1 区分所有法の分離処分禁止
2 区分所有法の分離処分禁止の条文
3 禁止される処分の内容
4 『処分』に該当しないもの
5 分離処分が許される法律行為
6 分離処分禁止の規定の効果
7 建物の抵当権と敷地利用権の関係(判例)
8 専有部分の共有持分の放棄の効果

1 区分所有法の分離処分禁止

区分所有法では,専有部分と敷地利用権の分離処分が禁止されています。
本記事では,分離処分として禁止される行為や,違反する行為の効果など,分離処分禁止の基本的な内容を説明します。

2 区分所有法の分離処分禁止の条文

分離処分を禁止する規定は区分所有法22条1項です。
まず,この条文の規定を押さえておきます。

<区分所有法の分離処分禁止の条文>

(分離処分の禁止)
第二十二条 敷地利用権が数人で有する所有権その他の権利である場合には、区分所有者は、その有する専有部分とその専有部分に係る敷地利用権とを分離して処分することができない。ただし、規約に別段の定めがあるときは、この限りでない。
※区分所有法22条1項

3 禁止される処分の内容

分離処分として禁止される『処分』は,専有部分と敷地利用権について一体的に(セットで)処分できるもの,に限定されます。
売買などの譲渡や物権の設定が典型例ですが,それ以外に,権利が移転する(帰属が変わる)ものも広く含まれます。

<禁止される処分の内容>

あ 禁止される『処分』の解釈

専有部分と敷地利用権について一体的にすることができる法律行為としての処分である

い 禁止される『処分』の典型例

譲渡・抵当権の設定・質権の設定

う 禁止される『処分』のその他の具体例

信託・出資・遺贈・遺産分割・仮処分
※水本浩ほか編『基本法コンメンタール マンション法 第3版』日本評論社2006年p43,44

4 『処分』に該当しないもの

『処分』とはいえないために,『分離処分』として禁止されないものもあります。

<『処分』に該当しないもの>

あ 公権力の行使

公権力の行使に基づく権利変動
例=土地収用

い 事実に基づく権利変動

一定の事実に基づいて法律の規定によって生じる権利変動
例=時効取得
※水本浩ほか編『基本法コンメンタール マンション法 第3版』日本評論社2006年p44

5 分離処分が許される法律行為

一般的な『処分』に該当する法律行為でも,別の理由で『分離処分の禁止』が適用されないものがあります。
もともと専有部分と敷地利用権を一体的に処分できないものは禁止できません。つまり,禁止されないということになります。

<分離処分が許される法律行為>

あ 例外的な分離処分の許容

一体的にすることができない法律行為について
→分離処分禁止に該当しない
『い・う』のような具体例がある

い 賃借権を除外した抵当権設定

敷地利用権が賃借権であるケースにおいて
専有部分のみを目的として抵当権を設定すること
ただし,建物に設定された抵当権の効力は敷地利用権にも及ぶ(後記※1)

う 土地への用益権設定

敷地利用権が所有権であるケースにおいて
敷地のみを目的とする土地利用権の設定
例=地上権・地役権・賃借権など
※水本浩ほか編『基本法コンメンタール マンション法 第3版』日本評論社2006年p44

6 分離処分禁止の規定の効果

分離処分の禁止に該当する(違反する)行為は効果が生じないことになります。

<分離処分禁止の規定の効果>

あ 分離処分の可能性

分離処分禁止に違反する『い』の行為について
→効力を生じない

い 分離処分の分類

ア 専有部分と敷地利用権の一方のみの処分
イ 専有部分と敷地利用権について異なる内容の処分
※水本浩ほか編『基本法コンメンタール マンション法 第3版』日本評論社2006年p44

7 建物の抵当権と敷地利用権の関係(判例)

常識的に,土地の賃借権と建物はセットといえます。
判例では,一体となって1つの財産とするという考え方がとられています。
前記の分離処分禁止の例外として,建物だけに抵当権を設定することができますが(むしろ土地の賃借権に抵当権を設定できない),結果としては,抵当権の効力は敷地利用権にも及ぶのです。

<建物の抵当権と敷地利用権の関係(判例・※1)>

建物を所有するために必要な敷地の賃借権は、右建物所有権に付随し、これと一体となつて一の財産的価値を形成しているものであるから、建物に抵当権が設定されたときは敷地の賃借権も原則としてその効力の及ぶ目的物に包含されるものと解すべきであるからである。
※最高裁昭和40年5月4日

8 専有部分の共有持分の放棄の効果

ところで実際に,専有部分自体が共有となっているケースもよくあります。
専有部分の共有者がA・Bであるとして,Aが専有部分の共有持分を放棄するとどうなるでしょう。
まず,専有部分の共有持分はBに帰属することになります(民法255条)。
詳しくはこちら|共有持分放棄|基本|典型例・通知方法・法律構成
次に,Aが有していた敷地利用権については,前記の最高裁の考え方を元にすると,専有部分(建物)の共有持分と一体となってBに帰属することになると思われます。
ストレートにこの解釈について示している裁判例や学説はみあたりません。
なお,敷地利用権の共有持分の放棄は禁止されています(区分所有法24条)。
しかしこのケースで放棄した共有持分は敷地利用権ではなく専有部分(建物)についてのものですから,禁止の対象ではありません。

本記事では,区分所有法の分離処分の禁止について説明しました。
実際に分離処分の禁止に関する問題に直面されている方は,みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。