控訴審の第1回口頭弁論期日|70〜80%が1回で結審する理由と続行の型

1 控訴審の第1回口頭弁論期日|70〜80%が1回で結審する理由と続行の型

控訴したのに、第1回の期日で弁論が終結してしまった。言いたいことはまだあったのに、これで終わりなのでしょうか。

本記事では、現役の高裁裁判官が座談で語った第1回口頭弁論期日の実情を、文献にそくして説明します。何割が1回で終わるのか、続行になるのはどんな事件か、振分けの基準は何か、そして第1回結審への不満に裁判所の側がどう答えているかが要点です。

控訴理由書に何を書くと効くのかは、別の記事で説明しています。

控訴理由書の書き方|裁判官が原判決に感じた疑問を突く

裁判官が1つの事件にかけられる時間そのものも、別の記事で説明しています。

裁判官が1つの事件にかけられる時間|新受件数と、記録を読み切れない実情

2 結論——第1回期日で請求の当否が判断できる事件は、そこで終結

この座談から取り出せる要点をまとめます。いずれも後述の各節で引用を挙げて説明します。

控訴審の第1回期日で何が決まるか

(ア)第1回で終結するのは、感覚として全事件の70%から80%くらいである(イ)判決の言渡期日は、概ね1か月半から2か月後に指定される(ウ)多くの事件では第1回期日で和解勧告をし、その日のうちに引き続き和解期日を設ける(エ)続行になるのは、控訴理由書の提出が第1回期日の直前で被控訴人の反論が間に合わない場合、第1回期日の直前に附帯控訴がある場合、原審での争点整理が不十分な場合である(オ)振分けの基準は、第1回口頭弁論期日を行えば請求の当否が判断できると考えるかどうかで、それ以外の理由はない(カ)1審判決と逆の結論になる場合も、和解勧告の中で心証は開示している(キ)結審の理由をこれ以上詳しく説明せよと言われると、判決理由をあらかじめ言うことになる(ク)控訴審の事後審化とは、請求の当否を最終的な審判の対象としつつ、第一次的には控訴理由書に記載された誤りに審判の対象を絞って審理を集中させる訴訟運営をいう(ケ)裁判官はまず原判決を読んで問題点を読み取り、次に控訴理由書を読み、それを念頭に置いて記録を読み込む

3 1回で終結するのは全事件の70〜80%——言渡しは1か月半から2か月後

まず数字です。中西裁判官は、1回で終結するのは感覚として全事件の70%から80%くらいだと述べています。終結可能な事件は弁論を終結して判決言渡しの期日を指定し、言渡期日は概ね1か月半から2か月後です(部によって多少違いがあるとされています)。

あわせて押さえておくべきことがあります。多くの事件では第1回期日で和解勧告をし、その日のうちに引き続き和解期日を設けます。和解期日が重ねられて指定された言渡期日を過ぎる場合は、言渡期日を変更します。和解期日で裁判所から心証開示されることがかなりあり、その結果として当事者から弁論再開の申出がされることもあります。

第1回期日で終結・言渡しは1か月半から2か月後・和解期日は同じ日のうちに

終結可能な事件は、弁論を終結して判決言渡しの期日を指定します。
言渡期日は、概ね1カ月半ないし2カ月後ですが、部によって多少違いがあると思います。
多くの事件は、第1回期日で和解勧告をして、第1回口頭弁論期日が行われた日のうちに、引き続き和解期日を設けます。
その後、和解期日が重ねられて指定された言渡期日を過ぎる場合は、言渡期日を変更しています。
また後で出てくるかもしれませんが、和解期日において裁判所から心証開示されることが、かなりあります。

※『裁判官に聴く 訴訟実務のバイタルポイント No15・完 控訴審』/『ジュリスト1529号』2019年3月p50

1回で終結するのは全事件の70%から80%

その結果、当事者から弁論再開の申出がされることもあり、事案によっては表2民事・行政既済事件の審理期間調べ
(略)
弁論を再開して主張・立証の補充が行われるということになります。
1回で終結するのは、大体、感覚的には全事件の70%~80%くらいです。

※『裁判官に聴く 訴訟実務のバイタルポイント No15・完 控訴審』/『ジュリスト1529号』2019年3月p50、51

4 続行になる3つの型——控訴理由書が期日直前・附帯控訴・争点整理が不十分

では、残りの20%から30%はどんな事件なのでしょうか。中西裁判官は3つの型を挙げています。

1つ目は、控訴理由書の提出が第1回期日の直前になり、それに対して被控訴人から反論の必要があるけれども間に合わなかった場合です。2つ目は、第1回期日の直前に附帯控訴がある場合で、附帯控訴に対する答弁はできるにしても反論する余裕がありません。この2つは「結構ある」とされています。いずれも第2回期日で終結することが多いとされます。

