1 段階的な遺産分割(1次・2次分割)の典型例
2 遺産分割完了後の遺産の発覚
3 複数回の遺産分割|第n次分割
4 遺産分割協議|『余り』を残さない工夫がベター
5 遺産分割協議書|『余り』を残さない条項例
6 遺産分割協議書|『余り』を残さない条項×誤作動リスク

1 段階的な遺産分割(1次・2次分割)の典型例

遺産分割の成立が2回以上に分かれることがあります。
第1次分割,第2分割・・・というように複数の遺産分割になるという状況です。
最初の遺産分割では遺産の一部を未分割のまま残したということです。
このように遺産分割が段階的になる典型的な原因(背景)は大きく3つあります。

<段階的な遺産分割(1次・2次分割)の典型例>

あ 遺産分割後の遺産の発覚

当初の遺産分割が完了後に未分割の遺産が発覚した(後記※1)

い 相続人の合意による部分的分割

相続人全員が遺産の一部だけの分割を先行させることに合意した
例=納税資金や葬儀費用の支出のため

う 裁判所による換価処分

遺産分割審判において
家庭裁判所が一部の遺産の売却を命じた
詳しくはこちら|遺産分割審判の途中で裁判所は遺産の一部を売却できる(換価処分)

2 遺産分割完了後の遺産の発覚

遺産分割が完了した後で,遺産に漏れがあったというケースがあります。
つまり,事後的に未分割の遺産が発覚した,ということです。
改めて次の遺産分割(第2次分割)が必要になります。

<遺産分割完了後の遺産の発覚(※1)>

あ 具体的な状況

遺産の一部を脱漏して遺産分割が完了した
→後から未分割遺産が発覚した

い 既になされた遺産分割の効力

ア 原則
有効である
イ 例外=形式的・暫定的な分割協議(概要)
次の事情に該当する場合『無効』となる
・相続税分納のために,一部の不動産について『共同相続』登記を行った
・相続人は『その後に当該不動産を含めて遺産分割協議を行う』意図であった
※高松高裁昭和48年11月7日
詳しくはこちら|相続税分納のための法定相続登記は遺産分割の合意ではない(裁判例)

3 複数回の遺産分割|第n次分割

遺産分割で『遺産の脱漏があった』ようなケースでは改めて遺産分割が必要となります。
このように『遺産分割』が複数回になることもあるのです。
これについてまとめます。

<複数回の遺産分割|第n次分割>

あ 複数回の遺産分割

遺産分割協議は複数回に分けることも可能
『第1次分割』『第2次分割』・・・と呼ぶ

い 遺産分割が複数回なされる要因

ア 事後的に『未分割の遺産』が発覚した
イ 相続人間で意図的に『一部の遺産分割完了』を先行させた

4 遺産分割協議|『余り』を残さない工夫がベター

遺産分割の対象財産に『脱漏』があると,改めて遺産分割をする必要が生じます。
そこで,遺産分割の時には『後から遺産が発覚したこと』も想定しておくとベターです。
『再度の遺産分割』を避ける工夫を紹介します。

<遺産分割協議|『余り』を残さない|基本事項>

あ 遺産分割の重要事項

遺産分割を完全に完了させる
=『再度の遺産分割』を生じさせない

い 遺産分割完了の要点

遺産分割『未了』の部分(遺産)を残さない

5 遺産分割協議書|『余り』を残さない条項例

遺産分割協議では『余り=遺産の脱漏』を残さない方がベターです(前述)。
そこで,望ましい条項例をまとめます。

<遺産分割協議書|『余り』を残さない|条項例>

う 条項例|1人が受領タイプ

ア 条項例
『相続人◯◯は,前条までに記載した財産以外の財産すべてを取得する』
『・・・及び後日判明した遺産・・・』
イ 特徴
その後の遺産分割を未然に防ぐ方法
ウ 適している事情
遺産が発覚する可能性がほとんどない
遺産の発覚があったとしてもわずかな規模である

え 条項例|再度の分割タイプ

ア 条項例
『今後,被相続人の遺産が発見された場合,改めて相続人全員で遺産分割協議を行う』
イ 適している事情
ある程度の規模の遺産が発覚する可能性がある

6 遺産分割協議書|『余り』を残さない条項×誤作動リスク

遺産分割協議書には『余り』を残さない条項を入れるのは有意義です。
しかし想定していない働きをして,損害が生じたケースもあります。
まずは前提となる事情からまとめます。

<遺産分割協議|余りを残さない条項|事例>

あ 遺産分割協議の終了

遺産分割協議が終了し,協議書を調印した
『後日新たに判明した遺産』について次の条項を入れておいた

い 1人が受領タイプ条項

後日新たに判明した遺産を『相続人Aが受領する』

ここまではありがちなもので,特に問題ではありませんでした。
しかし,その後事態が大きく変わってきます。

<余りを残さない条項→誤作動→弁護士の責任論>

あ 財産目録の記載漏れ発覚

後日,遺産であった不動産甲が『目録』から漏れていることが発覚した

い 『1人が受領タイプ条項』の適用

不動産甲は,相続人Aが承継することになった

う 保険金認定|記載漏れによる責任

遺産分割協議の代理人弁護士のミス
→弁護士に賠償責任が認められた
※『弁護士賠償責任保険の解説と事例 第5集』全国弁護士協同組合連合会『2−(6)』

『目録への記載漏れ』が『余り』を残さない条項の対象となってしまったのでした。
遺産には,規模が大きいものから小さいものまでとても多くのものが含まれることが多いです。
通常生じることは考えにくいのですが,レアケースとして紹介しました。
『余り』を残さない条項は便利ですが,安易に使うもの良くないのです。