋した当時における相手方の不特定性は,これによって影響を受けるものではない

お 売春該当性(結論)

女性Aと男性O(男性M)の関係は『売春』に該当する
※大阪高裁昭和34年2月17日

9 男女交際・性行為に関する刑罰(概要)

以上では,売春として違法となるケースについて説明しました。
男女交際が違法(犯罪)となるのは,売春以外にもあります。
刑事的に違法となる男女交際の全体像については別の記事で説明しています。
詳しくはこちら|男女交際・性行為に関する刑罰|売春防止法・児童ポルノ法・青少年育成条例・強姦罪

本記事では,男女交際が売春に該当する判断基準について説明しました。
実際には,細かい事情の主張や立証によって結果が違ってきます。
実際に男女交際に関する法的問題に直面されている方は,みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。