1 いろいろな決済手段による金銭債務の消滅時期
2 銀行振込による決済における金銭債務消滅時期
3 手形・小切手による決済における金銭債務消滅時期
4 プリペイドカードによる決済における金銭債務消滅時期
5 自家発行型プリペイドカードの法的構成
6 第三者発行型プリペイドカードの法的構成
7 クレジットカード決済の法的構成の種類
8 クレジットカード決済における金銭債務消滅時期

1 いろいろな決済手段による金銭債務の消滅時期

金銭債務の弁済(支払)の手段にはいろいろなもの(決済手段)があります。
決済手段の種類によって,金銭債務が消滅するタイミングは異なります。
債務の消滅は当然,決済(弁済・支払)の重要な最終目的です。そこで決済の支払完了性(ファイナリティ)の1つとされています。
詳しくはこちら|決済手段の支払完了性(ファイナリティ)の4つの意味
本記事では,決済手段の種類ごとの金銭債務の消滅時期について説明します。

2 銀行振込による決済における金銭債務消滅時期

決済手段としての銀行振込はとても便利で,実際に利用されることが多いです。
受取人の預金口座への着金の時に債務が消滅するという見解が一般的です。

<銀行振込による決済における金銭債務消滅時期>

あ 判例・通説・実務の見解

被仕向銀行が振込通知を受けて
受信後受取人の預金口座に入金記帳した時に(着金時)
受取人の預金が成立するとともに原因債務が消滅する

い 決済のファイナリティとの関係(概要)

銀行の倒産リスクがないことが前提となっている(リスクを無視・排除している)
詳しくはこちら|決済手段の支払完了性(ファイナリティ)の4つの意味
※古市峰子稿『現金,金銭に関する法的一考察』/『金融研究14巻4号』日本銀行金融研究所1995年12月p114

3 手形・小切手による決済における金銭債務消滅時期

手形や小切手を決済に用いることもあります。その方法(法的な扱い)には2種類があります。
弁済に代えて手形や小切手を交付する場合は,文字どおり現金の代わりなので,交付の時点で債務が消滅します。
弁済のために手形や小切手を交付する場合は,あくまでも現金を渡す手段に過ぎません。つまり,受領者(債権者)が実際に現金を手にするのと同じ状態になった時点で債務が消滅します。

<手形・小切手による決済における金銭債務消滅時期>

あ 弁済に代えて交付

弁済に代えて手形or小切手を交付した場合
→手形・小切手の交付時に債務が消滅する
※民法482条(代物弁済)

い 弁済のために交付

弁済のために手形or小切手を交付した場合
→手形or小切手を取立てられて初めて金銭債務が消滅する
=不渡りにならないことが確認された時点
=不渡返還期限の経過後
=債権者が資金を利用可能となる(資金解放される)時点
※古市峰子稿『現金,金銭に関する法的一考察』/『金融研究14巻4号』日本銀行金融研究所1995年12月p115

4 プリペイドカードによる決済における金銭債務消滅時期

現在ではプリペイドカードが普及していて,多くの小さな決済(支払)で利用されています。
この点,プリペイドカードの法的な仕組みは,大きく2種類に分けられます。ただし,いずれの方式であっても,カード利用の時点で債務が消滅すると考えられています。
2種類の方式については次に説明します。

<プリペイドカードによる決済における金銭債務消滅時期>

あ 発行方式(種類)

ア 自家発行型(後記※1)
イ 第三者発行型(後記※2)

い 金銭債務の消滅時期

発行方式の種類(あ)に関わらず
カード利用の時点(カード内の度数の消磁時)に債務が消滅する
※一般的な見解

5 自家発行型プリペイドカードの法的構成

プリペイドカードの法的な仕組みのうち1つは自家発行型です。
発行した事業者が商品やサービスを提供するという方式です。カードの発行(販売)の時点で,将来の代金支払にカードを使うことが約束されていると一般的には考えられています。

