最高裁の上告審の実情|審理は数か月・終局は決定と不受理・理由書は長文化

1 最高裁の上告審の実情|審理は数か月・終局は決定と不受理・理由書は長文化

上告をした。最高裁判所は記録を読んで、こちらの言い分に答えてくれるでしょうか。

本記事では、最高裁判所自身が公表した統計と、最高裁判所の調査官が書いた論稿から、民事の上告審で現に起きていることを説明します。審理にどれだけの時間がかかっているか、どういう形で終わっているか、そして当事者が出す理由書がどれだけの分量になっているかの3つが要点です。理由書をどう書くかという作法の側は扱いません(事実審については控訴理由書の書き方|裁判官が原判決に感じた疑問を突くで説明しています)。

2 結論——審理は3〜4月・圧倒的多数が決定と不受理・理由書は100頁超も珍しくない

令和6年の上告審で起きていること

(ア)民事上告事件の平均審理期間は3.8月、民事上告受理事件は3.9月。令和元年以降はおおむね長期化している(イ)審理期間が3月以内の事件は上告事件で51.6%、上告受理事件で49.0%。6月超1年以内の割合が前回より増えた(ウ)圧倒的多数の事件が、上告事件なら決定、上告受理事件なら不受理決定で終局している(エ)第一審の受理から上告審の終局までは平均39.2月(上告受理事件は40.3月)。3年を超える事件が4割台を占める(オ)上告理由書・上告受理申立て理由書は長文化していて、100頁を超えるものも珍しくない(カ)平成17年3月から、20頁を超える理由書に目次と要旨を添付するよう当事者へ依頼している。双方を添付した事件は3分の1程度にとどまる

3 平均審理期間=令和6年は上告事件3.8月・上告受理事件3.9月

最高裁判所事務総局は、民事上告事件と民事上告受理事件について、平均審理期間の推移を公表しています。令和6年の平均審理期間は、上告事件が3.8月、上告受理事件が3.9月です。

推移は一本調子ではありません。平成21年以降は長期化し、平成26年から短縮に転じ、令和元年以降はふたたび長期化の傾向にあります。前回の検証と比べても、上告事件・上告受理事件のいずれも長くなっています。

引用:文献・公開情報

平均審理期間の推移=令和6年は上告3.8月・上告受理3.9月

平均審理期間は、平成 21 年以降長期化傾向となり、平成 26 年から短縮傾向に転じ、令和元年以降はおおむね長期化傾向となっており、令和6年においては、上告事件が 3.8 月、上告受理事件が 3.9 月となり、前回(それぞれ 3.4 月、3.6 月)より長期化した。

※『上訴審における訴訟事件の概況』/『裁判の迅速化に係る検証に関する報告書』最高裁判所事務総局令和7年7月p212

4 審理期間の分布→3月以内が約半数・近年は長期化

平均だけでは分布が見えないので、審理期間の区分ごとの割合も見ておきます。

上告事件では、3月以内で終わった事件が51.6%、3月を超えて6月以内が33.7%です。あわせて8割強が半年以内に終わっていることになります。もっとも、この2つはいずれも前回より減っていて、かわりに6月を超えて1年以内の事件が12.7%へ増えています。上告受理事件も同じ傾向で、3月以内が49.0%、3月超6月以内が35.7%、6月超1年以内が13.2%です。

短い事件が多いという形そのものは変わっていませんが、その内側で重心が後ろへ動いています。

引用:文献・公開情報

審理期間別の割合=3月以内が51.6%・6月超1年以内が増加

上告事件については、審理期間が3月以内の事件の割合(51.6%)及び3月超6月以内の事件の割合(33.7%)がいずれも前回(それぞれ、56.0%、34.2%)より減少し、審理期間が6月超1年以内の事件の割合(12.7%)が前回(8.3%)より増加するなど、全体的に長期化しており、平均審理期間(3.8 月)は、前回(3.4 月)より 0.4 月長くなった。

※『上訴審における訴訟事件の概況』/『裁判の迅速化に係る検証に関する報告書』最高裁判所事務総局令和7年7月p213

5 終局の形=圧倒的多数が決定と不受理

平均審理期間が数か月にとどまるのは、終わり方の内訳と結び付いています。

上告事件は決定(却下決定または棄却決定)で、上告受理事件は不受理決定で終局するものが圧倒的多数を占めます。口頭弁論を開いて判決に至る事件は、ごく一部です。どういう場合に上告が受理されるのかは「法令の解釈に関する重要な事項」に当たる場合|民事訴訟法318条1項で、上告受理制度が設けられた理由と運用は上告受理制度が平成8年改正で設けられた理由と現在の運用で説明しています。

