【離婚の形式の4種類(協議・調停・審判・裁判離婚)と成立時点】

1 離婚の類型は協議,調停,審判,裁判の4つに分けられる
2 夫婦で離婚に合意し,離婚届を役所に提出すれば『協議離婚』が成立する
3 離婚調停において離婚に合意すると『調停離婚』が成立する
4 『裁判所の職権で離婚の審判』をする制度はほとんど使われない
5 離婚訴訟の判決確定,和解成立によって『裁判離婚』が成立する
6 平成16年の法改正による調停離婚・裁判離婚の効力

1 離婚の類型は協議,調停,審判,裁判の4つに分けられる

離婚が成立するケースをその手続によって,つまり形式的に分類すると次のとおりとなります。

<離婚の形式的分類>

・協議離婚;民法763条〜
・調停離婚;家事事件手続法268条
・審判離婚;家事事件手続法284条
・裁判離婚;民法770条

なお,この種類によって法的な扱いが何か変わることはありません。
逆に分類の定義も公的な,明確なものはありません。
便宜的な分類です。

2 夫婦で離婚に合意し,離婚届を役所に提出すれば『協議離婚』が成立する

(1)統計上の大多数が『協議離婚』

協議離婚は,統計上,最も多い離婚の類型です。
約90%が協議離婚です。

(2)成立は,『合意+届出』

文字どおり,夫婦の協議,合意だけで成立するものです。
正確には,『離婚届を役所が受理した時点』で離婚が成立することになっています。
創設的届出と言われています。
詳しくはこちら|創設的届出/報告的届出|役所への届出の分類|提出義務・罰則

(3)離婚届の記載事項と別に決めておく事項

離婚届に記載する事項は最低限のものです。
通常は,離婚の各種条件を協議して決定し,書面としてまとめておきます。
別項目;協議離婚の際は,条件を『離婚協議書』にまとめておくとベター

(4)撤回の際は不受理申出制度が有用

離婚届に調印した後,届出を実際に行う前に「気が変わった」という場合は成立しません。
とは言っても,離婚届を相手に預けてあり,強引に提出されるとその後,一定の手続が必要になります。
そこで離婚届に記入した後に気が変わったという場合は役所の受理を防ぐというニーズがあります。
これに応じて,役所で真正な離婚届と思って受理してしまうことを防ぐ制度があります。
『不受理申出』という制度です。
別項目;不受理申出

3 離婚調停において離婚に合意すると『調停離婚』が成立する

一般的に,夫婦での話し合いでは,条件を含めて合意に達しない,ということもあります。
その場合は,まずは離婚調停を申し立てるのが一般的です。
詳しくはこちら|調停前置|基本|趣旨・不服申立

離婚調停では,調停委員を介して話し合うことになります。
夫婦関係調整(離婚)調停と呼ぶこともあります。
また夫婦関係の修復を求める調停から,方向性が変わって離婚が成立ということもあります。
別項目;夫婦円満調停

いずれにしても,調停の段階で離婚することを『調停離婚』と言います。
この場合,家庭裁判所で「調停調書」が作成されます。
調停調書作成により離婚が『成立』します。
なお,このルールは平成16年の人事訴訟法改正によるものです(後述)。

調停離婚の成立後に役所への届出が必要です。
詳しくはこちら|創設的届出/報告的届出|役所への届出の分類|提出義務・罰則

4 『裁判所の職権で離婚の審判』をする制度はほとんど使われない

(1)離婚の『審判』はほとんどなされない

法律上,離婚調停の手続において,裁判所が『審判』を行うことができます。
※家事事件手続法284条
詳しくはこちら|家事調停の『調停に代わる審判』|相手の出席拒否・合意間近という場合に使える
これは裁判所の職権で行うことが可能,と規定されています。
しかし,家事調停の手続の性質として証拠調べをしっかり行うことはありません。
『話し合いが中心』とされているのです。
『証拠調べ』をしていないと第三者としての強制力を持った判断として妥当ではないと考えられています。
訴訟における判決,とは大きく違うところです。

