1 養育費や婚姻費用を増減額させる合意の扱い
2 将来の養育費の増減額に関する合意の解釈方針
3 物価変動により変更する合意の効力(否定裁判例)

1 養育費や婚姻費用を増減額させる合意の扱い

養育費や婚姻費用分担金がいったん決まった後に,状況が変化した場合,増額や減額が認められることがあります。
詳しくはこちら|養育費や婚姻費用の増減額請求が認められる『事情の変更』の判断基準
この点,最初に養育費や婚姻費用の金額を合意した際に,将来の金額の変更も決めて条項にしておくこともあります。
このような条項(合意)の扱いには特殊性があります。
本記事では,将来の増減額についての合意について説明します。

2 将来の養育費の増減額に関する合意の解釈方針

将来の養育費(婚姻費用)の増減額に関する合意は慎重に解釈されます。
つまり,合意内容によっては,当事者が想定していない結果に結びつくことがあります。
このような状況があれば,合意は無効となる傾向があります。
養育費(婚姻費用)の根本的な考え方として,現時点の状況を前提に決めるというものがあります。
これは事情が変更したら,変更した時点で改めて妥当な金額を考えるということにつながるのです。
つまり,最初から将来のことを決めることは否定的に扱われるということです。

<将来の養育費の増減額に関する合意の解釈方針>

あ 将来の増減額に関する合意

子の成長に伴う生活費の増加や物価の上昇を見込んで
養育費を将来的に増額する旨をあらかじめ合意する

い 合意内容の解釈の方針

将来生じる事情は不確定である
→合意内容の解釈は慎重になされるべきである
※冨永忠祐編『改訂版 子の監護をめぐる法律実務』新日本法規出版2014年p173

う 未発生の事情の除外(参考)

養育費・婚姻費用の算定(変更の要否の判断)において
未発生の事情(将来発生が予定される事情)は考慮しない
詳しくはこちら|養育費や婚姻費用の増減額請求が認められる『事情の変更』の判断基準
『い』も同様の考え方である

3 物価変動により変更する合意の効力(否定裁判例)

将来のことを決めた内容が無効とされた裁判例を紹介します。

<物価変動により変更する合意の効力(否定裁判例)>

あ 合意内容

物価の変動に伴い,権利者が養育費の増額を請求したときには
扶養義務者はこれに応じる義務がある

い 合意の解釈

『あ』の合意について
一方的な意思表示により増額されるとの形成権を認めたものではない
※東京地裁平成4年2月28日

もちろん,将来の金額変更が一律に無効となるわけではありません。
金額変更の内容が明確であり,有効とされるケースはよくあります。

本記事では,養育費や婚姻費用分担金を将来増減額する内容の合意の法的扱い”を説明しました。
実際には,具体的な合意内容(条項)や個別的な事情によって有効性の判断は大きく違ってきます。
実際に,養育費や婚姻費用分担金の増減額の問題に直面している方は,本記事の内容だけで判断せず,弁護士の法律相談をご利用くださることをお勧めします。