1 不貞(有責性)により婚姻費用を否定・減額した裁判例の集約
2 不貞→信義則違反→婚姻費用を否定
3 不貞→信義則違反→子の生活費部分のみ認めた
4 不貞→権利濫用→子の監護費用部分のみ認めた
5 不貞の強い疑い→信義則→婚姻費用を減額
6 不貞→信義則・権利濫用→子の養育費相当分のみ認める

1 不貞(有責性)により婚姻費用を否定・減額した裁判例の集約

不貞(不倫)を行った者が婚姻費用を請求した時には請求自体が認められないことや,金額を減額されることがあります。
詳しくはこちら|婚姻費用と有責性との関係(減額される傾向や減額の程度)
本記事では,不貞が婚姻費用に影響を与えた実際の事例(裁判例)を紹介します。裁判(審判)の時期の順に紹介します。

2 不貞→信義則違反→婚姻費用を否定

不貞を行った者(妻)からの婚姻費用の請求の全体を認めなかった裁判例です。
夫と妻の両方が離婚を請求(提訴)していました。提訴自体を理由として婚姻費用が否定されたわけではありません。不貞(有責性)が主要な理由だと思われます。

<不貞→信義則違反→婚姻費用を否定>

あ 事案

権利者が不貞を行った
義務者と権利者が離婚請求をしていた
=離婚訴訟の提起と反訴提起のことである

い 裁判所の判断

夫婦間の同居協力扶助の義務が喪失したことを自認している
婚姻費用の分担を請求することは信義則に反するので認めない
婚姻費用分担申立を認容した原審を取り消し,申立を却下した
※福岡高裁宮崎支部平成17年3月15日
権利者が離婚訴訟を提起しているだけで信義則違反と認めるわけではない
※松本哲泓著『婚姻費用・養育費の算定−裁判官の視点にみる算定の実務−』新日本法規出版2018年p27

3 不貞→信義則違反→子の生活費部分のみ認めた

不貞を行った者が子供を引き取って育てていて婚姻費用を請求したケースでも,原則的に最低限子供の監護費用(養育費)に相当する金額だけは認められます。
このような基本的な扱いどおりに判断した裁判例です。

<不貞→信義則違反→子の生活費部分のみ認めた>

あ 事案

権利者が不貞を行った

い 裁判所の判断

専ら不貞が原因で破綻に至った
婚姻費用の分担を請求することは信義則に反するので認めない
監護する未成熟子2人の生活費部分のみを認めた
※神戸家裁尼崎支部平成17年12月27日

4 不貞→権利濫用→子の監護費用部分のみ認めた

不貞を行った者からの婚姻費用の請求で子供の監護費用に相当する金額だけを認めた裁判例です。

<不貞→権利濫用→子の監護費用部分のみ認めた>

あ 事案

権利者は不貞相手と同居している

い 裁判所の判断

婚姻費用の分担を請求することは権利の濫用として認めない
未成年の子の実質的監護費用に限って認める
※東京家裁平成20年7月31日

5 不貞の強い疑い→信義則→婚姻費用を減額

不貞があったかどうかをハッキリと判断できなかったケースです。ただ,強い疑いがあったので,暫定的に不貞があった(有責性あり)という前提で,婚姻費用の金額を子供の監護費用部分に限定しました。

<不貞の強い疑い→信義則→婚姻費用を減額>

あ 事案

権利者が不貞を行っていることが疑われた

い 裁判所の判断

不貞とは断言できないが,これを疑う客観的な根拠があり,これが原因で別居or破綻に至った
認める婚姻費用分担金は,信義則から軽減される
未成熟子の養育費相当分にとどまる
※大阪高裁平成20年9月18日

この裁判例では,不貞(有責性)の判断の方法に特徴があります。婚姻費用の審判の性格による特殊な審理方法です。別の記事で詳しく説明しています。
詳しくはこちら|婚姻費用の審判手続における有責性の審理方法(暫定的心証による判断)

6 不貞→信義則・権利濫用→子の養育費相当分のみ認める

不貞を行った者からの婚姻費用の請求で子供の監護費用に相当する金額だけを認めた裁判例です。

<不貞→信義則・権利濫用→子の養育費相当分のみ認める>

あ 事案

権利者が不貞を行った

い 裁判所の判断

婚姻費用分担金について
信義則あるいは権利濫用の見地から,子らの養育費相当分に限って認める
※大阪高裁平成28年3月17日

本記事では,不倫をした者が婚姻費用を請求して,裁判所が有責性を理由に否定または減額した裁判例を紹介しました。
実際には,個別的事情や主張・立証のやり方次第で結論は違ってきます。
実際に婚姻費用に関する問題に直面されている方は,みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。