3つ目は弁論準備期日を指定する事件で、原審での争点整理が不十分で控訴審で新たに主張をしてもらう必要があるような場合です。弁論準備に付す場合は、第1回弁論期日の日に引き続いて弁論準備を行います。数としては多くないものの、第2回期日に人証調べを行うこともあります。

続行の3つの型=控訴理由書が期日直前・附帯控訴・争点整理が不十分

それ以外では、まず、弁論を続行する事件があります。
どういう事件を弁論続行するかというと、控訴理由書の提出が第1回期日の直前になり、それに対して被控訴人から反論の必要があるけれども間に合わなかった場合、それから、これは結構あるのですが、第1回期日の直前に附帯控訴がある場合があります。
附帯控訴に対する答弁はできるにしても反論する余裕はありませんので、その場合も続行することになります。
争点整理が必要な場合は次に述べる弁論準備に付することが多いのですが、弁論準備をするほどのことはないという場合は、弁論期日をもう1回指定します。
今述べたような事件では、第2回期日に終結することが多いかと思います。
3番目に、弁論準備期日を指定する事件があります。
弁論準備に付す場合は、第1回弁論期日の日に引き続いて弁論準備を行います。
どういう事件を弁論準備にするかというと、原審での争点整理が不十分で控訴審で新たに主張をしてもらう必要があるような場合です。
弁論準備手続の中で和解を打診することもあります。
それから、数としては多くないのですが、第2回期日に人証調べを行うこともあります。
これも後から出るかもしれませんが、人証調べが必要であるが、改めて争点整理は必要でないような場合です。

※『裁判官に聴く 訴訟実務のバイタルポイント No15・完 控訴審』/『ジュリスト1529号』2019年3月p51

5 振分けの基準=第1回期日を行えば請求の当否が判断できるか・それ以外の理由はない

第1回結審と続行の振分けに基準があるのかは、多くの質問を受ける点だと司会が述べています。中西裁判官の答えは単純です。第1回口頭弁論期日を行えば請求の当否が判断できると考える事件は終結し、そのままでは判断ができず審理が必要である事件は続行する。それ以外の理由はない、というものです。

「何が何でも第1回で終結しようとは思っておらず」、判断になお主張が必要である、立証が必要である、場合によっては人証調べが必要であるという事件については当然に続行すると述べられています。

第1回期日で請求の当否が判断できるかどうかで決まる・それ以外の理由はない

基準という言葉が適切かどうかは分かりませんが、裁判所の立場としては、第1回口頭弁論期日を行えば請求の当否が判断できると考える事件は終結します。
そのままでは請求の当否の判断ができない、審理が必要であるという事件は続行します。
それ以外の理由はありません。
当たり前のことです。
何が何でも第1回で終結しようとは思っておらず、判断にはなお主張が必要であるとか、立証が必要である、場合によっては人証調べが必要であるという事件については、当然、続行いたします。

※『裁判官に聴く 訴訟実務のバイタルポイント No15・完 控訴審』/『ジュリスト1529号』2019年3月p51

6 第1回結審への不満と、裁判所の側の答え

ここがこの座談の中心です。司会は「冒頭に申し上げたとおり、第1回結審に関しての不満が非常に多いのですが、それはどこに理由があると思われますか」と切り出しています。以下、挙げられた4つの不満と、裁判所の側の答えを順に見ていきます。

(1)控訴人が更に主張したかった→控訴理由書で十分主張できるので批判は当たらない

1つ目は、1審判決が維持される場合でも控訴人からは更に主張したいことがあった、というものです。中西裁判官は、そのような場合は控訴理由書で十分主張できるのだから、裁判所から見る限り批判は当たらないのではないかと述べています。

控訴理由書が審理の出発点になるという前提が、ここに表れています。

更に主張したいことがあったのなら控訴理由書で主張できた

当たっているかどうか分かりませんが、1審判決が維持される場合でも、控訴人からは更に主張したいことがあったということかもしれません。
しかしそのような場合は、控訴理由書で十分主張できるのですから、裁判所から見る限り、批判は当たらないのではないかと思っています。

