1 マイホームの財産分与の選択肢は裁判と和解で異なる
2 審判・訴訟におけるマイホームの財産分与の方法
3 財産分与の中で住居に利用権を設定する方法・実例(概要)
4 審判・訴訟における債務の財産分与の問題(概要)
5 任意の和解におけるマイホームの財産分与の方法

1 マイホームの財産分与の選択肢は裁判と和解で異なる

離婚の際,夫婦の財産を分けることになります(清算的財産分与)。
詳しくはこちら|財産分与の対象財産=夫婦共有財産(基本・典型的な内容・特有財産)
清算的財産分与の中でもマイホーム(住宅)については,住宅ローンもからんで複雑になりがちです。
マイホームの財産分与の方法の種類(選択肢)は,家事審判と和解(交渉・調停)で違います。本記事では,マイホームの財産分与はどのような方法で行うのか,いろいろな方法を説明します。

2 審判・訴訟におけるマイホームの財産分与の方法

財産分与の家事審判や訴訟では,最終的に裁判所が財産を分与する具体的な内容(結論)を決めます。
マイホームの財産分与に関する裁判所の選択肢は主に4つあります。
一方が取得するというのが単純です。場合によっては,対価として代償金を支払うことがありますが,慰謝料や離婚後の扶養の趣旨を織り込んで,代償金の金額を抑えるという手法もあります。
また一方に所有権を与えることはしないけれど,居住する権利を与える(利用権を設定する)という方法もあります。
とにかく選択肢の幅がとても広いです。最終的には,個別的事情によって裁判所が裁量によって具体的な分与の方法を選択(決定)します。

審判・訴訟におけるマイホームの財産分与の方法(※1)

あ 夫が取得する

夫が妻に代償金を支払う
※家事事件手続法155条類推
※鳥取家裁昭和39年3月25日

い 妻が取得する

妻が夫に代償金を支払う
代償金の算定には,慰謝料的要素や扶養的要素も考慮して調整することも可能である
夫のローン返済の滞納のリスクがある
妻が履行を引き受けた場合
逆に妻のローン返済の滞納により金融機関(銀行)から夫が請求を受けることになる

う 夫が取得する+妻に利用権を設定する

妻の賃借権または使用借権を設定する
ただし,使用借権は弱く,賃借権は一定の保護を受けるが抵当権には劣後するという問題がある
この方法は認められており,実例もある(後述)

え 共有とする

例=夫の単独所有→妻が共有持分を取得する
共有物分割請求が可能な状態が残ってしまう

お 財産分与の方法の選択の裁量

『あ〜え』の方法について
一般的にベター・ベストといえる方法はない
個別的な事情・当事者の主張・希望によって裁判所が裁量で方法を選択する
※山本拓稿『清算的財産分与に関する実務上の諸問題』/『家庭裁判月報62巻3号』最高裁判所事務総局2010年p18,19

3 財産分与の中で住居に利用権を設定する方法・実例(概要)

財産分与の基本は,いくつかの夫婦の財産について,それぞれどちらが取得するのかを決めてゆく,というものです。しかし住宅(不動産)については,一方が取得した上で,他方が居住する,という特殊な手法がとられることがあります。
毎月の賃料(家賃)支払が必要なものを賃貸借,賃料支払は不要というものを使用貸借といいます。これらの貸す方式をとった場合に,その後,所有者(貸す側)が第三者に売却してしまうと別の問題が生じます。
使用貸借である場合には,原則として退去しなくてはならなくなります。賃貸借では賃料を払っている限り退去する必要はありません。ただし,住宅ローンの抵当権が実行されてしまうと賃貸借であっても退去しなくてはならないことになります。
いずれにしても,賃貸借や使用貸借を使う方法をとる場合には,いろいろな細かい工夫が必要になります。実際の裁判例でもいろいろな工夫が採用されています。
この方法の法的問題点と実例について,それぞれ別の記事で説明しています。
詳しくはこちら|財産分与として利用権を設定する方法(法的問題点)
詳しくはこちら|財産分与として不動産の利用権を設定した裁判例(集約)

4 審判・訴訟における債務の財産分与の問題(概要)

前述のよう,住宅ローンの負担を財産分与の中で扱うことがあります。具体的には,住宅ローンの債務者になっていない者が履行引受をする(前記※1)方法や,債務引受をするという方法があります。
いずれの場合でも債権者(金融機関)には効果が及ばないので,裁判所がそのような方法をとることができるか,ということについては解釈が統一されていません。これについては別の記事で説明しています。
詳しくはこちら|清算的財産分与における債務(マイナス財産)の扱い

5 任意の和解におけるマイホームの財産分与の方法

財産分与が決まる手続は,審判・訴訟以外にも任意の交渉・調停があります。
交渉や調停,つまり,当事者が合意して終わるケースでは,マイホームの財産分与の方法の選択肢が(審判・訴訟の場合よりも)多くあります。たとえば,住宅ローンの履行引受や免責的債務引受などは,和解であれば採用できますが,審判・訴訟では採用できません。
このように,特に住宅ローンが残っているマイホームの財産分与では,夫婦のどちらにとっても和解の方がメリットがあるということが起きやすいです。

任意の和解におけるマイホームの財産分与の方法

あ 和解の特徴

任意の和解であれば
財産分与の方法が審判(前記※1)のように限定されない
→『い』のような柔軟な方法が可能である

い 和解なら実現できる柔軟な方法

ア 免責的債務引受 債権者の同意を得て免責的債務引受をする
=実質的な借換えである
イ 履行引受 負担割合を含めて履行引受の合意をする
※山本拓稿『清算的財産分与に関する実務上の諸問題』/『家庭裁判月報62巻3号』最高裁判所事務総局2010年p18,19

本記事では,マイホームの財産分与について,審判・訴訟と和解とで選択肢(分与の方法)が違うということを説明しました。
交渉や調停などの裁判のやり方次第で,結論が大きく変わってくるということがよくあります。
実際にマイホームの財産分与に関する問題に直面されている方は,みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださいますようお勧めします。