<自家発行型プリペイドカードの法的構成(※1)>

あ 一般的な見解

利用者がカードを販売者から購入した時点で,販売者と利用者との間で,現金の代わりにプリペイドカードをもって代金支払債務の履行にあてる旨の合意がなされている

い 別の見解

カード購入時点で,将来販売者から物品・サービスの給付を受ける対価としての代金を前払いしている
=代金支払債務を先履行している
※古市峰子稿『現金,金銭に関する法的一考察』/『金融研究14巻4号』日本銀行金融研究所1995年12月p115

6 第三者発行型プリペイドカードの法的構成

プリペイドカードのもう1つの方式は,カードを発行した事業者以外の事業者が商品やサービスを提供するというものです。
法律的な契約関係は,カード発行者と加盟店(加盟店契約)と利用者と発行会社(委託契約)という2つに分けて考えます。

<第三者発行型プリペイドカードの法的構成(※2)>

あ 加盟店契約

カード発行者と加盟店は『カード利用者が将来加盟店に対して負担する債務をカード発行者が引き受ける』内容の契約(加盟店契約)を締結する
利用者がカードの利用により加盟店に対して負担することになる債務は,加盟店契約に基づき,カード利用時点でカード発行者に免責的に引き受けられる

い 利用者から発行会社への委託

カード利用者はそのような契約の存在するカードを購入することによって,将来加盟店に対して負担する自己の債務の引受を発行会社に委託している

う 債務消滅時点

カード利用者の立場では
カードを使用した時点で販売店or加盟店との間の債務を即時に消滅させることができる
※古市峰子稿『現金,金銭に関する法的一考察』/『金融研究14巻4号』日本銀行金融研究所1995年12月p115,116

7 クレジットカード決済の法的構成の種類

クレジットカードで支払う(決済する)ということも実際に広く普及しています。
債務消滅時期を考えるためには,法律的な仕組み(法的構成)を理解する必要があります。
クレジットカード決済の法的構成には,債権譲渡立替払いの2種類の考え方があります。立替払いの法的構成は,さらにいくつかの解釈に分かれます。

<クレジットカード決済の法的構成の種類>

あ 債権譲渡構成

加盟店が利用者に対して取得した代金支払請求権をカード会社に譲渡する
その対価としてカード会社から加盟店への支払がなされる

い 立替払い構成

ア 基本的内容
利用者の加盟店に対する代金支払債務をカード会社が立替払いする
イ 立替払いの内容
代位弁済・免責的債務引受・重畳的債務引受などの解釈がある
※古市峰子稿『現金,金銭に関する法的一考察』/『金融研究14巻4号』日本銀行金融研究所1995年12月p116

8 クレジットカード決済における金銭債務消滅時期

クレジットカードによる決済の法的仕組み(法的構成)には,前記のようないくつかの考え方があります。
クレジットカードで支払う場合に債務が消滅するタイミングは,どの考え方(法的構成)をとるかによって違ってきます。
結論としては,カード会社が加盟店に一定の金銭を支払った時カードの利用時点のどちらかとなります。

<クレジットカード決済における金銭債務消滅時期>

あ 代位弁済・重畳的債務引受の法的構成

カード会社が加盟店に対して実際に代金相当額を支払った時点で債務が消滅する

い 債権譲渡・免責的債務引受の法的構成

債権譲渡や債務引受の効力発生時期で債務が消滅する
=主にカード会社への売上データの通知時である
=この場合はカードを利用した時点となる
※古市峰子稿『現金,金銭に関する法的一考察』/『金融研究14巻4号』日本銀行金融研究所1995年12月p117

本記事では,いろいろな決済手段について,債務が消滅するタイミングを説明しました。
実際に債務消滅のタイミングが問題となるのは,決済のプロセスの中のどこかが正常に機能しなかったケースや,仮想通貨などの新しい決済手段の法的扱いを考える時などです。
実際に決済方法やこれに関する法的扱いの問題に直面されている方は,みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。