※『裁判官に聴く 訴訟実務のバイタルポイント No15・完 控訴審』/『ジュリスト1529号』2019年3月p52

(2)逆の結論で1回結審は不意打ち→和解勧告の中で心証を開示

2つ目は、1審判決と逆の結論になるのに1回で終結してしまうのは、1審で勝訴している被控訴人にとっては不意打ちだ、というものです。

これに対する答えは、第1回期日で終結する場合も多くの事件で和解勧告をしており、1審と逆の結論になる場合には和解の中で心証を開示しているから、全くの不意打ちはそれほどないのではないか、というものです。大段裁判官は、主張・立証によって結論が変わる可能性がある場合にはできるだけ主張・立証を促して弁論を続行するようにしている、仮に主張・立証がなされても結論が変わらないと見込まれる事件では弁論を終結するが和解勧告の中で裁判所の見方を述べる、と補っています。

和解の席で記録に表れていない事情が出てきた場合には、改めて弁論を再開してその点の審理を行うこともあるとされています。

逆の結論になる場合は和解の中で心証を開示している

それから、1審判決と逆の結論になるのに1回で終結してしまうのは、1審で勝訴している被控訴人にとっては不意打ちだと、時々聞くことがあります。
先ほど言いましたように、第1回期日で終結する場合、多くの事件で和解勧告をしています。
1審と逆の結論になる場合には、和解の中で心証は開示していると思います。
結論が逆になる場合、1審判決は維持が困難であるというような、いろいろな言い方があると思いますが、それは伝えていると思いますので、全くの不意打ちはそれほどないのではないかと思っています。

※『裁判官に聴く 訴訟実務のバイタルポイント No15・完 控訴審』/『ジュリスト1529号』2019年3月p52

結論が変わりうるなら続行・変わらないなら終結して和解で見方を述べる

主張・立証によって結論が変わる可能性があるというような場合には、私の部では、できるだけその点について主張・立証を促し、弁論を続行するようにしています。
ただ、逆に言うと、仮に主張・立証がなされても、結論が変わらないであろうと見込まれるような事件もあるものですから、そういう場合には弁論は終結しますが、和解勧告の中で裁判所の見解を申し上げて、その中で、場合によっては記録に表れていないけれども、こういう事情があるのだという話が出てくる場合もあります。
その場合、改めて弁論を再開して、その点の審理をやるということもあります。

※『裁判官に聴く 訴訟実務のバイタルポイント No15・完 控訴審』/『ジュリスト1529号』2019年3月p52

(3)結審の説明が足りない→「これまでの審理で判断できます」以上は判決理由の先出し

3つ目は、結審することについて十分な説明がされないことに不満の原因があるのではないか、というものです。中西裁判官は、第1回期日で判断ができるのであれば特に続行する理由はないと考えるので終結している、と答えています。

そのうえで、説明責任についてはこう述べられています。当事者が更に主張をしたい、証人尋問もしたいというのに裁判所が「必要がないので結審します」と言うとき、「なぜ必要がないか説明せよ」と言われても、「これまでの審理で判断できます」ということ以上に説明するのは難しい。それ以上に詳しく説明せよと言われると、判決理由をあらかじめ言うようなことになってしまう、というものです。

ここには、裁判所が1回で終わらせようとしているわけではないという説明も添えられています。どんな事件であっても1回で終わらせようとか、必要があっても審理の続行をしないという姿勢は絶対にない、結論が出せない場合は審理を続ける、と述べられています。交通事故の事件で、1審の尋問が極めて短時間で記録を読んでも事故態様の心証が全くつかめなかったため、当事者双方がこれ以上主張・立証はないと言っているのに職権で本人尋問を行う決定をした、という実例も挙げられています。

1回で終わらせる姿勢は絶対にない・職権で本人尋問をした実例

どんな事件であっても、1回で終わらせようとか、必要があっても審理の続行をしないとか、そういう姿勢は絶対ありません。
そこは間違いがないのです。
結論が出せない場合は、審理を続けます。
先日、交通事故の事件で、1審で行われた尋問が極めて短時間で、重要な点を尋問していないため、記録を読んでも事故態様の心証が全くつかめないというものがありました。
それで、第1回期日に、当事者双方がこれ以上主張・立証はないと言っているのに、職権で控訴人と被控訴人の本人尋問を次回に行うという決定をしました。
そのようなこともあります。

※『裁判官に聴く 訴訟実務のバイタルポイント No15・完 控訴審』/『ジュリスト1529号』2019年3月p54、55

「これまでの審理で判断できます」以上の説明は判決理由の先出しになる

それから説明責任ということでは、当事者が更に主張をしたい、証人尋問もしたいというのに、裁判所が「必要がないので結審します」と言うとき、「なぜ必要がないか説明せよ」と言われても、「これまでの審理で判断できます」ということ以上に説明するのは難しいと思います。
それ以上に詳しく説明せよと言われると、判決理由をあらかじめ言うようなことになってしまいます。

