【財産開示手続における開示する財産の内容と範囲】

1 財産開示手続で開示する財産の内容(総論)
2 開示する財産の範囲(基本)
3 開示する情報の内容(基本)
4 財産の種類による執行に要する情報
5 動産に関する開示情報

1 財産開示手続で開示する財産の内容(総論)

裁判所が債務者の財産開示を求める制度があります。
詳しくはこちら|裁判所による債務者の財産調査(財産開示手続の全体)
本記事では,財産開示手続で債務者に開示が義務付けられる財産の内容を説明します。

2 開示する財産の範囲(基本)

まず,債務者が開示する財産の範囲の基本的部分をまとめます。

<開示する財産の範囲(基本)>

あ 基準時点

財産開示期日における陳述の時点を基準とする

い 開示対象財産(全体)

積極財産のうち『う』を除外したもの
消極財産は開示対象ではない

う 除外される財産

差押禁止動産のうち『ア・イ』
ア 債務者などの生活に不可欠の衣服・台所用具などイ 債務者などの1か月間の生活に必要な食料・燃料 ※民事執行法199条1項,131条1項,2項
※『新基本法コンメンタール民事執行法〜別冊法学セミナー〜』日本評論社p474

3 開示する情報の内容(基本)

前記の財産について,どのような情報を開示するか,ということについてまとめます。

<開示する情報の内容(基本)>

あ 執行に直接要する情報

ア 基本的事項 強制執行or担保権の実行の申立をするのに必要となる事項
内容は『イ・ウ』の情報に分けられる
イ 共通する内容 財産の表示
※民事執行規則21条3項,170条1項3号
ウ 財産の種類によるプロパー情報(後記※1

い 動産に関する付随的な情報

動産について
→債権者は,執行対象財産の選択に必要な情報を要する
『あ』以外の情報の開示も要する(後記※2
※民事執行法199条2項

4 財産の種類による執行に要する情報

執行のために必要な情報は,財産の種類によって違います。財産ごとの必要な情報を整理します。

<財産の種類による執行に要する情報(※1)

財産の種類 開示情報 民事執行規則
航空機 航空機の所在する場所 84条,74,175条
自動車 自動車の本拠 88条,176条1項
建設機械 建設機械の登記の地 98条,88条,177条
小型船舶 小型船舶の小型船舶登録原簿に登録された船籍港 98条の2,88条,177条の2
債権 第三債務者の氏名or名称,住所 133条1項,179条1項
電話加入権 電話取扱局,電話番号,電話加入権を有する者の氏名or名称,住所並,電話の設置場所 146条1項,180条2項
預託株券など 保管振替機関or参加者の氏名or名称,住所 150条の5,133条1項,180条の2第2項,179条1項
振替社債など 振替機関などの氏名or名称,住所 150条の11,133条1項,180条の3第2項,179条1項

5 動産に関する開示情報

動産についてだけは,多少特別な開示内容が定められています。

<動産に関する開示情報(※2)

あ 動産執行に直接必要な情報

動産執行の申立には『所在場所』の特定だけで足りる
※民事執行規則99条,178条1項

い 財産開示の情報の範囲

『あ』に加えて,動産の所在場所ごとに『ア・イ』を明示する
ア 主要な品目 金額の基準はない
社会通念上高価と考えられるものをいう
イ 『ア』の数量+価格 ※民事執行規則184条3号
※最高裁判所事務総局民事局『条解民事執行規則 第3版』司法協会
p677

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