1 借地上の建物焼失後の『建物再築承諾・延焼の損害賠償』の交渉→違法
2 借地収用の補償・借地承継の交渉→違法
3 借地人との明渡交渉・土地の購入候補者との売買交渉→違法
4 借地人との明渡交渉→違法→『依頼者』も3割の違法性あり・登記返還は認めない
5 農地売却・ビルの移転補償に関する交渉→反復継続を否定→合法
6 ビルの賃借人との明渡交渉→違法
7 不動産引渡命令の申立の代行→違法
8 競売不動産の占有者との明渡交渉→違法

1 借地上の建物焼失後の『建物再築承諾・延焼の損害賠償』の交渉→違法

弁護士以外が一定の法的サービスを提供すると,いわゆる非弁行為として違法となることがあります。
詳しくはこちら|非弁護士の法律事務の取扱禁止(非弁行為)の基本(解釈論・判断基準)
本記事では,非弁行為の実例のうち,不動産に関するケースを紹介します。
まずは『貸地・借地』に関するトラブル解決ニーズを紹介します。
借地上の建物が『滅失』すると,その権利関係はちょっと複雑になります。
詳しくはこちら|旧借地法における建物の朽廃による借地の終了(借地権消滅)

<東京地裁平成24年1月25日>

あ 加害者の通常業務

不動産に関するコンサルティング業

い 被害者

借地人・建物所有者

う 事案

建物が火災により焼失した+周囲へ延焼した

え 依頼内容(名称)

『隣地調整実務コンサルティング』
『土地の賃貸借契約に関する隣地との権利調整及び建築アドバイス等の業務』
『底地・借地コンサルティング(費用)』

お 依頼内容(実質)

建物再築に関する地主との交渉
建物延焼の損害賠償に関する被害建物所有者との交渉

か 報酬設定

ア 着手金
測量等の費用として30万円
イ 成功報酬
隣地調整予定費用の基準を230万円とし,ここからの減額分の30パーセント

か 裁判所の判断

弁護士法72条違反に該当する

2 借地収用の補償・借地承継の交渉→違法

土地の収用,というと公的なので『黙っていても適正額が支払われる』と思ったら大間違いなのです。
関連コンテンツ|借家の明渡料|算定方法・相場|借家権価格・正当事由充足割合・営業補償

<東京地裁平成23年3月1日>

あ 被害者

借地権者

い 依頼内容

ア 借地収用の補償金に関する東京都との交渉
イ 相続税の申告・遺産分割協議書の作成
ウ 借地の承継に関する地主との交渉

う 報酬設定

ア 『交渉手数料』
50万円
イ 借地収用の交渉
・着手金 20万円
・成功報酬 200万円
ウ ビル収用の交渉
・着手金 30万円

え 裁判所の評価

ア 契約の有効性
弁護士法72条違反に該当する
→契約は無効である;民法90条
イ 非債弁済
被害者は被告を弁護士と誤解していた
→非債弁済には該当しない

お 裁判所の判断(結論)

既払い報酬300万円について返還請求を認める
悪意の受益者として,報酬の受領日以降年5%の利息を付する

3 借地人との明渡交渉・土地の購入候補者との売買交渉→違法

いわゆる『土地開発』のプロジェクトに関するブラック事例です。

<東京地裁平成19年5月25日>

あ 依頼内容

依頼者所有の土地売買に関する次の交渉
・土地の借地人との間の立退交渉
・買主(候補者)との間の売買契約締結交渉

い 裁判所の判断

報酬請求→弁護士法72条違反→無効
売買締結交渉→宅建業法違反→無効

4 借地人との明渡交渉→違法→『依頼者』も3割の違法性あり・登記返還は認めない

借地明渡,というメジャーなプロジェクトです。
このケースでは『依頼者も3割悪質』と判断されました。
結果的に『不動産の所有権を取り上げられたまま』という悲惨な状態で終わりました。
裁判所は悪い者には『救済の手を貸さない』というキザなところがあるのです。
これを専門用語で『クリーンハンズ』などと言います。
関連コンテンツ|男女交際における『民事的違法』;公序良俗違反,不法原因給付,慰謝料