※『裁判官に聴く 訴訟実務のバイタルポイント No15・完 控訴審』/『ジュリスト1529号』2019年3月p55

(4)1回くらい続行してもよいのでは→代理人の側も1回結審を予想して出頭

4つ目は、依頼者の意向を酌んだうえで1審判決に対する不満を述べているのだから、当事者の納得を考えれば1回くらい続行してもいいのではないか、という意見です。

中西裁判官の答えは、最近の控訴審の状況を見ると代理人の側も1回結審であろうという予想の下に出頭している方が多いように思う、というものです。第1回期日では当事者双方に訴訟の進行について意見を聞きますが、予め人証の申請があったり控訴理由書に主張を続けるとの予告があるような場合を除けば、これ以上は主張・立証はないという意見が大部分であり、続行を求める代理人は少ないという印象だとされています。

あわせて、大部分の事件で和解勧告をするので和解の席で1審判決に対する不満を述べる機会はまだあるとも言える、ただし終結しておいて和解期日で1審判決の問題点を話したり心証開示をしたりすることについて批判があることは承知している、と述べられています。

代理人の側も1回結審を予想して出頭・続行を求める代理人は少ない

最近の控訴審の状況を見ると、代理人の側も、1回結審であろうという予想の下に出頭されている方が多いように思います。
第1回期日では、当事者双方に訴訟の進行について意見を聞きますが、予め人証の申請があったり、控訴理由書に主張を続けるとの予告があるような場合を除けば、これ以上は主張・立証はないという意見が大部分であり、続行を求める代理人は少ないという印象です。
裁判所が1回結審をするから、そのような対応になっているのかもしれませんが、多くの事件では、第1回期日までに必要な主張・立証が行われているのではないでしょうか。
先ほどから言っているように、大部分の事件で和解勧告をするので、和解の席で、1審判決に対する不満を述べる機会はまだあるとも言えます。
終結しておいて、和解期日で、1審判決の問題点を話したり、心証開示をしたりすることについては、批判もあることは承知していますが。

※『裁判官に聴く 訴訟実務のバイタルポイント No15・完 控訴審』/『ジュリスト1529号』2019年3月p53

7 控訴審の事後審化=控訴理由書の指摘に審判の対象を絞る訴訟運営

最近よく言われる「控訴審の事後審化」が何を指すのかも、この座談で説明されています。民事控訴審は続審制を採用していますが、大段裁判官によれば、事後審化とは請求の当否を最終的な審判の対象としつつも、第一次的には1審判決について控訴人が不服とする控訴理由書に記載された事実認定の誤りや法令適用の誤りに審判の対象を絞って、これに審理を集中させるような訴訟運営をいいます。

ただし程度の差があるとされています。裁判体によって、原審での審理状況や原判決の完成度によって差異があり、1審の争点整理あるいは認定判断等に問題がある場合には、控訴理由書の指摘事項に限らず、請求の当否を判断するのに必要な事項について審理を行っているのが実情とされています。

事後審化=控訴理由書の指摘に審判の対象を絞る運営・ただし程度に差がある

民事控訴審は続審制が採用されていますが、控訴審の事後審化とは、請求の当否を最終的な審判の対象としつつも、第一次的には、1審判決について控訴人が不服とする控訴理由書に記載された事実認定の誤りや法令適用の誤りに審判の対象を絞って、これに審理を集中させるような訴訟運営を言います。
全体として控訴審の審理の運営については、今、述べたような傾向にあると考えられますが、裁判体によって、原審での審理状況、原判決の完成度、そういったものによってその程度の差異があると思われます。
1審の争点整理あるいは認定判断等に問題がある場合には、控訴理由書の指摘事項に限らず、控訴審においても、請求の当否を判断するのに必要な事項について審理を行っているのが実情かと思います。

※『裁判官に聴く 訴訟実務のバイタルポイント No15・完 控訴審』/『ジュリスト1529号』2019年3月p53

8 裁判官が原審記録を読む順序=原判決→控訴理由書→記録

裁判官が記録をどう読むのかも述べられています。大段裁判官は、基本はまず原判決を読んでどういう事件なのか・どのような問題点があるのかを原判決から読み取り、そのうえで控訴理由書を読んで指摘されている問題点を念頭に置いて記録を読み込んでいく作業になる、としています。中西裁判官は、少なくとも主任裁判官は控訴理由書を読み、原審の記録は全て読むと思う、と述べています。

