1 不倫言いふらしケースの事例
2 不倫の公表に関する法的責任(全体)
3 不倫の公表による名誉毀損罪と侮辱罪
4 不倫の公表の予告による脅迫罪
5 正義感と名誉毀損・侮辱罪の成否
6 公的な人物と名誉毀損罪(概要)
7 社内の不倫が拡散したことによる懲戒処分(概要)
8 当事者以外に不倫を知らせた弁護士の責任(概要)

1 不倫言いふらしケースの事例

不倫の関係を周囲に言いふらしたという場合に生じる可能性のある法的責任はいくつかあります。
なお,夫婦間の離婚原因としては『不貞行為』と言います。
ここでは離婚原因の説明ではないので,一般的な『不倫』という言い方に統一します。
まずは具体的な事例を簡単にまとめておきます。

<不倫言いふらしケースの事例>

あ 不倫関係

B・Cが不倫の関係にある(不貞行為)

い 職場

A・B・Cは職場の同僚である
Aが『あ』の不倫関係を職場で言いふらした

Aは,同僚の不倫を許せなくて周囲に言いふらしたのかもしれません。
このような動機自体が良い,悪いという問題もありますが,いろいろな法的責任が生じる可能性があります。

2 不倫の公表に関する法的責任(全体)

不倫を公表したことによって生じる可能性のある法的責任の種類を整理します。

<不倫の公表に関する法的責任(全体)>

あ 刑事的責任

ア 言いふらす行為
名誉棄損罪侮辱罪に該当する可能性がある(後記※1)
イ 公表の予告行為
脅迫罪に該当する可能性がある(後記※2)

い 民事的責任

慰謝料などの損害賠償請求のことである
詳しくはこちら|不法行為による損害賠償,相殺禁止,実質的意義;不倫の公表騒動

う その他の責任

例えば職場の場合
→騒動の影響によっては懲戒処分の対象となる
詳しくはこちら|職場内での不倫騒動→懲戒処分

3 不倫の公表による名誉毀損罪と侮辱罪

不倫の公表によって名誉侮辱罪や侮辱罪が成立する可能性があります。

<不倫の公表による名誉毀損罪と侮辱罪(※1)>

あ 基本的事項

不倫の公表によりBやCの社会的評価が低下した
→名誉毀損罪or侮辱罪が成立する可能性がある

い 名誉毀損罪と侮辱罪の区別

『事実の摘示』の有無によって
→名誉毀損罪・侮辱罪が区別される

う 具体例(概要)
伝達内容 成立する罪名
『BとCは不倫している』 名誉毀損罪
『Bは浮気性だ』 侮辱罪

詳しくはこちら|違法な表現行為の刑事責任(名誉毀損罪・侮辱罪・信用毀損罪)

4 不倫の公表の予告による脅迫罪

公表はしなくても,公表の予告自体が脅迫罪になることもあります。

<不倫の公表の予告による脅迫罪>

あ 公表の予告行為

『妻の不倫を公表する』と,Dが夫に予告した

い 裁判所の判断

『夫の親族への害悪の告知』にあたる
→脅迫罪成立
※刑法222条1項,2項
※大審院昭和5年7月11日

なお,公表すると脅しつつ金銭を要求したりそれ以外の行為を要求すると,恐喝罪や強要罪にステップアップします。
詳しくはこちら|脅迫罪・恐喝罪・強要罪の基本的事項と違い

5 正義感と名誉毀損・侮辱罪の成否

仮に不倫をばらした人が,不倫した男の妻という被害者だったらどうでしょうか。
少なくとも刑法上は,公表した内容が不倫だからといって正当化されません。

<正義感と名誉毀損・侮辱罪の成否>

あ 違法性阻却事由

犯罪の構成要件に該当しても
『ア〜ウ』に該当した場合
→犯罪は成立しない
ア 正当業務行為
イ 正当防衛
ウ 緊急避難
※刑法35〜37条

い 不倫が許せない感情と違法性阻却

ア 想定
不倫が許せないという正義感に燃えて不倫をいいふらした
イ 違法性阻却事由の該当性
『法令などによる業務』ではない
→正当業務行為には該当しない
『侵害』を『防衛する』という目的はない
→正当防衛には該当しない
『生命・身体・財産等への現在の危難を避ける』という目的はない
→緊急避難には該当しない
ウ 結論
違法性阻却事由には該当しない
→犯罪は成立する(可能性がある)

以上は,言いふらした人,が,単なる友人でも被害者(不倫した男の妻)であっても同じことになります。
いずれの違法性阻却事由も成立しません。
ごく一般論として,不倫自体は『ばらされても仕方ない』というものではないのです。

6 公的な人物と名誉毀損罪(概要)

公表された内容が,政治家の行動である場合は特別な扱いがあります。
公的な人物の場合は,報道などで公表されることは正当化されることがあるのです。
詳しくはこちら|名誉毀損罪(構成要件と公共の利害に関する特例)

7 社内の不倫が拡散したことによる懲戒処分(概要)

社内(職場)での不倫関係が公表され,広く知れ渡ったことで,風紀や秩序が乱れることもあります。
そのため,解雇などの懲戒処分がなされる(有効となる)こともあります。
詳しくはこちら|社内の不倫により懲戒処分(解雇など)されることもある(基準・裁判例)

8 当事者以外に不倫を知らせた弁護士の責任(概要)

不倫関係により慰謝料の責任が生じます。
弁護士が責任追及の交渉や訴訟の依頼を受けることはよくあります。
弁護士の業務として,相手,つまり加害者の親族に知らせてしまったケースもあります。
必要がない場合は,悪質なものとして弁護士自身の懲戒責任が生じることになります。
詳しくはこちら|弁護士が当事者以外に知らせたことによる懲戒事例

本記事では,不倫関係を公表することについての法的責任について説明しました。
実際には,公表した者と不倫の当事者の関係は単純ではありません。法的責任の判断も事情によって大きく変わってきます。
実際に不倫の公表に関する問題に直面されている方は,みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。