許可抗告が許可される場合|民事訴訟法337条

1 許可抗告が許可される場合|民事訴訟法337条

高等裁判所の決定や命令に不服があるとき、最高裁判所へ進む道は限られています。憲法違反を理由とする特別抗告のほかには、高等裁判所が許可した場合にかぎって抗告できる仕組みがあります。許可抗告です(民事訴訟法337条)。

許可するかどうかを判断するのは、最高裁判所ではなく高等裁判所です。何を基準に許可されるのかについて、条文は「法令の解釈に関する重要な事項を含む」と書くだけで、それ以上のことを書いていません。

本記事では、許可抗告が許可されるのはどういう場合かを、逐条解説と実際の決定にそくして説明します。

家事審判の決定に対する特別抗告と許可抗告については、別の記事で説明しています。

家事審判に関する特別抗告と許可抗告(第3審)

2 基準は上告受理と同一=新規立法の解釈が取り上げられた例は3件

本記事の結論を先にまとめます。いずれの行も、後述の各節で出典を挙げて説明します。

許可抗告が許可される場合

あ 制度(なぜ設けられたか)

旧法では、高等裁判所の決定・命令に対して最高裁判所へ抗告する道は憲法違反を理由とする特別抗告だけだった。民事執行法・民事保全法の制定等で決定により判断される事項に重要なものが増え、高等裁判所の判断が区々に分かれる状況が生じたため、現行法で新設された。

い 許可の基準(何で決まるか)

(ア)許可の基準は、当該事件が「法令の解釈に関する重要な事項」を含むか否かであり、上告受理申立ての受理・不受理の基準と同一である。(イ)違うのは判断の主体=許可・不許可を判断するのは最高裁判所ではなく高等裁判所である。最高裁判所が判断することにすると全体としての負担が旧法下の上訴制度より過重になり、改正の趣旨が没却されるおそれがあるためである。

う 実例(施行後どのくらいで取り上げられたか)

(ア)施行からそれほど経っていない規定について最高裁判所が判断を示した例が3件ある=会社法109条1項・247条(公布から2年0か月)/ハーグ条約実施法28条1項・117条1項(施行から3年8か月)/民法1050条(施行から4年3か月)。(イ)ただし許可された事件の中には、単なる事実認定に関する事項や専ら受訴裁判所の裁量に属する事項について許可したものも少なくなく、制度の趣旨に沿わない運用も多いと指摘されている。判例集に登載された許可抗告の決定は1割から2割程度にとどまる。

3 許可抗告が設けられた理由=決定事項の重要化と高裁の判断の割れ

旧法では、高等裁判所の決定や命令に対して最高裁判所へ抗告する道は、憲法違反を理由とする特別抗告だけでした。ところが民事執行法や民事保全法が作られ、決定で判断される事項の中に重要なものが増えました。その一方で、重要な法律問題についての高等裁判所の判断が分かれる状況が生じました。

許可抗告は、この状況に対応して現行法で新設されたものです。最高裁判所の負担が過重にならないように配りながら法令解釈の統一を図る、という形が選ばれています。

運用を担う側は、新設の理由を次のように述べています。

許可抗告が新設された理由→決定事項の重要化と高裁の判断の割れ

旧法下では、高裁の決定又は命令に対しては、憲法違反を理由とする特別抗告を除いて、最高裁に対して抗告することはできないものとされていたが、民事執行法や民事保全法の制定等に伴い、決定により判断される事項の中に重要なものが増えている一方で、重要な法律問題についての高裁の判断が区々に分かれるという状況が生じており、最高裁の負担が過重にならないように配慮しながら、法令解釈の統一を図る必要が生じたために現行法で新設されたのが許可抗告の制度(337条)である(一問一答374頁)

※福田剛久ほか稿『最高裁判所に対する民事上訴制度の運用』/『判例タイムズ1250号』2007年11月p9

4 許可の基準は上告受理と同一=判断の主体だけが高等裁判所

許可の基準は、その事件が「法令の解釈に関する重要な事項」を含むかどうかです。これは上告受理の申立ての受理・不受理の基準と同一です。

違うのは判断の主体です。許可するかどうかを決めるのは最高裁判所ではなく高等裁判所で、それは、最高裁判所が判断することにすると全体としての負担が旧法下の上訴制度より過重になり、改正の趣旨が没却されるおそれがあるためです。