引用:文献・公開情報

終局区分=圧倒的多数が決定と不受理

なお、圧倒的多数の事件が、上告事件であれば決定(却下決定又は棄却決定)、上告受理事件であれば不受理決定で終局していることは、前回と同様である

※『上訴審における訴訟事件の概況』/『裁判の迅速化に係る検証に関する報告書』最高裁判所事務総局令和7年7月p213

引用:文献・公開情報

終局区分=圧倒的多数が決定と不受理

なお、圧倒的多数の事件が、上告事件であれば決定(却下決定又は棄却決定)、上告受理事件であれば不受理決定で終局していることは、前回と同様である

※『上訴審における訴訟事件の概況』/『裁判の迅速化に係る検証に関する報告書』最高裁判所事務総局令和7年7月p213

6 第一審受理から上告審終局まで=平均39〜40月・3年超が4割台

上告審だけを見れば数か月ですが、当事者が体感する時間はそこでは終わりません。

第一審の受理から上告審の終局までの平均期間は、上告事件で39.2月、上告受理事件で40.3月です。3年を超える事件の割合は、上告事件で44.3%、上告受理事件で48.4%にのぼります。最高裁判所まで争った事件のおよそ半分は、第一審に係属してから終わるまでに3年以上かかっていることになります。

なお、3年を超える事件の割合は、前回(上告事件44.5%、上告受理事件49.3%)よりいずれも減っています。

引用:文献・公開情報

第一審受理から上告審終局まで=平均39.2月と40.3月

上告事件の平均期間(39.2 月)は前回(38.8 月)より長期化しており、上告受理事件(40.3 月)は、前回(40.6 月)より短縮している。
合計の期間が3年を超える事件の割合は、上告事件で 44.3%、上告受理事件で 48.4%と、いずれも前回(上告事件 44.5%、上告受理事件 49.3%)より減少した

※『上訴審における訴訟事件の概況』/『裁判の迅速化に係る検証に関する報告書』最高裁判所事務総局令和7年7月p214

7 理由書の長文化=100頁を超えるものも珍しくない

ここまでは裁判所の側の時間ですが、当事者が出す書面の分量も、報告されている実情の1つです。

最高裁判所の民事上席調査官らは、上告理由書・上告受理申立て理由書が長文化していて、100頁を超えるものも珍しくないと述べています。そのうえで、内容を正確に理解するのに困難を伴うものが増えてきていると書いています。

引用:文献・公開情報

理由書の長文化=100頁を超えるものも珍しくない

また、近年、上告理由書、上告受理申立て理由書等が長文化する傾向にあり(100頁を超えるものも珍しくない)、内容を正確に理解するのに困難を伴うものが増えてきているので、

※福田剛久ほか稿『最高裁判所に対する民事上訴制度の運用』/『判例タイムズ1250号』2007年11月p11

8 目次と要旨の添付の依頼→双方を添付した事件は3分の1程度

この長文化に対して、裁判所は当事者に作業を依頼する形で対応しました。

平成17年3月から、日弁連にも協力を依頼したうえで、20頁を超えるような長い理由書には目次と要旨を添付するよう当事者に依頼しています。依頼は、各高等裁判所が上告提起通知書や上告受理申立て通知書を送達する際に、その旨を記載した文書を同封する形で行われます。

その後の実際は、半分以上の事件で目次か要旨のいずれかが添付されるようになった一方、双方が添付されている事件は3分の1程度にとどまっている、とされています。

引用:文献・公開情報

目次と要旨の添付の依頼と、その後の添付率

平成17年3月から、日弁連にも協力を依頼して、当事者に対し、20頁を超えるような長い理由書には目次と要旨を添付することをお願いするようになった
(具体的には、各高裁で上告提起通知書や上告受理申立て通知書を当事者に送達する際に、上記のようなお願いを記載した文書を同封している。
詳しくは、「高橋ほか民事訴訟法改正10年座談会」36頁〔福田剛久発言〕参照)。
最近では、20頁を超える理由書が提出された事件の半分以上で目次か要旨のいずれかが添付されるようになってきたが、その双方が添付されている事件は3分の1程度にとどまっている。

※福田剛久ほか稿『最高裁判所に対する民事上訴制度の運用』/『判例タイムズ1250号』2007年11月p11

9 事実審の側の同じ制約(参考)(概要)

同じ制約は事実審の側にもあります。裁判官が1つの事件にかけられる時間と記録の量については裁判官が1つの事件にかけられる時間|新受件数と、記録を読み切れない実情で、控訴理由書が長すぎるという実情については控訴理由書の書き方|裁判官が原判決に感じた疑問を突くで説明しています。

10 おわりに

以上が、最高裁判所自身の統計と調査官の論稿から読み取れる民事上告審の実情です。審理は数か月で終わり、その大半は決定と不受理決定で、他方で当事者が出す理由書は長文化していて、裁判所は目次と要旨の添付を依頼しています。

ここで紹介したのは起きていることであって、では理由書をどう書くべきかという話はしていません。

本記事は一般的な説明です。個別の事案にそのまま当てはまるとは限らず、一見似ている事案でも、事情が異なれば結論は異なります。個別的事情により、法的判断や主張として活かす方法、最適な対応方法は違ってきます。本記事でご説明したものと同様の問題に直面されている方は、みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。

本記事の引用は、書籍・判例などの原文から範囲を選んで載せたものです。改行の位置は読みやすさのために当方で整えており、原文の改行と同じとは限りません。また、記号や外字の扱いにより、文字の一部が原文と異なって表示されることがあります。原文の段落の行頭にある字下げは再現していません。

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