1 宅建業者に対する監督処分の種類(概要)
2 行政指導・調査権限
3 指示処分
4 業務停止処分(基本)
5 業務停止処分の主な対象行為
6 免許取消処分(基本)
7 免許取消処分の主な対象行為
8 信義誠実義務違反による監督処分
9 監督処分の手続

1 宅建業者に対する監督処分の種類(概要)

宅建業者の違法・不正行為に対して,国土交通省が監督処分(行政処分)をすることがあります。
本記事では,宅建業法による監督処分の一般的な内容を整理・説明します。
なお,刑事責任(刑事罰)については別の記事で説明しています。
詳しくはこちら|宅建業法違反の刑事責任(刑事罰)の規定
監督処分の説明に戻ります。まずは,監督処分の3つの種類をまとめます。

<宅建業者に対する監督処分の種類(概要)>

あ 指示処分

違反行為を解消することを命じる(後記※1)

い 業務停止処分

1年以内の期間,業務の禁止を命じる(後記※2)

う 免許取消処分

宅建業免許を取り消す(後記※5)

詳しい内容は後述します。

2 行政指導・調査権限

監督処分以外にも,行政庁の監督としては,行政指導があります。行政指導には法的な強制力はありません。
また,行政処分や監督処分の前段階では,監督庁が調査や報告を求める権限を持っています。

<行政指導・調査権限>

あ 基本的事項

国土交通大臣・知事は『い・う』を行うことができる

い (行政)指導

宅建業者に対して,必要な指導・助言・勧告を行うことができる
※宅建業法71条

う 調査・報告要求

業務についての報告を求める
事務所への立入検査をする
※宅建業法72条1項

3 指示処分

以下,監督処分の内容について説明します。
まずは,指示処分の内容についてまとめます。

<指示処分(※1)>

あ 指示処分の内容

宅建業者に対し,違反行為を解消することを命じること

い 処分権者

国土交通大臣or知事

う 主な対象行為

ア 業務に関し取引関係者に損害を与えor与えるおそれが大である(※9)
イ 業務に関し取引の公正を害する行為をしたor害するおそれが大である(※9)
ウ 宅建業法に違反した
※宅建業法65条1項1号,2号

え 指示処分への違反

業務停止処分(後記※4)の対象となる
罰則の対象にはならない

指示処分の対象行為のうち損害を与えるとか取引の公正を害する行為は,抽象的なものなので,実際にどのような行為が該当するのかをハッキリ判定しにくいです。
この解釈については別の記事で詳しく説明しています。
詳しくはこちら|宅建業者の指示処分(監督処分の1つ)の対象行為の基本

4 業務停止処分(基本)

業務停止処分の基本的事項をまとめます。

<業務停止処分(基本;※2)>

あ 業務停止処分の内容

業務の全部or一部の禁止を命じる
1年以内の期間を定める

い 処分権者

国土交通大臣or知事

う 対象行為

多くの行為が規定されている(後記※3)

え 業務停止処分に対する違反

免許取消処分(後記※8)の対象となる
罰則の対象にもなることもある

5 業務停止処分の主な対象行為

業務停止処分の対象となる主な行為についてまとめます。

<業務停止処分の主な対象行為(※3)>

ア 指示処分に違反した(※4)
イ 宅建業に関し不正or著しく不当な行為をした(※10)
ウ 営業保証金供託届出前の事業開始
不足額を2週間以内に供託しないことを含む
エ 新事務所設置に際し弁済業務保証金分担金を納付しない
オ 特別弁済業務保証金分担金を通知後1か月以内に納付しない
カ 保証協会社員が還付充当金を通知後2週間以内に納付しない
キ 保証協会社員の地位を失った後1週間以内に営業保証金の供託をしない
ク 専任の取引士設置要件を欠いた
2週間以内に補充しないことを含む
ケ 従業者名簿を備え付けていない
コ 取引態様の明示義務違反
サ 誇大広告などの禁止違反
シ 重要事項の説明義務違反
書面を交付して説明しなかったことを含む
ス 37条書面の交付義務違反
セ 媒介・代理契約書面の交付,価額の根拠の明示義務違反
ソ 自ら売主の場合の手付金等保全措置義務違反
タ 手付の信用供与による契約誘引
チ 限度額を超える報酬受領,不当に高額の報酬要求
ツ 重要な事実の不告知
テ 不当な履行遅延
ト 守秘義務違反
※宅建業法65条2項2号,4項2号

