【旅館業の定義|『営業』解釈論】

1 旅館業の定義|『営業』解釈論

人を泊めて宿泊料を受け取るとき、旅館業法の許可が要るかどうかは、その行為が『営業』に当たるかどうかで決まります。
知人を1晩泊めて謝礼を受け取る場面と、客を継続して泊める場面の間のどこかに線がありますが、条文はその線を書いていません。

本記事では旅館業法の『営業』の解釈について説明します。

旅館業の定義の全体については別の記事で説明しています。

『旅館業』の定義・解釈|全体|3つのカテゴリ・共通部分

2 『営業』=社会性をもって継続反復されているもの・知人友人は範囲外

『営業』に当たるかどうかの線

あ 『営業』の意味(何をもって営業か)

社会性をもって継続反復されているもの

い 『社会性をもって』の意味(どこからが社会性か)

社会通念上、個人生活上の行為として行われる範囲を超える行為

う 知人・友人を泊める場合(許可は要るか)

社会性をもってには当たらないので、許可は要らない
ただし『知人』『友人』と称していても、広く募集して繰り返し泊めているなら許可が要る

え 反復継続の線(どこから繰り返しか)

年に1グループへ提供するだけなら、反復継続性は否定される
他の事情がこの判断にどう影響するかは示されていない

3 旅館業法2条2〜4項=宿泊料を受けて人を宿泊させる営業

旅館業法は旅館業を3つに分けています。どの類型にも「宿泊料を受けて、人を宿泊させる営業」という同じ文言が置かれていて、ここが共通の入口になります。

条文

旅館業法2条2〜4項の条文

この法律で「旅館・ホテル営業」とは、施設を設け、宿泊料を受けて、人を宿泊させる営業で、簡易宿所営業及び下宿営業以外のものをいう。

※旅館業法2条2項

この法律で「簡易宿所営業」とは、宿泊する場所を多数人で共用する構造及び設備を主とする施設を設け、宿泊料を受けて、人を宿泊させる営業で、下宿営業以外のものをいう。

※旅館業法2条3項

この法律で「下宿営業」とは、施設を設け、一月以上の期間を単位とする宿泊料を受けて、人を宿泊させる営業をいう。

※旅館業法2条4項

4 厚生労働省の説明=個人生活上の行為の範囲を超える行為

条文はこの『営業』が何を指すかを定めていません。許可が要るかどうかはこの一語で分かれるのに、線そのものは条文の外にあります。

この『営業』について、厚生労働省が解釈を示しています。示されているのは2つで、1つは『営業』そのものの定義、もう1つは『社会性をもって』の中身です。知人・友人を泊める場面は個人生活上の行為の範囲を超えないので許可は要りませんが、呼び方だけで決まるわけではありません。

引用:文献・公開情報

『営業』の解釈|厚生労働省

Q5 知人・友人を宿泊させる場合でも旅館業法上の許可は必要ですか。
A5 旅館業に該当する「営業」とは、「社会性をもって継続反復されているもの」となります。ここでいう「社会性をもって」とは、社会通念上、個人生活上の行為として行われる範囲を超える行為として行われるものであり、一般的には、知人・友人を宿泊させる場合は、「社会性をもって」には当たらず、旅館業法上の許可は不要と考えられます。「知人」「友人」と称していても、事実上広く宿泊者の募集を行い、繰り返し人を宿泊させる場合は、住宅宿泊事業法による住宅宿泊事業としての届出を行うか、国家戦略特別区域法の特区民泊の認定を受ける場合を除き、旅館業法上の許可が必要です。

※『民泊サービスと旅館業法に関するQ&A』厚生労働省

5 反復継続性の線|年に1グループへの提供→否定(概要)

『継続反復』の側にも行政の解釈があります。年に1グループへ宿泊サービスを提供するだけなら、反復継続性は否定されるとされています。

もっとも、他の事情がこの判断にどう影響するかは示されていません。宿泊の需給が逼迫していることや、自治体が民泊サービスを要請したことが、どの程度効くのかは分かりません。

この解釈については別の記事で説明しています。

イベント民泊・許可不要・基本|平成27年7・9月事務連絡

6 行政解釈の効き方=法的拘束力なし・グレーゾーンの生成(概要)

ここまでに見た線は、いずれも行政が示した解釈です。法令の根拠を持つ処分とも、個別の事業者へ向けた指導とも違う中間的なもので、それ自体に法的な拘束力はありません。

それでも実務がこの線に従うのは、効力の不明確なルールが事業の『グレーゾーン』を作るからです。順法意識の強い事業者ほど参入を控え、線の内側で動こうとします。

この構造については別の記事で説明しています。

行政の肥大化・官僚統治|コスト・ブロック現象|小規模事業・大企業

7 一般的な『業』の解釈=反復継続の意思・事業的規模・不特定多数(参考)(概要)

『業』や『営業』の解釈は旅館業法に限りません。業法一般では、反復継続の意思・事業的規模・不特定多数を対象とすることの3つを手がかりに判断されます。

3つが揃えば『営業』に当たりますが、それぞれどの程度で足りるかははっきりしていません。

業法一般の『業』の解釈については別の記事で説明しています。

業法の『業・事業・営業』の基本的な解釈(反復継続意思・事業規模・不特定多数)

判例・行政見解・文献の集約については別の記事で説明しています。

『業』『営業』の解釈論(判例・行政見解・文献)の集約

本記事は一般的な説明です。個別の事案にそのまま当てはまるとは限らず、一見似ている事案でも、事情が異なれば結論は異なります。個別的事情により、法的判断や主張として活かす方法、最適な対応方法は違ってきます。本記事でご説明したものと同様の問題に直面されている方は、みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。

本記事の引用は、書籍・判例などの原文から範囲を選んで載せたものです。改行の位置は読みやすさのために当方で整えており、原文の改行と同じとは限りません。また、記号や外字の扱いにより、文字の一部が原文と異なって表示されることがあります。

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