<神戸地裁平成13年10月29日>

あ 依頼内容

土地の更地化・借地権整理
借地権の買取・明渡交渉

い 裁判所の判断|違法性判断

弁護士法72条違反に該当する
公序良俗違反→無効

う 裁判所の判断|既払い報酬の返還請求

不法の程度=顧客は3割
→7割の返還請求を認めた

え 裁判所の判断|費用以外の清算

業務遂行の一環として『中間省略登記』が行われた
顧客から→加害者への移転
これは『不法原因給付』に該当する
登記抹消請求は認めない

5 農地売却・ビルの移転補償に関する交渉→反復継続を否定→合法

ここからは『建物』の明渡に関するケースを紹介します。
最初に,結論が『合法』とされたケースから行きます。
『単発』の業務だったので『弁護士法違反』ではない,という『首の皮一枚』で助かった結論です。
『反復継続の意思』は通常は容易に肯定されます。
安直にマネをすることはお勧めできません(ポジショントーク)。

<東京地裁平成23年3月30日|合法>

あ 被害者

農地・ビルの所有者

い 依頼内容

ア 農地売却のコンサルティング業務
イ ビルの移転補償交渉に関わるコンサルティング業務

う 報酬設定(コンサルタント料)

農地;販売価格が3000万円以上の場合は販売価格の15%
ビル;補償額総額が7000万円以上の場合はその額の15%

え 具体的遂行業務

東京都との移転補償交渉など

お 裁判所の判断

ア 原則論
反復的に又は反復継続する意思が認められない
→弁護士法72条違反に該当しない
→既払い報酬の返還請求は認めない
イ 仮に違法の場合
仮に弁護士法72条違反だとした場合
→民法708条により既払い報酬の返還請求はできない

6 ビルの賃借人との明渡交渉→違法

ビルの明渡交渉のケースです。
一般的な判断により,違法となっています。

<最高裁平成22年7月20日>

あ 被害者

ビルの所有者

い 依頼内容

ビルの賃借人との明渡交渉
賃貸借契約を合意解除した上で各室を明け渡させる業務

う 裁判所の判断

具体的状況が『法的紛議が生ずることがほぼ不可避である』ものであった
→弁護士法72条違反に該当する

裁判所は,一定の対立状況があることを理由として弁護士法72条違反であると認めました。
詳しくはこちら|非弁護士の法律事務の取扱禁止(非弁行為)の基本(解釈論・判断基準)

7 不動産引渡命令の申立の代行→違法

競売物件での明渡では『不動産引渡命令』という簡略化手続を利用できます。
詳しくはこちら|競売の買受人は引渡命令申立ができる
簡略化されているところから,弁護士以外が『代行(代理)』してしまったケースです。
『引き受けた者』が違法となるのは当然として,不動産引渡命令自体が却下となってしまいました。
その後の明渡が一気に難しくなってしまいました。

<東京高裁平成21年10月15日>

あ 加害者

当事者(会社)の従業員ではない,別会社所属の者

い 依頼内容

不動産引渡命令の申立

う 裁判所の判断

弁護士法72条違反,民事執行法13条違反である
→不動産引渡命令を取り消し,申立自体を却下した

8 競売不動産の占有者との明渡交渉→違法

競売に伴う『明渡』について,今度は『交渉』を引き受けたケースです。

<東京高裁平成19年4月26日>

あ 加害者の通常業務

不動産競売物件の記録を提供するなどの業務
会員となった顧客に対して情報を提供する

い 依頼内容

不動産の占有者との間の明渡に関する和解交渉など

う 裁判所の判断

弁護士法72条違反に該当する
→公序良俗違反→無効
→報酬請求を否定した