1 不動産の売買・賃貸者の仲介手数料の上限(概論)
2 売買の仲介手数料の上限
3 賃貸の仲介手数料の上限
4 居住用建物の賃貸仲介の一方依頼者の上限
5 『居住用建物』の解釈
6 『依頼者の承諾』の解釈
7 仲介手数料の上限の例外(概要)
8 『仲介による報酬金』性質論
9 『仲介手数料』の条項・ルール|典型例

1 不動産の売買・賃貸者の仲介手数料の上限(概論)

不動産の売買や賃貸借の契約においては,仲介業者が『当事者探し』や『契約条件の交渉』を行ないます。契約が成立した場合には『仲介手数料』が発生します。
宅建業法上は『媒介・代理』として分けられています。本記事ではこれらをまとめて,一般的な『仲介』という言葉を使います。
仲介手数料については,宅建業法で上限の規定があります。
本記事では,仲介手数料の上限の基本的なルールを説明します。

2 売買の仲介手数料の上限

不動産の売買の仲介手数料は媒介・代理で違う上限が設定されています。これについてまとめます。

<売買の仲介手数料の上限>

あ 媒介の手数料上限
売買代金額 上限料率 速算時の加算額
〜200万円 5.4% なし
〜400万円 4.32% +2万円
400万円〜 3.24% +6万円
い 代理の手数料上限

『あ』の2倍
※宅建業法46条,建設省告示1552号『第2,第3』

3 賃貸の仲介手数料の上限

不動産の賃貸借の仲介手数料の上限もルールがあります。最も原則的な規定は,賃貸人・賃借人から受領する手数料の合計額の上限です。

<賃貸の仲介手数料の合計額の上限(※1)>

依頼者の双方から受領する報酬の合計額の上限
→賃料額の1か月分の1.08倍
『賃料額』には消費税を含まない
2者の依頼者の間の分配・割合についての規制はない
※国土交通省『宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方』第46条第1項関係1(3)1

4 居住用建物の賃貸仲介の一方依頼者の上限

賃貸の仲介手数料には例外として『一方依頼者の上限』もあります。対象は居住用建物です。ですから,現実にはこの『例外』の方が一般的と言えます。

<居住用建物の賃貸仲介の一方依頼者の上限>

あ 基本的事項

居住用建物(後記※2)について
依頼者の一方から受領する報酬の上限
→賃料の1か月分の0.54倍

い 承諾による適用除外

『依頼者の承諾』(後記※3)を受けている場合は除く
※宅建業法46条,建設省告示1552号『第4』

5 『居住用建物』の解釈

上記の例外規定における『居住用建物』について,国交省の解釈をまとめます。

<『居住用建物』の解釈(※2)>

あ 基本的事項

居住用建物について
→専ら居住の用に供する建物を指す

い 兼用の建物の解釈

居住の用とともに居住以外の用途を兼ねるもの
例;事務所,店舗など
→『居住用建物』に含まれない
※国土交通省『宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方』第46条第1項関係1(3)4

6 『依頼者の承諾』の解釈

上記の例外規定における『依頼者の承諾』の解釈をまとめます。

<『依頼者の承諾』の解釈(※3)>

あ 承諾の対象

依頼者から次の内容の承諾を得る
『賃料の1か月分の0.54倍に相当する金額以上の報酬を受ける』

い 依頼者の承諾のタイミング

媒介の依頼を受ける時に承諾を得ることが必要である
依頼後に承諾を得た場合,適用除外にはならない

う 合計額の上限の適用

依頼者の双方から受領する報酬の合計額の規定(上記※1)について
→承諾があっても適用除外にならない
※国土交通省『宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方』第46条第1項関係1(3)5

7 仲介手数料の上限の例外(概要)

以上のように,仲介手数料の上限は明確に規定されています。これを超過する手数料は宅建業法違反であり,行政処分の対象となります。
詳しくはこちら|囲い込み・その他の不正×法的責任|行政/刑事/民事責任
このように厳格ではありますが,加算が一切認められない,というわけではありません。例外的に加算できるものもあります。これについては別に説明しています。
詳しくはこちら|不動産売買・賃貸の仲介手数料(報酬額)の上限の例外

8 『仲介による報酬金』性質論

仲介手数料が『発生』するのは,一般的には『売買契約の締結(調印)』の時点です。
『取引の候補者を探して条件交渉』という仲介業務の本質を経て『成果』が結実した時点だからです。
一般的な用語で言えば『成功報酬』と言えます。
ところで『売買契約の締結』では『成果』としてまだ不完全です。
『代金(残金)決済+登記移転+物件引渡』までが完了した時点で『成果』が100%実現したと言えます。
判例でも『仲介による報酬金』一般についてその目的・趣旨が示されています。

<『仲介による報酬金』性質論>

あ 基本

一般的な仲介による報酬金の趣旨
→取引の目的が達成されることを前提としている

い 取引の目的|プロセス

ア 売買契約成立
イ 履行が完了する
※最高裁昭和49年11月14日

9 『仲介手数料』の条項・ルール|典型例

ここで,実際によく用いられる,媒介契約における『仲介手数料の支払いタイミング』の条項を示します。

<『仲介手数料』の条項・ルール|典型例>

あ 支払時期

ア 売買契約締結時→約定報酬額の半額
イ 最終代金精算日→残金

い 手付放棄等の扱い

手付放棄等によって契約が解除された場合には,契約時に授受された金銭をもって報酬額(総額)とする

これはあくまでも一般的な条項の例です。
いずれにしても,『契約締結(成立)』と『決済+引渡』の2段階の関係が問題になることもあります。