【口頭の提供の基本(条文・口頭の提供が認められる要件と方法)】

1 口頭の提供の基本
2 弁済の提供の条文(民法493条)
3 口頭の提供の要件と口頭の提供の方法
4 債権者のあらかじめの受領拒否(概要)
5 債務履行に関する債権者の協力(概要)
6 口頭の提供のための履行の準備の内容(概要)

1 口頭の提供の基本

民法上,債務の弁済の提供によって,債務不履行の責任を回避することができます(民法492条)。
この弁済の提供の内容は,民法493条に規定されています。その内容とは,現実の提供口頭の提供があります。
詳しくはこちら|弁済の提供の基本(提供の方法(種類)と効果)
本記事では,この2つのうち,口頭の提供の基本的事項を説明します。

2 弁済の提供の条文(民法493条)

まず,弁済の提供の方法について定める民法493条の条文を押さえておきます。

<弁済の提供の条文(民法493条)>

(弁済の提供の方法)
第四九三条 弁済の提供は、債務の本旨に従って現実にしなければならない。ただし、債権者があらかじめその受領を拒み、又は債務の履行について債権者の行為を要するときは、弁済の準備をしたことを通知してその受領の催告をすれば足りる。

3 口頭の提供の要件と口頭の提供の方法

民法493条のただし書(後半)部分が,口頭の提供です。この
原則的な現実の提供でなくて口頭の提供だけで足りる状況(要件)としては2つが規定されています。これのどちらかに該当すると,口頭の提供だけで弁済提供として扱われるのです。

<口頭の提供の要件と口頭の提供の方法>

あ 現実の提供(原則・前提)

原則として現実の提供が必要である

い 口頭の提供の要件

『ア・イ』のいずれかに該当する場合は口頭の提供(う)で足りる
ア 債権者があらかじめ受領を拒んでいるイ 債務の履行について債権者の行為を要する

う 口頭の提供の方法

弁済の準備をしたことを債権者に通知して受領の催告をする
※民法493条

4 債権者のあらかじめの受領拒否(概要)

実際に問題となることが多いものの1つは債権者があらかじめ受領を拒否したといえるかどうかの判定です。
単純に債権者が受領しませんと宣言しているようなケースでは特に問題となりません。
実務では,対立している当事者の間で,対立的な態度受領を拒否しているといえるかどうかで判定が難しいというケースが多いです。
解釈や具体例については別の記事で説明しています。
詳しくはこちら|口頭の提供の要件の『債権者の(あらかじめ)受領拒絶』
なお,債権者の受領を拒否する態度が特に強い場合は,口頭の提供すら不要となることもあります。
詳しくはこちら|債権者の明確な受領拒絶の意思表明による債務不履行責任免除(口頭の提供すら不要)

5 債務履行に関する債権者の協力(概要)

債権者が債務の履行に協力しない場合も,口頭の提供で足りることになります(前記)。
実務では,どのような行為が債権者に求められているのか,債権者の行為によって履行ができないといえるのか,という判定が問題となることが多いです。
判断基準や具体例については別の記事で説明しています。
詳しくはこちら|口頭の提供の要件の『債務履行に要する債権者の行為(協力)』

6 口頭の提供のための履行の準備の内容(概要)

前記の2つの要件のいずれかに該当する場合,債務者は,原則的な現実の提供ではなく,口頭の提供だけで弁済の提供をしたことになります(債務不履行責任を回避できます)。
ここで口頭の提供の内容として,条文上,債務者が履行の準備をしていることが前提となっています(前記)。
実務では,債務者の行為が,履行の準備を完了したといえるかどうかが問題となることが多いです。
判断基準や具体例については別の記事で説明しています。

本記事では,口頭の提供の基本的な内容を説明しました。
実際には,口頭の提供で足りるのか,とか,口頭の提供をしたといえるのかという点が問題となりやすいです。
実際に債務の弁済(支払,納品)についての問題に直面されている方は,みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。

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【金銭の提供として認められる範囲(手形・小切手・郵便為替など)】
【口頭の提供の要件の『債権者の(あらかじめ)受領拒絶』】

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