【宅建業法の報酬は成功報酬(成約前の請求・受領は違法)という考えがある】

1 宅建業法の報酬は成功報酬という見解

不動産の仲介(媒介)の手数料(報酬)については、宅建業法による上限の規制があります。
詳しくはこちら|不動産売買・賃貸の仲介手数料(報酬額)の上限(基本)
手数料(報酬)の金額とは別に、手数料が発生するタイミングについての解釈もあります。
国土交通省は成功報酬でなくてはならないという見解をとっているようなのです。
この見解によって、いろいろな新しいサービスの適法性の問題が生じています。
詳しくはこちら|不動産の内見や情報提供サービスの料金や定額月会費と宅建業法の規制
本記事では、宅建業法の報酬が成功報酬であるという解釈について説明します。

2 宅建業の報酬の発生要件(国交省ヒアリング)

宅建業法上の報酬について、国土交通省は成功報酬であるという見解をとっています。
この見解は法令や通達に規定されているわけではありません。

宅建業の報酬の発生要件(国交省ヒアリング)

あ 報酬の一般論

宅建業法上の報酬とは契約を成立させたことの対価である
つまり成功報酬である
法令や通達による規定はない
『宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方』の第46条第1項関係(6)が参考になる

い 内見の対価の設定

例えば、内見1件で1000円を受け取ることは、直ちに違反とはいえないのかもしれない
※国土交通省不動産課不動産業指導室ヒアリング平成29年6月

3 報酬額の上限と他名目の料金との関係(考え方・引用)

国土交通省の前記の見解の理由としているものは『解釈・運用の考え方』です。
これ自体が国土交通省が作ったものです。国会や裁判所による判断ではありません。
いずれにしても、『解釈・運用の考え方』は行政としての公的な見解です。記載内容のうち関係する箇所を引用しておきます。

報酬額の上限と他名目の料金との関係(考え方・引用)

1 告示の運用について(昭和45年建設省告示第1552号関係)
(6) 告示第七(告示第二から第六までの規定によらない報酬の受領の禁止)関係
① 宅地建物取引業者は、告示第二から第六までの規定によるほかは依頼者の依頼によって行う広告の料金に相当する額を除き報酬を受けることはできない。
したがって、告示第二から第六までの規定による報酬及び依頼者の依頼によって行う広告の料金に相当する額以外にいわゆる案内料、申込料や依頼者の依頼によらずに行う広告の料金に相当する額の報酬を受領することはできない。
② この規定には、宅地建物取引業者が依頼者の特別の依頼により行う遠隔地における現地調査等に要する費用に相当する額の金銭を依頼者から提供された場合にこれを受領すること等依頼者の特別の依頼により支出を要する特別の費用に相当する額の金銭で、その負担について事前に依頼者の承諾があるのものを別途受領することまでも禁止する趣旨は含まれていない。
※『宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方』第46条第1項関係−1(6)(p28)

この記載を前提にしても成功報酬であるという解釈がストレートに出てくるとは思えません。

4 成功報酬であると指摘する論文

宅建業者の報酬請求権の発生要件について言及している論文の中で、成功報酬であるという指摘がなされています。特にソースは示されておらず、以上のような見解を紹介した、という位置づけであると思います。

成功報酬であると指摘する論文

(成功報酬)
媒介業者が、依頼者との媒介契約に基づき媒介行為を行い、その結果売買契約が成立すれば、媒介業者は依頼者に対して約定した報酬を請求することができる。
媒介業者がいくら契約に向けて尽力したとしても、売買契約を締結するかどうかは依頼者及び相手方の自由意思にゆだねられているから、媒介業者には、必ず売買契約を成立させることまでの義務があるわけではない。
つまり、尽力したが契約を締結できなかったとしても債務不履行といった責任を負うことは原則としてない。
その裏返しとして、売買契約が成立しなければ、媒介業者は依頼者に対して報酬を請求することはできないこととなる。
※村川隆生稿『媒介業務と媒介報酬請求権』/『RETIO.NO.58』2004年6月p20

5 仲介による報酬金の民事的な性質論

以上の説明は、報酬の請求や受領が宅建業法に違反するかどうかという視点をベースとするものです。
この点、宅建業者から顧客に対する報酬請求権が発生するかどうか、ということをストレートに判断した判例があります。
最高裁は、仲介手数料(報酬)が発生するのは一般的に、売買(賃貸借)契約の締結と履行完了に至った時点であると判断しました。
取引の候補者を探して条件交渉をするという仲介業務の本質を経て成果が結実した時点である、という理由です。要するに成功報酬であるという判断です。
売買でいえば、代金(残金)決済+登記移転+物件引渡までが完了した時点で成果が100%実現したと言えるからです。
これは民事的な解釈なので、これと違う合意があれば、合意の方が優先となります。

仲介による報酬金の民事的な性質論

思うに、仲介人が宅地建物取引業者であつて、依頼者との間で、仲介によりいつたん売買契約が成立したときはその後依頼者の責に帰すべき事由により契約が履行されなかつたときでも、一定額の報酬金を依頼者に請求しうる旨約定していた等の特段の事情がある場合は格別、一般に仲介による報酬金は、売買契約が成立し、その履行がされ取引の目的が達成された場合について定められているものと解するのが相当である。
※最判昭和49年11月14日

6 ショールーミングを助長する問題

前記のように、不動産流通の実務(業界)では、国土交通省の解釈が、ほぼ唯一の公的見解として、多くの事業者が受け取っています。
つまり、賃貸借(売買)契約の締結前に内見の料金を受領することはリスクが高いとして控えているのです。
この結果、内見だけをA社にしてもらって、賃貸借契約の締結(媒介業務)は、フィーが安いB社に頼むというショールーミングが横行してしまっているのです。
詳しくはこちら|仲介業者のスイッチの自由(ショールーミング)と料金競争
現在のテクノロジーの水準に合致しない古いルールがマーケットメカニズムを歪めてしまっているのです。

本記事では、宅建業法の報酬の性格として成功報酬であるという国土交通省の見解を紹介しました。
前記のように、このことは新たなサービスを作る上で問題となることがよくあります。
宅建業の報酬の規制と関係するサービスを計画している事業者の方は、みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。

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【不動産の内見や情報提供サービスの料金や定額月会費と宅建業法の規制】
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