1 日本には業法・業務規制=許認可制度がまだまだ多い
2 一般的な『業とする』の法令用語としての基本的解釈
3 独占禁止法の『事業』の解釈(参考)
4 『反復・継続』の程度=反復継続の意思だけで足りる
5 『反復・継続』の程度×行政判断|イベント民泊|参考
6 頻度の目安(動物愛護法;概要)
7 『事業の遂行』程度の判断・解釈|『不特定多数』は必須ではない

1 日本には業法・業務規制=許認可制度がまだまだ多い

日本には多くの業務規制,許認可制度があります。
社会的には規制緩和・自由競争の要請が高まっています。
しかし既得権者の政治力もあり『規制大国』の状態はなかなか脱せていません。
『業法があったらネオラッダイト(既得権者保護)と思え』という格言があるくらいです。
関連コンテンツ|マーケットの既得権者が全体最適妨害|元祖ラッダイト→ネオ・ラッダイト
詳しくはこちら|旅客自動車運送事業(タクシー業)の規制の合憲性

業法で重要なのは『規制の範囲』です。
これに該当するかどうかで『自由にできる/できない』が違ってくるのです。

2 一般的な『業とする』の法令用語としての基本的解釈

法令一般における『営業』『業』の基本的解釈から整理します。

<一般的な『業とする』の法令用語としての基本的解釈>

あ 基本部分

『業とする』は,反復継続性(い)と事業的規模(う)の両方を満たすものを対象とする

い 反復継続性

行為が反復継続的に遂行されている(後記※1)

う 事業的規模

社会通念上『事業の遂行』とみることができる程度のものである(後記※2)
※吉国一郎『法令用語辞典第9次改訂版』学陽書房p165

『反復継続』『事業の遂行(規模)』のそれぞれの内容は後述します。

3 独占禁止法の『事業』の解釈(参考)

なお,独占禁止法では,一般的な業法と異なり,『事業』という用語が事業の種類を限定しないものとして使われています。
独占禁止法の『事業』という用語は,『事業的規模』の概念(要件)を含まないと解釈されています。
詳しくはこちら|『業』『営業』の解釈論(判例・行政見解・文献)の集約
つまり,一般的な業法の中の『業』や『事業』よりも,独占禁止法の『事業』の方が広い概念であるといえるのです。
しかし,本記事では,各種の業法を前提として説明していますが,参考として紹介しました。

4 『反復・継続』の程度=反復継続の意思だけで足りる

『業とする』の意味の中で『反復・継続』という要件がちょっと複雑です。
これについては判例で解釈が確立しています。

<『反復・継続』の程度(※1)>

『反復・継続』の『意思』で足りる
=実際には『反復・継続』での遂行をしていなくても『業』に該当する
※最高裁昭和50年4月4日;弁護士法72条
※最高裁昭和49年12月16日;宅建業法2条2号
※大審院大正5年2月5日;医師法17条

反復継続の意思,という判断基準は確立しています。
しかし,現実的なケースではハッキリと判断できないことが多いです。

5 『反復・継続』の程度×行政判断|イベント民泊|参考

『反復・継続』に関して最近の行政判断があります。
『イベント民泊』として示された行政の見解です。この見解の中に『業』の解釈論が入っているのです。概要をまとめます。

<『反復・継続』の程度×行政判断|イベント民泊|参考>

あ 事務連絡(通達)

平成27年7月1日事務連絡
厚生労働省健康局生活衛生課

い 基本的事項|概要

一定範囲で『宿泊サービス』が『業』に該当しない

う 『業』に該当しない事情|概要

ア 1年に1回・2〜3泊
イ イベント開催時
ウ 宿泊施設が不足している
エ 地方自治体の『要請』などがある

頻度や用途によって『業』に該当しないものとして扱うルールです。具体化された数字だけを見ると『1年に1回』であれば『業』に該当しないようにも読めます。
この点,この事務連絡はあくまでも行政的な判断内容に過ぎません。
しかし,裁判所の判断にも影響が生じる可能性は十分にあります。
また,現実的な捜査・検挙の場面でも影響が大きく生じると思われます。
詳しくはこちら|イベント民泊・許可不要・基本|平成27年7・9月事務連絡

6 頻度の目安(動物愛護法;概要)

反復・継続の判断について,明確な数字で基準を示すことは非常に難しいです。判例などの統一的な判断基準として示されていないのです。文献の見解としては,頻度の目安が例として挙げられているものがありました。

<頻度の目安(動物愛護法;概要)>

第1種/第2種動物取扱業の該当性について
次の頻度・取扱量であれば『業』に該当する
目安=年間2回以上or2頭以上
※動物愛護論研究会『改正動物愛護管理法Q&A』大成出版会p37
詳しくはこちら|第1種/第2種動物取扱業の定義と参入規制(登録/届出制)

この見解はあくまでも『業』の判断の一環として,という位置付けです。他の事情も含めて判断する,という前提です。大雑把な目安として参考になるという程度の情報です。

7 『事業の遂行』程度の判断・解釈|『不特定多数』は必須ではない

『事業の遂行』の程度,という基準は曖昧です。
これについて公的な解釈論を紹介します。

<『事業の遂行』程度の判断・解釈(※2)>

あ 『事業の遂行』程度

特定の法律の規制の趣旨・社会通念に照らして
→適用範囲を限定する要請に応じて解釈する

い 『不特定多数』(対公衆性)の扱い

『事業の遂行』の程度の判断の一環となる
※金融法委員会『金融商品取引業における『業』の概念についての中間論点整理』平成24年9月15日

う 『社会性』の扱い

『不特定多数』(『い』)と実質的に同様である
※厚生労働省ウェブサイト|旅館業法に関するQ&A『Q4』など
詳しくはこちら|『業』『営業』解釈論|判例・行政見解・文献の集約

『業』の解釈論の中で『不特定多数』を相手にすることも含めるかどうかという論点があります。
結論としては具体的な特定の法律・規制内容によって判断する,ということになります。
また『社会性』という概念を使う場合もあります。
『社会性がある』ということは『不特定多数が相手』と実質的に同じ意味でしょう。
いずれにしても『不特定多数(対公衆性)』の要否・程度については独立した『基準』とはならない傾向が強いです。
具体的な,それぞれの業法規制の解釈論については別記事にまとめてあります。
詳しくはこちら|『業』『営業』の解釈論(判例・行政見解・文献)の集約

本記事では,業法における『業』『事業』『営業』という用語の基本的な解釈を説明しました。
実際には,個別的なサービスの提供の仕組みによって『業』などに該当するかどうかの判断は違ってきます。
実際にサービスの設計やすでに行っているサービスと業法の適用の有無の問題に直面されている方は,みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。