控訴状あるいは控訴理由書を見て原判決が何となくおかしいという判断がされることもあるとされています。

原判決から問題点を読み取り、控訴理由書を念頭に記録を読み込む

基本は、まず原判決を読みまして、どういう事件なのか、あるいは、どのような問題点があるのかについて、原判決から読み取って、その上で控訴理由書を読んで指摘されている問題点を念頭に置いて、記録を読み込んでいくという作業になります。
中西
少なくとも主任裁判官は控訴理由書を読み、原審の記録は全て読むと思います。

※『裁判官に聴く 訴訟実務のバイタルポイント No15・完 控訴審』/『ジュリスト1529号』2019年3月p54

9 口頭弁論結果の陳述の文言=原判決の事実摘示への疑問が表に出る所

もう1つ、期日の場で読み取れることがあります。口頭弁論結果の陳述の文言です。

大部分の事件では、裁判長が「原判決事実摘示のとおり原審口頭弁論の結果を陳述」と言い、両当事者が「陳述します」という形式的なことが行われています。ところが「原審記録に基づいて原審の口頭弁論の結果陳述」あるいは「原審の口頭弁論の結果陳述」とされることがあります。

大段裁判官によれば、この言い方になるのは原判決に主張の記載がないときや、主張の記載が必ずしも的確にされていないときです。原判決の事実摘示などに疑問があるようなときにそれを引用することを差し控えたい、という趣旨だと確認されています。

「原審記録に基づいて」となるのは原判決に主張の記載がない・的確でないとき

大部分の事件が、「原判決事実摘示のとおり原審口頭弁論の結果を陳述」ということを裁判長が言って、両当事者が「陳述します」という形式的なことが行われていると思います。
門口
質問は、おそらく、「原判決の事実摘示記載のとおり原審の口頭弁論の結果陳述」と「原審の口頭弁論の結果陳述」とされた場合では、判決の見直しの可能性が違うという趣旨ではないかと推察されますが、いかがですか。
大段
ええ、おそらくは、「原審記録に基づいて原審の口頭弁論の結果陳述」あるいは「原審の口頭弁論の結果陳述」というときは、原判決に主張の記載がないときがあり、あるいは、主張の記載が必ずしも的確にされていないときに、「原審記録に基づいて原審の口頭弁論の結果陳述」、あるいは「原審の口頭弁論の結果陳述」ということがあります。

※『裁判官に聴く 訴訟実務のバイタルポイント No15・完 控訴審』/『ジュリスト1529号』2019年3月p54

10 控訴状に不服の理由を書くのは任意=50日の期限にも制裁はない(参考)

ここまで控訴理由書が審理の出発点になることを見てきましたが、制度の側はその提出を強制していません。不服の範囲と理由は控訴状の任意的記載事項で、民事訴訟規則182条の50日は制裁のない訓示規定だとされています。

控訴状の記載事項と控訴理由書の提出期限|不服の理由は任意・50日は訓示規定

11 おわりに

本記事では、控訴審の第1回口頭弁論期日について、1回で終結するのが全事件の70%から80%であること、続行になる3つの型、振分けの基準が「第1回期日を行えば請求の当否が判断できるか」の1点であること、そして第1回結審への4つの不満に裁判所の側がどう答えているかを説明しました。

通して読むと、どの答えも控訴理由書に戻ってきます。更に主張したいことがあったのなら控訴理由書で主張できたはずであり、裁判官は原判決を読んだあと控訴理由書を読んで記録に入り、事後審化とは控訴理由書の指摘に審判の対象を絞る運営のことでした。

控訴理由書に何を書くと効くのかは、別の記事で説明しています。

控訴理由書の書き方|裁判官が原判決に感じた疑問を突く

裁判官が1つの事件にかけられる時間そのものも、別の記事で説明しています。

裁判官が1つの事件にかけられる時間|新受件数と、記録を読み切れない実情

本記事は一般的な説明です。個別の事案にそのまま当てはまるとは限らず、一見似ている事案でも、事情が異なれば結論は異なります。個別的事情により、法的判断や主張として活かす方法、最適な対応方法は違ってきます。本記事でご説明したものと同様の問題に直面されている方は、みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。

本記事の引用は、書籍・判例などの原文から範囲を選んで載せたものです。改行の位置は読みやすさのために当方で整えており、原文の改行と同じとは限りません。また、記号や外字の扱いにより、文字の一部が原文と異なって表示されることがあります。

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事実たる慣習(民法92条)と慣習法(法の適用に関する通則法3条)の違い
控訴状の記載事項と控訴理由書の提出期限|不服の理由は任意・50日は訓示規定

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