許可の基準→上告受理と同一・判断するのは高等裁判所

許可の基準は、当該事件が「法令の解釈に関する重要な事項」を含むか否かであり、上告受理申立ての受理、不受理の基準と同一であるが、その判断を上告受理制度と同様に最高裁が行うことにすると、上告受理制度の導入により最高裁の負担が一定程度軽減されたとしても、全体としての負担は旧法下の最高裁に対する上訴制度よりも過重となり、最高裁が憲法判断及び法令の解釈の統一という本来の責務を十分に果たすことが困難になり、民訴法改正の趣旨が没却されるおそれがあるため、高裁が許可、不許可の判断をすることとされたものである(一問一答375頁)

※福田剛久ほか稿『最高裁判所に対する民事上訴制度の運用』/『判例タイムズ1250号』2007年11月p9

5 施行から4年3か月以内の新規規定について最高裁が判断を示した例が3件

同じ基準のもとで、施行からそれほど経っていない規定について最高裁判所が判断を示した例があります。以下に3件を順に見ます。会社法、国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約の実施に関する法律(ハーグ条約実施法)、そして相続法の改正で設けられた特別の寄与の制度です。

(1)会社法109条1項・247条→公布から2年0か月で最高裁の判断

会社法は平成17年7月26日に公布され、その附則1項は、公布の日から起算して1年6月を超えない範囲内で政令が定める日から施行すると定めていました。最高裁判所が同法109条1項と247条の解釈を示したのは、公布から2年0か月後です。施行からは、長くとも2年0か月ということになります。

争われたのは、買収に対抗して行われる新株予約権の無償割当てが株主平等の原則の趣旨に反するかでした。原々審からこの決定までは約2か月で、同じ論点についての他の下級審の裁判例は積まれていません。

会社法109条1項の株主平等の原則の趣旨→新株予約権無償割当てにも及ぶ

しかし、株主は、株主としての資格に基づいて新株予約権の割当てを受けるところ、法278条2項は、株主に割り当てる新株予約権の内容及び数又はその算定方法についての定めは、株主の有する株式の数に応じて新株予約権を割り当てることを内容とするものでなければならないと規定するなど、株主に割り当てる新株予約権の内容が同一であることを前提としているものと解されるのであって、法109条1項に定める株主平等の原則の趣旨は、新株予約権無償割当ての場合についても及ぶというべきである

※最高裁判所 2007-08-07 民集 61巻5号2215頁/裁時 1441号1頁/裁判所ウェブサイト/判タ 1252号125頁/判時 1983号56頁/金法 1820号47頁/金商 1279号19頁/金商 1273号2頁/旬刊商事法務 1809号16頁/資料版商事法務 281号107頁/商事法務別冊 311号59頁

(2)ハーグ条約実施法28条1項・117条1項→施行から3年8か月で最高裁の判断

ハーグ条約実施法は、平成26年4月1日に施行されました。最高裁判所が同法28条1項と117条1項の適用について判断を示したのは、施行から3年8か月後です。

争われたのは、確定した子の返還命令を、その後の事情の変更によって変更できるかでした。

ハーグ条約実施法28条1項・117条1項の適用→確定した返還命令の変更

そうすると、米国に返還されることを一貫して拒絶している長男及び二男について、実施法28条1項5号の返還拒否事由が認められるにもかかわらず米国に返還することは、もはや子の利益に資するものとは認められないから、同項ただし書の規定により返還を命ずることはできない。また、長女及び三男については、両名のみを米国に返還すると密接な関係にある兄弟姉妹である本件子らを日本と米国とに分離する結果を生ずることなど本件に現れた一切の事情を考慮すれば、米国に返還することによって子を耐え難い状況に置くこととなる重大な危険があるというべきであるから、同項4号の返還拒否事由があると認めるのが相当である。
したがって、変更前決定は、その確定後の事情の変更によってこれを維持することが不当となるに至ったと認めるべきであるから、実施法117条1項の規定によりこれを変更し、本件申立てを却下するのが相当である

