【宇宙・天体の利用に関する国際的ルール(宇宙条約・月協定)】
1 宇宙・天体の利用に関する国際的ルール
宇宙や天体の利用に関して、国際的なルールがあります。主なものは宇宙条約ですが、それ以外にも月協定などがあります。
本記事では、このような国際的ルールについて説明します。
2 宇宙開発の幕開け
当然ですが、人類が宇宙にアクセスできなかった時代には宇宙を利用するルールは作られていませんでした。
人類が宇宙開発を始めるようになった時に宇宙を利用するルールが作られたのです。ルール作りのきっかけとなった宇宙開発の始まりは、1950年代の米ソの宇宙開発競争にさかのぼります。
宇宙開発の幕開け
あ 人工衛星の打上
ア 1957年ソ連がスプートニク1号の打上に成功した
イ 1958年米国がエクスプローラー1号の打上に成功した
い 有人宇宙飛行(アポロ計画)
1969年、米国NASAが宇宙飛行士の月面着陸に成功した
3 宇宙の利用に関する主な国際的ルール
前記の、宇宙開発の幕開けの時期に、急いで宇宙を利用する国際的なルールが作られることになりました。アポロ計画により月面着陸が成功した1969年の直前、1967年に宇宙条約が成立しました。
その後、月協定が成立しました。
これらが国際的な宇宙の利用ルールの主なものです。
宇宙の利用に関する主な国際的ルール
あ 宇宙条約の成立
ア 採択1966年に宇宙条約が採択された
イ 署名1967年に宇宙条約の署名が行われた
い 月協定
1979年に月協定が採択された
4 宇宙条約の主な内容
宇宙条約の主な内容をまとめます。
宇宙条約の主な内容
あ 探査・利用の自由
月その他の天体を含む宇宙空間の探査及び利用は
すべての国の利益のために全人類に認められる活動分野である
天体・宇宙空間は、無差別・平等に、かつ、国際法に従って、自由に探査・利用することができる
※宇宙条約1条
い 領有の否定
天体・宇宙空間は国家による取得(領有)の対象にならない
※宇宙条約2条
※月協定(1971年)11条2項(同趣旨・参考)
う 探査・利用の方針
探査、利用は国連憲章を含む国際法に従って、国際の平和と安全の維持、国際間の協力と理解の促進のために行わなければならない
※宇宙条約3条
え 核兵器・大量破壊兵器の使用禁止
核兵器その他の大量破壊兵器について『ア〜ウ』の行為を禁止する
ア 地球を回る軌道に乗せることイ 天体上に設置することウ 宇宙空間に設置すること※宇宙条約4条
お 軍事基地設置・軍事実験・演習の禁止
天体は、平和目的のためにのみ利用する
軍事基地等の設置、あらゆる型の兵器の実験、軍事演習の実施を禁止する
※宇宙条約4条
か 基地・施設の解放
天体上の基地、施設などは、相互主義にもとづき、この条約の他の当事国の代表に解放される
※宇宙条約12条
き 国家への責任集中原則(概要)
政府機関・非政府団体のいずれが行った宇宙活動についても
国家が国際的責任を負う
※宇宙条約6条、7条
詳しくはこちら|宇宙活動による損害の賠償責任(国家への責任集中の原則・外交ルート)
なお、宇宙の軍事利用は制限されていますが、通常兵器(核兵器・大量破壊兵器以外)が宇宙空間を通過することは禁止されていません。
5 月協定の主な内容
月協定も、宇宙条約と重複している内容が多いです。
宇宙条約にはない独特のものとして、月の資源を人類の共同財産として、資源開発の際には国際制度を設立するということを明記した規定があります。
月協定の主な内容
あ 宇宙条約との類似性
宇宙条約と同じ内容が多い
い 人類の共同財産
月及びその天然資源は人類の共同財産である
※月協定11条1項
う 資源開発のための国際制度
月について、資源開発のための国際制度は、探査が可能になる時に設立する
※月協定11条5項
6 天体・宇宙空間の領有の禁止
宇宙条約において、月を含む天体・宇宙空間については科学的調査は自由主権(所有)の対象ではないということがルール化されました(宇宙条約1条、2条)。
結局、衛星(月やイオ)、(地球以外の)惑星(水星、金星、火星など)は所有の対象ではない、ということになります。特定の国の領土になるということはないのです。
民間(個人や法人)の所有、についても、主権(国家の統治権)の範囲内、という当然の前提があります。
国が所有できない以上、民間が所有することもできません。
7 ジョークとしての月の土地の権利証の売買
なお、海外では月の土地(の権利証)を販売する、という事例があるようです。
これは、いわば夢を売るという趣旨のものでは有効ですが、法的な意味の所有、つまり排他的に支配できるという効果は生じないものです。
ここまでくると、各天体自体が動いているので土地は不動産ではないのではないか、というネーミングへの疑問まで生じてしまいます。(その意味では地球上の土地を不動産と呼ぶのも天動説を元にした発想といえますが)
8 宇宙空間と各国の領空の違いと境界
ところで、各国の領空は、当然ですが、国家の主権(統治権)の範囲内です。国家が独占していて、他の国が侵入することは違法となります。
このように、宇宙空間と各国の領空では扱いが大きく異なります。そこで、宇宙空間と領空の境界が問題となります。境界となる高さの明確な基準はありません。少なくとも人工衛星が位置する高さは宇宙空間にあたります。
詳しくはこちら|領空(各国の主権)と宇宙空間の国際法上の扱いと境界の基準
本記事では、天体や宇宙空間を利用する国際的ルールとして宇宙条約や月協定について説明しました。
宇宙開発が進み、人類の知的探求やその他の役に立つことにつながると良いと思います。
本記事は一般的な説明です。個別の事案にそのまま当てはまるとは限らず、一見似ている事案でも、事情が異なれば結論は異なります。個別的事情により、法的判断や主張として活かす方法、最適な対応方法は違ってきます。本記事でご説明したものと同様の問題に直面されている方は、みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。


