1 戸籍訂正と名の変更手続(総論)
2 戸籍の訂正の規定
3 家裁による戸籍の訂正の許可手続
4 戸籍の不適切な記録の種類
5 名に関する戸籍の不適切な記録(概要)
6 名の『訂正or変更』の振り分けと問題点
7 実質的な配慮の内容
8 名の『訂正or変更』の実務的な振り分け(概要)

1 戸籍訂正と名の変更手続(総論)

戸籍の一般的な内容に不適切な記録がある場合,これを修正する手続として家裁の訂正許可があります。
これとは別に,戸籍上の名(名前)を変える手続として,家裁の変更許可があります。
詳しくはこちら|名の変更許可制度の基本(規定・趣旨・現実的理由)
本記事では,戸籍法の訂正の制度や,名を訂正することの問題点を説明します。

2 戸籍の訂正の規定

一般的な戸籍の訂正についての戸籍法の条文規定があります。

<戸籍の訂正の規定>

あ 条文規定(引用)

戸籍の記載が法律上許されないものであること又はその記載に錯誤若しくは遺漏があることを発見した場合には、利害関係人は、家庭裁判所の許可を得て、戸籍の訂正を申請することができる。
※戸籍法113条

い 条文上の要件

ア 不適切な記録
戸籍の記載が次のいずれかに該当する(後記※1)
・法律上許されないものである
・記載に錯誤or遺漏がある
イ 家裁の許可
『ア』を発見した場合
利害関係人は家庭裁判所に許可の申立ができる(後記※3)
家庭裁判所が許可した場合
→利害関係人は役所に戸籍の訂正を申請できる
※戸籍法113条

3 家裁による戸籍の訂正の許可手続

戸籍の訂正について家庭裁判所が許可する手続とは具体的には家事審判です。

<家裁による戸籍の訂正の許可手続(※3)>

あ 事件(案件)の分類

審判対象事件−別表第1事件として分類されている
詳しくはこちら|家事事件(案件)の種類の分類(別表第1/2事件・一般/特殊調停)

い 適用される手続

家事審判を申し立てる
調停・訴訟はない
詳しくはこちら|家事事件の種類と利用できる手続の種類の対応と審理の所要期間の目安

4 戸籍の不適切な記録の種類

一般的な戸籍の訂正が対象とするのは一定の不適切な戸籍の記録です。
実際の『不適切な記録』にはいろいろなものがあります。
分類した種類をまとめます。

<戸籍の不適切な記録の種類(※1)>

あ 戸籍記載の錯誤

届出どおりの記載がされていない

い 届出錯誤

届出の記載の際に誤記があった
例=性分化疾患による性別の誤り
詳しくはこちら|性同一性障害による戸籍上の性別の変更と性分化疾患による性別の訂正

う 命名無効

命名が法的に無効であった

え 受理錯誤

本来,役所は出生届を受理すべきではなかった
しかし役所が誤って受理した
『あ〜う』と重複するものも多い
※斎藤秀夫ほか『注解 家事審判規則(特別家事審判規則)改訂』青林書院1994年p520

5 名に関する戸籍の不適切な記録(概要)

戸籍の記録が不適切となっている状況の典型例の1つは名(名前)に関するものです。
具体的な種類をまとめます。

<名に関する戸籍の不適切な記録(概要)>

あ 文字の制限の逸脱

人名用漢字以外の漢字を含む
詳しくはこちら|人名用漢字外を含む戸籍名から脱する名の変更

い 共同親権違反

父or母の独断での命名
詳しくはこちら|父or母の独断での命名後の名の訂正・変更の裁判例集約

う 命名権の濫用

非常識な名の命名など
詳しくはこちら|命名権濫用(非常識な命名)と出生届不受理と名の変更

え 性別変更や出生児の性別の誤認

性別に整合しない命名など
詳しくはこちら|性別変更や出生時の性別誤認による名の訂正・変更(基準・裁判例)

6 名の『訂正or変更』の振り分けと問題点

戸籍上のが不適切である場合には,これを是正する方法として,前記の戸籍の訂正のほかに,名の変更(家裁の許可)の手続があります。
条文規定を前提にすると通常は訂正を利用できることになります。
しかし訂正の手続は不都合があり,変更の手続が適しているといえます。

<名の『訂正or変更』の振り分けと問題点>

あ 形式的原則論

前記※1の事情について
→理論的には名の訂正の対象となる
しかし,現実的には『い・う』の問題がある

い 申請権者が広範過ぎる

『利害関係人』に該当すれば訂正許可の申立が可能である

う 既成事実が尊重されない

名が,本人を表象する機能をある程度果たすに至っている場合
例;名を相当の期間使用している
→実質的な配慮(後記※2)が望ましい
名の訂正の許可の判断では実質的な配慮をしにくい
名の変更であれば正当事由としてこのような配慮が可能である
※斎藤秀夫ほか『注解 家事審判規則(特別家事審判規則)改訂』青林書院1994年p520

7 実質的な配慮の内容

戸籍上の名を修正する際は,実質的な事情の考慮が望ましいです(前記)。
考慮すべき事情の内容をまとめます。

<実質的な配慮の内容(※2)>

あ 関係者の意思の尊重

本人or命名権者の意思を尊重する

い 名を変えることによる影響への配慮

本人・社会に及ぼす影響を比較衡量する
※斎藤秀夫ほか『注解 家事審判規則(特別家事審判規則)改訂』青林書院1994年p520

8 名の『訂正or変更』の実務的な振り分け(概要)

戸籍上の名を実際に修正する手続では,『訂正』よりも『変更』の方が適しているといえます。
実際に多くのケースで『変更』の許可がなされています。
一方,『訂正』許可がなされるケースも少ないですが存在しています。

<名の『訂正or変更』の実務的な振り分け(概要)>

あ 原則

戸籍上の名の修正の一般論として
名の『変更』許可の対象として扱う傾向が強い

い 例外

名の『訂正』許可の対象として扱う実例もある
『変更』(あ)との区別(基準)があまりはっきりしていない
詳しくはこちら|違法な命名(独断命名・人名用漢字外)と『訂正or変更』の振り分け

本記事では,一般的な戸籍の訂正の手続と(戸籍の記録の1つである)名の訂正と変更の手続について説明しました。
実際には個別的な事情によって最適な手続は違ってきます。
実際に戸籍の記録についての問題に直面されている方は,みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。