1 家事調停における合意に相当する審判(対象案件・要件・事実の調査)
2 合意に相当する審判の対象案件
3 合意に相当する審判の要件
4 事実の調査の典型例
5 合意に相当する審判の効力
6 審判に至らないケースの手続の流れ

1 家事調停における合意に相当する審判(対象案件・要件・事実の調査)

一般的な調停では,話し合いをして合意に達した場合に,調停成立となります。しかし,家庭裁判所の調停では,合意に達しても調停を成立させられず,その代わりに,合意に相当する審判という形で終わるものもあります。家事事件手続法277条に規定されている手続なので,277条審判と呼ぶこともあります。
本記事では,この手続について説明します。

2 合意に相当する審判の対象案件

合意に相当する審判の対象となる案件は決まっていて,当事者が処分できない身分関係に関するものです。条文では,「人事訴訟の対象となる案件のうち,離婚・離縁以外のもの」という記載になっています。具体的には14種類の案件(種類)があります。
婚姻・養子縁組・離婚・認知といった,この手続によって身分関係が変動するものについての無効と取消が主なものです。
新たに婚姻や離婚をする,ということであれば当事者の意思(と届出)だけで完了します。しかしたとえば,婚姻や離婚が無効であることを当事者だけで決めることはできません。戸籍は公的なものなので,いったん届出をしたものを,単純に(届出をした人が)撤回することは認められていないのです。
そこで,家庭裁判所の調停でも当事者の合意だけで調停成立とはできず,裁判所が判断して審判をする,という形をとる必要があるのです。

合意に相当する審判の対象案件

あ 条文規定

人事に関する訴え(離婚及び離縁の訴えを除く。)を提起することができる事項についての家事調停の手続(において・・・)
※家事事件手続法277条1項
(訴訟対象事件−特殊調停対象事件)
詳しくはこちら|家事事件(案件)の種類の分類(別表第1/2事件・一般/特殊調停)

い 対象案件の性格

当事者が処分できない身分関係を対象とする
当事者の合意だけでは身分関係の確認や形成の結果を生じさせられない
※松本博之『人事訴訟法 第3版』弘文堂2012年p16

う 対象案件の具体的種類

婚姻無効
婚姻取消
縁組無効
縁組取消
協議離婚無効
協議離婚取消
協議離縁無効
協議離縁取消
認知の訴え
認知無効
認知取消
父の確定
嫡出否認
身分関係存否確認(実親子・養親子・夫婦関係)
※梶村太市ほか編著『家事事件手続法 第3版』有斐閣2016年p93

3 合意に相当する審判の要件

合意に相当する審判の要件をまとめます。
要するに,当事者が解決内容を合意していることに加えて,裁判所が一定の審査をする,というものです。

合意に相当する審判の要件

あ 基本的事項

『い〜え』のすべてに該当する場合
合意に相当する審判をすることができる
※家事事件手続法277条1項

い 審判を受けることの合意

申立にかかる審判を受けることについて当事者間に合意が成立している

う 実質的な主張事実の肯定

原因の有無について争いがない
身分関係の無効・取消しの事由となる事実関係や身分関係の存否の原因となる事実関係について,双方に認識の違いがないことである

え 調査による認定

裁判所が必要な事実を調査をして認定した
必要な事実の調査とは,家事調停手続における事実の調査証拠調べの双方を含む
事実認定のためには人訴手続と同じ程度の確信に至る心証が得られる程度の事実の調査が必要である。
調査方法の典型例は(後記※1)のとおり
※梶村太市ほか編著『家事事件手続法 第3版』有斐閣2016年p95

4 事実の調査の典型例

裁判所による事実の調査の具体的な内容(調査方法)にはいろいろなものがあります。戸籍情報は常に使われますし,また,血縁関係を判断するため血液型やDNA型の報告書や鑑定書が使われることもあります。家裁の調査官調査の報告書が使われることもあります。

事実の調査の典型例(※1)

あ 戸籍情報

関係者の戸籍事項証明書(戸籍謄本)

い 血液関係

医師である裁判所技官作成の血液型検査報告書
DNA型鑑定書

う 医師の判断

診断書
※家事事件手続法60条1項参照

え 調査嘱託の結果

調査嘱託に応じて提出された報告書
照会先の例=官公庁・銀行・信託会社
※家事事件手続法62条参照

お 調査官調査

家庭裁判所調査官の調査報告
※家事事件手続法58条3項
※松本博之著『人事訴訟法 第3版』弘文堂2012年p16

5 合意に相当する審判の効力

裁判所が合意に相当する審判を行った場合には判決と同様の効果が生じます。調停(成立)ではなく審判(裁判所の判断)なので,異議申立が可能です。もちろん,当事者は合意(納得)しているので異議の申立がなされることは普通ありませんが,異議申立期間が満了するまでは確定しません。
確定すれば,判決と同じように既判力などが生じます。この部分は調停とは異なります。

合意に相当する審判の効力

あ 効力の内容

ア 規定 合意に相当する審判は確定判決と同一の効力を有する
※家事事件手続法281条
イ 内容 人事訴訟と同じように既判力・形成力さらには対世的効力(人事訴訟法24条)を有し,しかも失権的効果(人事訴訟法25条)を伴う。
※梶村太市ほか編著『家事事件手続法 第3版』有斐閣2016年p97

い 効力発生時点

『ア〜ウ』のいずれかに該当した時点
ア 異議申立期間の経過 異議申立期間=審判から2週間の不変期間
※家事事件手続法279条1項,2項
イ 異議の却下審判の確定 異議の申立を却下する審判の確定
ウ 異議申立権放棄 異議を申し立てる権利の放棄
※家事事件手続法279条4項

6 審判に至らないケースの手続の流れ

調停の手続において,合意に相当する審判がなされると手続が終了します。逆に,合意に相当する審判に至らない場合は,調停不成立として手続が終了します。
調停が終了すると,調停前置がクリアされたことになるので,当事者のいずれかが(人事)訴訟を提起できる状態になります。

審判に至らないケースの手続の流れ

あ 調停不成立

『ア・イ』のいずれかに該当する場合
→最終的に調停は不成立となり終了する
ア 合意に至らないイ 合意したが裁判所が審判をしない

い 訴訟提起

調停不成立(あ)によって
調停前置の要件をクリアする
詳しくはこちら|家事事件の調停前置の基本(趣旨・不服申立)
→当事者は訴訟を提起できる

本記事では,家事調停における合意に相当する審判について説明しました。
実際には,個別的な事情によって,法的判断や最適な対応方法は違ってきます。
実際に,家庭裁判所の手続や身分関係に関する問題に直面されている方は,みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。