1 規制改革実施計画|小規模宿泊業=『民泊』の緩和
2 イベント開催時の宿泊×旅館業許可不要|事務連絡
3 イベント開催時×民泊|許可不要・事務連絡|要件
4 イベント開催時×民泊|許可不要・事務連絡|自治体の確認
5 イベント開催時×民泊|許可不要・事務連絡|解釈内容
6 イベント開催時×民泊|解釈論×画期的|自治体の困惑
7 解釈論の拡がり|ゲリラ性の促進効果

1 規制改革実施計画|小規模宿泊業=『民泊』の緩和

各種のイベント開催時に『宿泊施設』が不足することがあります。
この点,旅館業営業許可の基準が緩和される制度があります。
イベント開催時に一定の許可基準が適用されない,というものです。
詳しくはこちら|許可基準緩和|既存制度|全体・イベント・グリーンツーリズムなど
この点,平成27年に一定の条件において『許可自体が不要』となりました。
最初に,規制改革実施計画の1つとして『民泊』の規制緩和が決められました。
平成27年6月30日に閣議決定されたものです。

<規制改革実施計画|小規模宿泊業=『民泊』の緩和>

あ 小規模宿泊業

イベント実施の際など『民泊』における規制緩和

い 規制改革の背景

イベント開催時に宿泊施設(キャパ)の不足が見込まれる
個人が自宅を宿泊の用途に提供することは公共性が高い

う 規制改革の内容

旅館業法の『適用外』を設定する
=『許可不要』のことである

え 実施時期

平成27年度

お 所轄官庁

厚生労働省
※平成27年6月30日閣議決定;規制改革実施計画(後記)

平成27年度末までには具体化することが宣言されました。

<規制改革実施計画|旅館業法関連>

内閣府;規制改革実施計画
平成27年6月30日閣議決定
p35,37
外部サイト|内閣府|規制改革実施計画

その直後に,厚生労働省で実際に具体化が実行されました。
具体化した『事務連絡』については次に説明します。

2 イベント開催時の宿泊×旅館業許可不要|事務連絡

上記の閣議決定を受けて,厚生労働省が事務連絡(通達)を出しました。
法律・施行令・施行規則ではなく『解釈を示した』という形式です。

<イベント開催時の宿泊×旅館業許可不要|事務連絡>

あ 事務連絡発信元

厚生労働省健康局生活衛生課

い 形式

事務連絡
『通知』よりも軽い形式である

う 日付

ア 平成27年7月1日(7月事務連絡)
解釈論の本体・基本的事項
イ 平成27年9月1日(9月事務連絡)
解釈論に関する疑問点への回答など

マーケット的にも,また,解釈論としても非常に画期的です(後述)。
本記事では,この事務連絡による『許可不要』の扱いについて説明します。

3 イベント開催時×民泊|許可不要・事務連絡|要件

7月事務連絡で示された解釈論を説明します。
イベント開催時に『旅館業の許可不要』となる要件として示されたものです。

<イベント開催時×民泊|許可不要・事務連絡|要件>

あ イベント開催時

イベント開催時に限定される

い 低頻度・短期間

イベントの頻度が低い+短期間である
例;年1回・2〜3日程度

う 宿泊施設キャパ不足

イベント参加者が利用する宿泊施設の不足が見込まれる

え 自治体の『要請』等

地方自治体が『住宅を宿泊施設として提供する』ことを要請した
=『住宅活用の必要性』があると判断した
=公共性が高い
※7月事務連絡(上記)

4 イベント開催時×民泊|許可不要・事務連絡|自治体の確認

上記の『自治体の要請』は『自治体の判断』が前提となります。
どのように自治体が判断するか,について7月事務連絡に説明があります。

<イベント開催時×民泊|許可不要・事務連絡|自治体の確認>

あ 基本的事項

地方自治体は一定の事情の確認・把握が必要である

い 確認・把握事項

ア 『要請』前
イベント開催地周辺の宿泊施設が不足すること
イ 住宅提供の実施中
反復継続した宿泊の提供が行われていないこと
※7月事務連絡(上記)

5 イベント開催時×民泊|許可不要・事務連絡|解釈内容

以上の条件に該当する場合の『解釈論』が7月事務連絡に示されています。

<イベント開催時×民泊|許可不要・事務連絡|解釈内容>

あ 事務連絡の記載

住宅を宿泊施設として提供すること
『反復継続』に該当しない
→『業』に該当しない
→『旅館業営業許可』自体が不要である
※7月事務連絡(上記)

い 事務連絡の記載以外の考え方

『低頻度+短期間』である
→『事業の遂行』の程度に達していない
→『業』に該当しない

事務連絡の内容は結論として『許可自体が不要』というものです。
『許可基準が緩和される』というものとは大きく違います。
なお,『業』の解釈論は曖昧なところが多いです。
もともと判断が難しいものです。
この事務連絡の内容が,一般的な『業』の解釈論に影響を与えることもあるでしょう。
詳しくはこちら|業法一般|『業』解釈論|基本|反復継続意思・事業規模・不特定多数

6 イベント開催時×民泊|解釈論×画期的|自治体の困惑

(1)『業』解釈はもともと曖昧である

いろいろな事業の法規制で『業』『事業性』が問題になります。
『業』の解釈論自体は判断基準として確実に統一されているとは言えません(前述)。
判断基準も曖昧なところがあり,また,具体的事情の評価にもブレが生じます。

(2)7月事務連絡→自治体に困惑

7月事務連絡は従来の難しい解釈論にストレートに切り込んだものです。
『事務連絡』を送られた各地方自治体は困惑している様子もうかがえます。
この難しい解釈論の『判断・責任を丸投げされた』という声もあるようです。
当然自治体や民間の事業者にはさまざまな疑問が生じました。
多くの疑問に回答する形で,第2弾の事務連絡で『回答』がなされています。
この『9月事務連絡』の説明内容については別記事にまとめてあります。
詳しくはこちら|イベント民泊|許可不要|補足説明=平成27年9月事務連絡

7 解釈論の拡がり|ゲリラ性の促進効果

7月事務連絡における解釈論の波及効果が考えられます。
これについてまとめます。

<解釈論の拡がり|ゲリラ性の促進効果>

あ 7月事務連絡×解釈論としての特徴

一定範囲で『業』への該当性を否定した

い 解釈論|可能性・拡がり

地方自治体の『要請』は『法律上の要件』ではない
地方自治体の関与なくても『業ではない』と判断しやすくなった

う 拡張的解釈論|具体例

ア 1年間で1グループの宿泊受け入れであれば許可不要
イ ホテル・旅館の空きが少ない状況であれば許可不要
※多少大げさな解釈論である=裁判所は採用しない可能性が高い

え 解釈論×検挙の現実的可能性

ア 現状=ゲリラ性
宿泊提供者と捜査機関の『量』のバランスが崩れている
→調査・捜査・検挙が追いつかない
詳しくはこちら|旅館業法|無許可営業×調査・検挙ハードル|判断が不明確となる具体例
イ 加速
7月事務連絡により『適法という主張の根拠』が1つ増えた
捜査・検挙には大きなブレーキとなる