業務停止処分の対象行為のうち,不正行為・著しく不当な行為(前記※10)は,抽象的なものです。そこで,ある行為がこれに該当するかどうかをハッキリ判断することが難しいです。
この解釈については別の記事で説明しています。
詳しくはこちら|宅建業者の業務停止処分の対象行為の中の『不正行為・著しく不当な行為』

6 免許取消処分(基本)

免許取消処分の基本的事項をまとめます。

<免許取消処分(基本;※5)>

あ 免許取消処分の内容

与えた宅建業免許を取り消すこと

い 処分権者

免許権者
=免許をした国土交通大臣or知事

う 対象行為

多くの行為が規定されている(後記※6)

7 免許取消処分の主な対象行為

免許取消処分の対象となる主な行為についてまとめます。

<免許取消処分の主な対象行為(※6)>

ア 宅建業者が成年後見人・被保佐人・復権を得ない破産者である
イ 宅建業者が禁錮以上の刑に処せられ,執行の終わりなどから5年を経過しない
ウ 宅建業者が宅建業法違反や傷害罪等で罰金の刑に処せられ,執行の終わりなどから5年を経過しない
エ 次のいずれかの者が『ア〜ウ』のいずれかに該当する
・成年者と同一の能力を有しない未成年者である宅建業者の法定代理人
・個人である宅建業者の政令で定める使用人
・法人である宅建業者の役員と政令で定める使用人
オ 『エ』のいずれかの者が次の4つのいずれかに該当する
・不正手段による免許取得・業務停止処分に違反するとして免許を取り消され,取消しの日から5年を経過していない
・(法人の場合)免許取消処分の聴聞の公示日から60日以内にその法人の役員であった者で,取消の日から5年を経過していない
・免許取消処分の聴聞の公示がなされ,公示日から処分決定までの間(※7)に解散or廃業の届出をし,その届出から5年を経過していない
・前記※7の期間内に合併により消滅した法人or解散・廃業の届出をした法人の,聴聞の公示日前60日以内に役員であり,その消滅または届出から5年を経過していない
カ 免許換えの手続を怠った
キ 不正手段により免許を取得した
ク 業務停止処分対象行為で情状が特に重い
ケ 業務停止処分に違反したとき(※8)
コ 免許を受けてから1年以内に業務を開始しない
サ 1年以上事業を休止したとき
シ 営業保証金供託の届出の催告を受け1か月以内に届出をしない
ス 宅建業者の事務所所在地が確知できない
※宅建業法66条1項9号

8 信義誠実義務違反による監督処分

ところで,宅建業者は信義誠実義務を負っています。
信義誠実義務はとても抽象的なものなので,多くの行為が信義誠実義務に反していると言えてしまいます。そうすると,宅建業法違反ということになるので,指示処分や業務停止処分の対象となってしまいます。
このように信義誠実義務違反を理由とする監督処分は,不当・過剰な処分につながりやすいです。そこで,実際の監督処分の場面では慎重さが要求されています。

<信義誠実義務違反による監督処分>

あ 信義誠実義務の条文規定

(宅地建物取引業者の業務処理の原則)
宅地建物取引業者は、取引の関係者に対し、信義を旨とし、誠実にその業務を行なわなければならない。
※宅建業法31条1項

い 信義誠実義務を理由とする処分

信義誠実義務違反・信義則違反は抽象的な不確定概念である
監督処分権限を行使するにあたっては,できる限り宅建業法32条以下の具体的な実体規定に基づいて宅建業法の規定に違反する行為の有無を検討すべきである
みだりに法31条1項に依拠して処分すべきではない
その適用は特に慎重を期すべきである
※岡本正治ほか著『改訂版 逐条解説 宅地建物取引業法』大成出版社2012年p258,259

9 監督処分の手続

行政庁が監督処分を行う場合には,対象者に主張する機会を与えることが必要です。監督処分の手続の全体についてまとめます。

<監督処分の手続>

あ 聴聞の機会

処分権限者は,あらかじめ処分を受ける者or代理人の出頭を求める
対象者に釈明・証拠提出の機会を与える
公開による聴聞を行う

い 処分結果の公告

業務停止処分・免許取消処分をした場合
→その旨を公告する
※宅建業法70条1項
指示処分は公告の対象外である

う 公告の方法

ア 国土交通大臣の公告方法
官報のみ
イ 都道府県知事の公告方法
公報orウェブサイトへの掲載orその他適切な方法
※宅建業法70条1項