(2)離婚審判がなされるレアケース

実際に,審判がなされるのは,次のような場合です。

<離婚の審判がなされるレアケースの例>

ア 離婚調停において当事者が離婚の意向が一致しているイ 他の条件についてもほぼ一致しているウ 当事者双方が最後の条件の微調整を裁判所が行うことを希望している

似ている制度で『合意に相当する審判』がありますが,離婚調停では適用されません。
※家事事件手続法277条1項
詳しくはこちら|家事調停における合意に相当する審判(対象案件・要件・事実の調査)

(3)離婚審判に対する不服申立

なお,離婚の審判がなされた場合,判決同様に不服申立の手続が用意されています。
2週間以内に異議申立ができるのです(家事事件手続法286条,279条2項)。

(4)審判離婚の『成立』

審判離婚に対して不服申立がなされない場合審判が確定します。
この時点で離婚が『成立』します。
その後に役所に離婚届を行うことになります。
この離婚届は報告的届出です。
詳しくはこちら|創設的届出/報告的届出|役所への届出の分類|提出義務・罰則

5 離婚訴訟の判決確定,和解成立によって『裁判離婚』が成立する

離婚調停において,合意に達しない場合に「審判」がなされることはほとんどありません(前述)。
そうすると『不成立』となって手続が終了します。
当事者としては離婚訴訟を提起できることになります。
詳しくはこちら|家事事件の調停前置の基本(趣旨・不服申立)

離婚訴訟においては,離婚原因が審査されます。
詳しくはこちら|離婚原因の意味・法的位置付け

また離婚の条件である親権,養育費,財産分与,慰謝料についても判断されます。
最終的に,離婚を認める判決が言い渡された場合,これが確定した時点で離婚が成立します。
これを「裁判離婚」とか「判決離婚」と呼んでいます。
その後,役所に離婚届を提出することになります。
これは「報告的届出」です。
別項目;報告的届出

離婚訴訟においては,裁判官の和解勧告により『離婚を認める和解』が成立することも多いです。
別項目;離婚訴訟では,結論としての『棄却判決』は少ない

『訴訟上の和解』で離婚を合意すると,これによって離婚が成立します(人事訴訟法37条1項,民事訴訟法267条)。
なお『原告の請求を認める』という認諾についても同様に離婚が成立となります(同条)。

その後,報告的届出として,離婚届を役所に提出することになります。
詳しくはこちら|創設的届出/報告的届出|役所への届出の分類|提出義務・罰則
なお,以前は和解ではその時点で離婚が成立するとは認められていませんでした(後記)。

6 平成16年の法改正による調停離婚・裁判離婚の効力

平成16年の人事訴訟法改正により,調停離婚和解離婚について次のように変更されました。

<平成16年の法改正による調停離婚・裁判離婚の効力>

あ 改正『前』

ア 和解・調停成立 離婚する内容の訴訟上の和解・調停が成立した場合でも
→法的に離婚は成立しない
イ その後『離婚届』を役所に提出 離婚が成立する(創設的届出)

い 改正『後』

ア 和解・調停成立 離婚する内容の訴訟上の和解・調停が成立した場合
→法的に離婚が成立する
イ その後『離婚届』を役所に提出 当事者が役所に離婚届を出す義務はある
離婚届は,あくまでも戸籍に載せる(事後的反映)ことが目的(報告的届出)
※家事事件手続法268条1項
※人事訴訟法37条1項,民事訴訟法267条

法改正前は,和解成立後に,一方の気が変わった場合,離婚成立はなかったことになる,という不安定な状態でした。
その後,法律改正により『調停成立』の時点で『離婚も成立する』ということになりました。
この改正に伴って,離婚を認める調停成立時や和解成立時の「本人出席」の解釈が変わっています。
詳しくはこちら|家裁の調停・審判・訴訟における和解成立の際の当事者本人出席の要否

本記事では,離婚の形式の種類について基本的な内容を説明しました。
実際には,離婚の手続に関する細かい規定や解釈があります。
実際に離婚に関する手続や方法について問題に直面されている方は,弁護士の法律相談をご利用くださることをお勧めします。

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