1 家事事件の管轄のまとめ
2 家事調停の管轄|相続・夫婦共通|管轄=相手方住所地
3 家事審判|相続関連|遺産分割|管轄=相続開始地
4 家事審判|夫婦・財産関連|管轄=夫or妻住所地
5 家事審判|子供関連|監護権者・親権|管轄=子の住所地
6 人事訴訟|離婚訴訟|管轄=当事者いずれかの住所地
7 管轄基準の『住所』=実際の居住地|住民票ではない
8 『住所』から『管轄裁判所』を探す|一覧表
9 家事事件の管轄の選択|優先管轄vs移送|申立人が管轄を選べる

1 家事事件の管轄のまとめ

家庭裁判所の手続では『管轄』がちょっと紛らわしいです。
代表的なものを1つにまとめておきます。

<家事事件の管轄のまとめ>

種類 分類 申立人住所地 相手方住所地 被相続人住所地 子の住所地 合意管轄
調停 すべて
審判 遺産分割
審判 夫婦・財産
審判 子関連
訴訟 離婚訴訟

それぞれの管轄の規定については順に説明します。

2 家事調停の管轄|相続・夫婦共通|管轄=相手方住所地

最初に『調停』の管轄をまとめます。

<家事調停の管轄|相続・夫婦共通>

次のいずれかが管轄となる
ア 相手方の住所地
複数いる場合は,そのうちの1名で良い
イ 合意管轄
※家事事件手続法245条1項

『相手方』のみです。
『申立人の住所地』は管轄には含まれません。
審判や訴訟では『申立人住所地』が認められるものもあります。
注意が必要です。

3 家事審判|相続関連|遺産分割|管轄=相続開始地

一般的な相続に関する家事事件は『遺産分割』です。
遺産分割の『審判』の管轄をまとめます。

<家事審判|相続関連|遺産分割>

次のいずれかが管轄となる
ア 『相続開始地』
被相続人が亡くなった場所のことである
イ 合意管轄
※家事事件手続法191条1項,66条

当事者,つまり『相続人』の住所地は管轄になっていません。

4 家事審判|夫婦・財産関連|管轄=夫or妻住所地

夫婦に関する『審判』のうち『財産に関するもの』の管轄をまとめます。

<家事審判|夫婦・財産関連|婚姻費用・財産分与>

次のいずれかが管轄となる
ア 夫or妻の住所地
イ 合意管轄
※家事事件手続法150条3号,5号,66条

夫と妻の『どちらか』の住所地です。
つまり『申立人自身の住所地』も含まれるのです。

5 家事審判|子供関連|監護権者・親権|管轄=子の住所地

家事『審判』のうち子供に関する種類の管轄をまとめます。

<家事審判|子供関連|監護権者・親権>

次のいずれかが管轄となる
ア 子の住所地
複数の子の場合,そのうちの1名で良い
イ 合意管轄
※家事事件手続法150条4号,167条,66条

『父・母』の住所地は管轄に含まれません。
もちろん実際には『子』は『父・母』のどちらかと同居しています。
結果的に『子を引き取った親の住所地』ということになります。

6 人事訴訟|離婚訴訟|管轄=当事者いずれかの住所地

家庭裁判所では『調停・審判』以外に『訴訟』もあります。
これを『人事訴訟』と言います。
主要な人事訴訟は『離婚訴訟』です。
管轄をまとめます。

<人事訴訟|離婚訴訟>

あ 管轄

当事者の住所地
夫or妻の住所地という意味である

い 合意管轄→NG

合意管轄は認められない
※人事訴訟法4条1項

『原告・被告』のいずれの住所地も管轄に含まれるのです。
一方『合意管轄』は認められていません。
なお,以前は『夫婦で同居していた最後の住所』なども入っていました。
その後,法改正があり,現在はシンプルな規定になったのです。

7 管轄基準の『住所』=実際の居住地|住民票ではない

家事事件の管轄では『住所地』がよく使われています(前述)。

<管轄基準の『住所』>

あ 基本的解釈論

『住所(地)』とは『実際に居住している場所』のことである
『住民票登録がされている住所』ではない

い 間違えやすいケース

住民票はそのままで別の場所に居住している
例;夫婦が別居している
→『実際の居住地』が『管轄の住所』である

う 『住民票上の住所』の位置付け

『住民票上の住所』は『実際の居住地』の手がかりの1つとなる

8 『住所』から『管轄裁判所』を探す|一覧表

家裁に申立を行う際は,実際の『管轄裁判所』を調べることになります。
『住所』と『管轄裁判所』の対応は裁判所法で定められています。
この内容は裁判所のウェブサイトに掲載されています。
外部サイト|裁判所|管轄

9 家事事件の管轄の選択|優先管轄vs移送|申立人が管轄を選べる

複数の管轄が生じる場合のルールをまとめます。

<家事事件の管轄の選択|優先管轄vs移送>

あ 優先管轄

複数の管轄が成立している場合
→申立人が『申し立てる裁判所』を選べる
=『早く申し立てをした者勝ち』という状態
※家事事件手続法5条

い 移送(概要)

申立後に裁判所が管轄を変更することがある
詳しくはこちら|家事事件・移送申立|係属裁判所が変更する制度|基準・典型例

実務では『管轄』の主張で対立が生じることが多いです。
具体的には『相手方・被告』が『移送申立』をするというものです。
メインの裁判の『前哨戦』というような状態になります。
結局,一部の当事者にとって『遠方の裁判所に係属してしまう』ことも起きます。
この場合の対応などの付随的問題については別の記事で説明しています。
詳しくはこちら|遠方の裁判所に係属|交通費・日当・出席しない制度・依頼する弁護士