1 株主総会・取締役会による取締役の利益相反取引の承認の手続
2 競業取引・利益相反取引の承認機関(基本)
3 承認決議のための情報開示
4 承認の対象とする利益相反取引の特定
5 株主総会による承認決議の要件
6 取締役会による承認決議の要件
7 特別利害関係人の範囲

1 株主総会・取締役会による取締役の利益相反取引の承認の手続

取締役が,競業取引や会社との利益相反取引を行うには原則として会社の承認が必要です。
詳しくはこちら|取締役の競業取引・利益相反取引の制限(会社の承認・全体像)
会社の承認の内容は,株主総会または取締役会の決議です。
本記事では,株主総会や取締役会による競業取引・利益相反取引の承認の手続について説明します。

2 競業取引・利益相反取引の承認機関(基本)

会社が承認する手続は,大きく2つに分かれます。取締役会非設置会社では株主総会の普通決議,取締役会設置会社では取締役会の決議です。

<競業取引・利益相反取引の承認機関(基本)>

あ 承認の必要性(前提)

競業取引・利益相反取引を行うためには
会社の承認(いorう)を受けなければならない

い 承認機関
会社の種類 承認機関 会社法
取締役会設置会社 株主総会 356条1項
取締役会設置会社 取締役会 365条1項

3 承認決議のための情報開示

株主総会や取締役会が競業取引・利益相反取引を承認する前提として,これらの行為を予定している取締役は取引の内容について開示して説明する必要があります。

<承認決議のための情報開示>

承認に際しては,取引につき重要な事実の開示・相当の説明がなされなければならない
※会社法356条1項,365条1項
※江頭憲治郎著『株式会社法 第7版』有斐閣2017年p447

4 承認の対象とする利益相反取引の特定

利益相反取引を会社が承認する場合には,通常,個々の取引を対象として判断して承認(議決)します。
ただし,複数の利益相反取引をまとめて承認する,ということも可能です。

<承認の対象とする利益相反取引の特定>

あ 個別的な取引の承認

取締役の利益相反取引の承認は,個々の取引につきなされるのが原則である

い 包括的承認

取引の種類・数量・金額・期間などを特定して包括的に承認を与えてもよい
例=関連会社間の継続的取引
※江頭憲治郎著『株式会社法 第7版』有斐閣2017年p446

う 事後承認

事後承認も可能である
※江頭憲治郎著『株式会社法 第7版』有斐閣2017年p447

5 株主総会による承認決議の要件

競業取引・利益相反取引を承認する機関が株主総会である場合に決議する方法(種類)は普通決議です。出席した株主の議決権の過半数の賛成で可決となります。
競業取引や利益相反取引を行う予定の取締役が株主である場合には,決議に参加できます。個別的に著しく不当な決議となった場合には,訴訟により決議取消となる可能性があります。

<株主総会による承認決議の要件>

あ 承認決議の要件

株主総会の承認は普通決議による

い 取引の当事者の参加

利益相反取引の当事者たる取締役が株主であっても議決権を行使することができる
※奥島孝康ほか編『新基本法コンメンタール 会社法2 第2版』日本評論社2016年p166

う 著しく不当な決議による取消

特別利害関係人(後記※1)の議決権行使によって著しく不当な決議がされた場合
→株主や取締役は決議取消請求訴訟を提起できる
※会社法831条1項3号
※江頭憲治郎著『株式会社法 第7版』有斐閣2017年p446,447

6 取締役会による承認決議の要件

競業取引・利益相反取引を承認する機関が取締役会である場合には,取締役の過半数の賛成で可決となります。
競業取引や利益相反取引を行う予定の取締役は利害関係人となるので,決議に参加できません。

<取締役会による承認決議の要件>

あ 承認決議の要件

原則として取締役の過半数の賛成による
※会社法369条1項

い 取引の当事者の参加

利害関係人(後記※1)は議決に参加できない
※会社法369条2項

7 特別利害関係人の範囲

取締役会による承認では特別利害関係人は決議に参加できません。株主総会による承認では参加できますが,個別的に特別利害関係人の影響により不当な結果となった場合には取消となる可能性があります(前記)。
ここでの特別利害関係人とは,まず,競業取引や利益相反取引を行う予定の取締役です。さらに,利益相反取引の相手方(やその代表者)も特別利害関係人に該当するという考えが一般的です。

<特別利害関係人の範囲(※1)>

あ 取引の当事者である取締役

競業取引・利益相反取引の当事者たる取締役は特別利害関係人となる

い 相手方会社の代表取締役

利益相反取引の相手方(会社の代表取締役である者)も特別利害関係人に該当する(通説)
※江頭憲治郎著『株式会社法 第7版』有斐閣2017年p447

本記事では,取締役の競業取引や利益相反取引についての会社の承認の手続を説明しました。
実際には,個別的な事情によって承認の要否や決定の方法が違ってくることがあります。
実際に取締役による競業取引や利益相反取引に関する問題に直面されている方は,みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。