代表弁護士三平聡史1 婚約破棄の正当な理由があると判断した裁判例
2 婚約破棄の正当な理由を認めた裁判例の集約
3 性交渉の強要と侮辱的言動→正当な理由あり+逆の慰謝料
4 相手の家風の異常性の発覚→正当な理由あり

1 婚約破棄の正当な理由があると判断した裁判例

婚約が成立した後に,婚約を破棄しても正当な理由がある場合は慰謝料の賠償責任は生じません。
正当な理由の判断基準はありますが,抽象的であり,実際の事案についてはっきり判断できるわけではありません。
詳しくはこちら|婚約を破棄しても慰謝料が発生しない正当な理由の具体例や判断基準
本記事では,婚約破棄の正当な理由を認めた(慰謝料を認めなかった)裁判例を紹介します。
実際の事案について判断する際,とても役立ちます。

2 婚約破棄の正当な理由を認めた裁判例の集約

まず,婚約破棄の正当な理由があると判断しやすい,比較的単純な事情をまとめて紹介します。

<婚約破棄の正当な理由を認めた裁判例の集約>

あ 常識を欠く態度

結婚式当日と新婚の初夜において
新郎としてわきまえるべき社会常識を相当程度逸脱したような言動があった
※福岡地裁小倉支部昭和48年2月26日

い 結婚式前の家出

結婚式の10日前において
婚約者が無断で家出をして挙式を不可能にした
※大阪地裁昭和41年1月18日

う 性的不能

男性に女性と正常な性交をすることができない身体的欠陥があった
※高松高裁昭和46年9月22日

3 性交渉の強要と侮辱的言動→正当な理由あり+逆の慰謝料

男性が婚約相手の女性に性的関係を強要し,その直後に侮辱的な態度をとったケースです。
女性としては,婚約を維持できるような状況ではありません。
そこで女性から婚約を破棄しました。
当然,女性からの婚約破棄は正当な理由があると判断されました。
それとは別に,男性には婚約破棄を誘致した責任が認められました。
つまり,男性は形式的には婚約を破棄された者ですが,慰謝料の賠償責任が認められたのです。

<性交渉の強要と侮辱的言動→正当な理由あり+逆の慰謝料>

あ 性交渉の供与と侮辱

男性Aと女性Bが婚約した
AがBに性交を強要した
Aはその直後からBに対して侮辱的な言動(い)をとった

い 侮辱的言動の内容

『お前はこれが初めてではないだろう』
『だから結婚の話は白紙に戻そう』
『どうしても一緒になろうというのなら,俺が2号,3号をもっても文句をいうな』

う 婚約の破棄

Bが婚約を破棄(解消)した
Aは自己の非を反省し,Bの翻意を求めた
Bは婚約破棄を撤回しなかった

え 正当な理由の判断

Bによる婚約破棄は当然である
=正当な理由がある
→Bは責任を負わない

お 破棄誘致責任の判断

A自身は婚約を破棄していない
しかし,Aは婚約破棄を誘致した責任がある
詳しくはこちら|婚約を破棄しても慰謝料が発生しない正当な理由の具体例や判断基準

か 慰謝料の判断

AはBに精神的苦痛を与えた
一方Bはその後,他の男性と結婚して2児をもうけ,幸福に暮らしていた
→Aが支払う慰謝料を50万円とした
※東京高裁昭和48年4月26日

4 相手の家風の異常性の発覚→正当な理由あり

婚約相手そのものではなく,婚約相手の『家』の異常性が判明したことにより婚約を破棄したケースです。
日本式の結婚では,当事者だけではなく,2つの家の付き合いも生じます。
そのため,このような『家』に関する事情も,婚約破棄の正当な理由として認められました。

<相手の家風の異常性の発覚→正当な理由あり>

あ 婚約の成立

男性Aと女性Bが婚約した

い 独特な家風の発覚

婚約が成立した後にA・Bとその両親が集まり結婚式の打ち合わせを行った
Aの家(両親)は,行儀作法に細かく,見栄を張る傾向があった
Bは独特な家風の存在を感じた
Bは,将来家族として円満な関係を持つことに不安をもった
Bは婚約を破棄した

う 責任の判断

婚約破棄には正当な理由がある
→Bは責任を負わない
※東京地裁平成5年3月31日
詳しくはこちら|婚約相手の家族への不信と親の反対による婚約破棄→慰謝料なし

本記事では,婚約破棄の正当な理由がある(慰謝料は生じない)と判断した裁判例を紹介しました。
とても参考になりますが,実際の案件にストレートに合致することはありません。
細かい事情の違いによって,逆の結論となることもあります。
実際に婚約破棄の責任の有無(正当の理由)の問題に直面されている方は,みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。