1 高額所得者の婚姻費用の計算方法の中のフリーハンド算定方式
2 フリーハンド算定方式の基本
3 年収5264万円→婚費40万円

1 高額所得者の婚姻費用の計算方法の中のフリーハンド算定方式

婚姻費用の義務者(支払う側)が高額所得者である場合には,標準的算定方式をそのまま使って金額を計算することはできません。
高額所得者の婚姻費用の金額を計算する方法(算定方式)は4つに分けられます。
詳しくはこちら|高額所得者の婚姻費用の金額計算の全体像(4つの算定方式と選択基準)
本記事では,高額所得者の婚姻費用の計算方法の1つであるフリーハンド算定方式について説明します。

2 フリーハンド算定方式の基本

高額所得者の経済状況は”
標準的算定方式(を元にした簡易算定表)では標準的な収入を前提として作られています。想定される上限年収を超える方(高額所得者)の婚姻費用の金額を計算するには,標準的算定方式の枠組み自体が不適切ということもあります。そこで,標準的算定方式自体を使わないで,現実的な状況を元にして婚姻費用を計算することもあります。本サイトではフリーハンド算定方式と呼びます。

<フリーハンド算定方式の基本>

あ 前提事情

収入が標準的算定方式の上限を超える

い フリーハンド算定方式

標準的算定方式の枠組みを用いない
個別的事情から相当な婚姻費用を裁量で算定する
類型的な算定方法を用いない

う 算定方法の例・目安

ア 基本的な考慮事項
同居中の生活レベル・生活費支出状況
現在の権利者の生活費支出状況
イ 修正を要する事情
反映されていない『必要分』を加算する
反映されている中の『浪費部分』を差し引く
※松本哲泓著『婚姻費用・養育費の算定−裁判官の視点にみる算定の実務−』新日本法規出版2018年p143
※松本哲泓稿『婚姻費用分担事件の審理−手続と裁判例の検討』/『家庭裁判月報 平成22年11月=62巻11号』最高裁判所事務総局p82,83

3 年収5264万円→婚費40万円

フリーハンド算定方式を採用した実例を紹介します。
夫(義務者)の総収入が5000万円を超えていました。
収入とは関係なく,過去の実情として,夫が妻に生活費として50万円を渡していました。裁判所は,この金額を基準にすることにして,最終的な婚姻費用分担額を40万円としました。
敢えて標準的算定方式による婚姻費用の上限を考えると,50万円(や40万円)よりはとても低いです。そこで,基準である過去の生活費の実績を少しだけ標準的算定方式による金額に近づけたということだと思います。

<年収5264万円→婚費40万円>

あ 義務者=夫の経済的状況

医師・医院経営
総収入=5264万円

い 従前の生活費支出状況

同居中・別居中の一定期間について
夫が妻に,月額50万円を生活費として交付していた

う 裁判所の判断プロセス

月額50万円を一応の基準とする
次の事情を加えて総合考慮する
・別居後,長男が誕生した
・長男は妻と同居している

え 裁判所の判断の結論

『夫と同居中の妻の生活実態,そこから導かれる妻とその子のあるべき生活レベル』
は月額40万円である
※大阪高裁平成20年5月13日

本記事では,高額所得者の婚姻費用の金額の計算方法のうちフリーハンド算定方式について説明しました。
実際には,個別的な事情や主張・立証のやり方次第で結論は違ってきます。
実際に高額所得者が関わる夫婦の問題に直面されている方は,みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。