1 遺産分割『後』の第三者と遺産分割の優劣
2 遺産分割後の第三者と遺産分割の優劣の基本
3 遺産分割後の第三者と遺産分割の優劣の結論
4 遺産分割後の第三者の取得方法のバリエーション

1 遺産分割『後』の第三者と遺産分割の優劣

遺産の権利を取得した第三者と遺産分割の結果が対立することがあります。
法的な扱いは,この『第三者』が権利を取得した時期によって理論が多少異なります。
詳しくはこちら|遺産を取得した第三者と遺産分割の優劣の全体像
本記事では,遺産分割の完了に第三者が権利を取得したケースにおける法的な扱いを説明します。

2 遺産分割後の第三者と遺産分割の優劣の基本

遺産分割が完了しても,相続人が説明しない限り,相続人以外の第三者は内容を知ることはできません。
不動産であれば登記として公表されることがありますが,法定相続の登記がされている状況のままであれば,やはり第三者は遺産分割の内容を把握できません。
詳しくはこちら|相続に関する登記申請|非協力者の存在×証書真否確認訴訟・給付訴訟
そこで,実際に,遺産分割で承継していない遺産について,相続人が第三者に権利を譲渡するケースが生じます。
これが『遺産分割後の第三者』の具体例です。
この状態での相続人と第三者は対抗関係となります。
この点,遺産分割には遡及効がありますが,遡及効があってもなくても,2重譲渡と同じ状況といえます。
そこで,遡及効を制限する(第三者を保護する)規定の適用は考えないのです。

<遺産分割後の第三者と遺産分割の優劣の基本>

あ 譲渡と遺産分割の対立

相続人=A・B
相続人Bが遺産甲を取得する遺産分割が完了した
その後,相続人Aが遺産甲を第三者Cに譲渡した
BとCの間に対立状態が生じた

い 第三者保護規定の適用(否定)

遺産分割における第三者を保護する規定(前記※1)について
→遺産分割後の第三者(C)には関係しない
→当然に対抗関係となる

3 遺産分割後の第三者と遺産分割の優劣の結論

遺産分割後の第三者と遺産分割により権利を取得した相続人の優劣の結論をまとめます。

<遺産分割後の第三者と遺産分割の優劣の結論(※3)>

あ 法定相続の範囲内

相続人Bが取得した遺産甲のうち
Bの法定相続の範囲内の部分について
Aは完全に無権利であった
→AからCへの譲渡の効力は生じない
→Bが優先となる
詳しくはこちら|遺産を取得した第三者と遺産分割の優劣の全体像

い 法定相続の範囲外

相続人Bが取得した遺産のうち
Bの法定相続の範囲を超える部分について
→当然に対抗関係になる
→登記を得た方が優先される
※最高裁昭和46年1月26日

4 遺産分割後の第三者の取得方法のバリエーション

第三者が権利を取得する方法の代表例は,売買や贈与などの譲渡です。
しかし,譲渡以外にも対抗関係となるものは多いです。

<遺産分割後の第三者の取得方法のバリエーション>

あ 遺産分割審判後の譲渡

遺産分割審判が完了した
その後,共同相続人の1人が自己の持分権を第三者に譲渡した
→対抗関係となる
※大阪高裁昭和34年12月18日

い 仮差押

遺産分割が完了した
その後,一部の共同相続人の共有持分に対する仮差押がなされた
→対抗関係となる
※民法177条
※広島高裁昭和45年1月28日

う 債権者代位による共同相続登記

相続人の債権者が代位による共同相続の登記をした
→無効ではない
※東京高裁昭和33年8月9日