※最高裁判所 2017-12-21 裁判集民 257号63頁/裁時 1691号10頁/裁判所ウェブサイト/判タ 1449号94頁/判時 2372号16頁/家庭の法と裁判 15号84頁

(3)民法1050条(特別の寄与)→施行から4年3か月で最高裁の判断

相続法の改正で設けられた特別の寄与の制度(民法1050条)は、令和元年7月1日に施行されました。最高裁判所が同条5項の負担割合について判断を示したのは、施行から4年3か月後です。

争われたのは、遺言で相続分がないものと指定された相続人が、遺留分侵害額請求権を行使した場合に特別寄与料を負担するかでした。

民法1050条5項の負担割合→遺留分侵害額請求権の行使で修正されない

民法1050条5項は、相続人が数人ある場合における各相続人の特別寄与料の負担割合について、相続人間の公平に配慮しつつ、特別寄与料をめぐる紛争の複雑化、長期化を防止する観点から、相続人の構成、遺言の有無及びその内容により定まる明確な基準である法定相続分等によることとしたものと解される。このような同項の趣旨に照らせば、遺留分侵害額請求権の行使という同項が規定しない事情によって、上記負担割合が法定相続分等から修正されるものではないというべきである。
そうすると、遺言により相続分がないものと指定された相続人は、遺留分侵害額請求権を行使したとしても、特別寄与料を負担しないと解するのが相当である

※最高裁判所 2023-10-26 民集 77巻7号1911頁/裁時 1826号63頁/裁判所ウェブサイト/判タ 1523号106頁/判時 2607号69頁/金法 2253号60頁/家庭の法と裁判 52号75頁

6 許可された事件には趣旨に沿わない運用も多い=判例集登載は1〜2割

もっとも、許可されたこと自体を重く見ることはできません。許可された事件の中には、単なる事実認定に関する事項や、専ら受訴裁判所の裁量に属すると考えられる事項について許可したものも少なくないと指摘されています。

許可抗告の決定のうち最高裁判所の判例集に登載されたものは、1割から2割程度にとどまります。この数字が、上の指摘の根拠として挙げられています。

許可された事件→制度の趣旨に沿わない運用も多い

もっとも、別表6のとおり、許可抗告の決定のうち最高裁の判例集に登載されたものの割合が、1割から2割程度にとどまっていることからもうかがわれるとおり、許可された事件の中には、単なる事実認定に関する事項又は専ら受訴裁判所の裁量に属すると考えられる事項について許可をしたものも少なくなく、制度の趣旨に沿わない運用も多く見受けられる

※福田剛久ほか稿『最高裁判所に対する民事上訴制度の運用』/『判例タイムズ1250号』2007年11月p10

7 上告受理制度が設けられた理由と現在の運用(概要)

許可抗告と同じ「法令の解釈に関する重要な事項」を基準とする上告受理の側について、なぜ設けられたのか、現在どのように運用されているのかは、別の記事で説明しています。

上告受理制度が平成8年改正で設けられた理由と現在の運用

8 おわりに

許可抗告が許可されるのは、その事件が「法令の解釈に関する重要な事項」を含むと高等裁判所が認めた場合です。基準は上告受理の申立てと同一で、違うのは判断の主体だけです。

同じ基準のもとで、施行から数年のうちに新しい規定の解釈が取り上げられた例が3件あります。ただし許可された事件には制度の趣旨に沿わない運用も多いと指摘されており、許可されたこと自体を重く見ることはできません。

本記事は一般的な説明です。個別の事案にそのまま当てはまるとは限らず、一見似ている事案でも、事情が異なれば結論は異なります。個別的事情により、法的判断や主張として活かす方法、最適な対応方法は違ってきます。本記事でご説明したものと同様の問題に直面されている方は、みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。

本記事の引用は、書籍・判例などの原文から範囲を選んで載せたものです。改行の位置は読みやすさのために当方で整えており、原文の改行と同じとは限りません。また、記号や外字の扱いにより、文字の一部が原文と異なって表示されることがあります。

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