【犯罪収益移転防止法による不動産登記申請を行う司法書士の確認の内容】
1 犯収法による不動産登記申請を行う司法書士の確認の内容
不動産申請登記を代理人として行う司法書士は、不正や虚偽の登記申請をしてしまわないように、本人確認をしっかり行うことが求められます。
本人確認義務にはいくつかのものがありますが、その中に、犯罪収益移転防止法(犯収法)によって義務づけられているものがあります。
本記事では、犯収法による司法書士の本人確認義務について説明します。
2 登記申請を行う司法書士への犯収法の適用
まず、犯収法の本人確認義務が適用される要件にはいくつかのものがあります。
その中でも主要な要件は特定事業者と特定取引に該当するというところです。
司法書士が宅地や土地の売買契約に関する登記申請を行うことは、これらに該当します。
そこで、犯収法に規定される本人確認義務が適用されるのです。
登記申請を行う司法書士への犯収法の適用
あ 特定事業者
司法書士(法人)は『特定事業者』である
※犯罪収益移転防止法2条2項43号
い 特定取引
『宅地又は建物の売買に関する行為又は手続』
→原則として『特定取引』に該当する
※犯罪収益移転防止法施行令9条
なお、本人確認義務が適用される細かい要件については別の記事で説明しています。
詳しくはこちら|犯罪収益移転防止法による仮想通貨交換業者の取引時確認(本人確認)
3 犯収法による確認方法とタイミング(概要)
犯収法による本人確認を行う場合に用いる資料(書類)や確認の形式的な方法については、細かく規定されています。
詳しくはこちら|犯収法の本人確認(取引時確認)の時期(『行うに際して』の解釈)
また、確認する時期(タイミング)についても規定されています。
詳しくはこちら|犯罪収益移転防止法の本人確認方法の内容(特定取引に共通)
不動産取引の場合は、決済の前に行うべき、ということになります。
4 司法書士会が制定した確認規程(参考)
以上の説明は、犯収法による本人確認義務でした。これとは別に、各司法書士会が本人確認の形式的な方法(確認規程)を制定しています。各単位会(司法書士会)によって違いますが、実質的にはほぼ共通しています。
基本的に、犯収法の内容と同様となっているものが多いです。
詳しくはこちら|司法書士|依頼者本人確認義務|日司連の公式基準
5 実質的な確認義務との関係(概要)
実際には、司法書士による登記申請が不正なものであり、登記が実行されない(却下となる)とか、虚偽の登記が実行されてしまうという事故が生じています。
この場合には、司法書士の確認や注意に不備があったものとして、司法書士に法的責任が生じることもあります。
この点、司法書士が犯収法の確認義務を履行したからといって責任が否定されるとは限りません。不正や虚偽が見抜けたかどうか、という実質的な判断で責任の有無が決まるのです。
詳しくはこちら|不動産登記申請を行う司法書士の確認義務の枠組み(疑念性判断モデル)
本記事では、犯収法による、不動産登記申請を行う司法書士の本人確認義務について説明しました。
犯収法の義務をクリアしていても、前記のように、司法書士のミスによる法的責任が認められることもあります。
本記事は一般的な説明です。個別の事案にそのまま当てはまるとは限らず、一見似ている事案でも、事情が異なれば結論は異なります。個別的事情により、法的判断や主張として活かす方法、最適な対応方法は違ってきます。本記事でご説明したものと同様の問題に直面されている方は、みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。


