【旅館業法|無許可営業×調査・検挙ハードル|判断が不明確となる具体例】

1 旅館業法違反×検挙ハードル|福岡市議会|引用
2 シェアリング×調査・検挙ハードル|要因・概要
3 旅館業×行政の調査権限・協力義務|概要
4 旅館業×行政調査・行政処分|対象者
5 旅館業×無許可営業|検挙ハードル
6 旅館業|該当性判断・不明確|具体例
7 旅館業|該当性判断・不明確|マッチング|具体例
8 違法民泊サービス×検挙例
9 検挙ハードル→無許可強化現象

1 旅館業法違反×検挙ハードル|福岡市議会|引用

旅館業法の無許可営業への調査・検挙は大きなハードルがあります。
いわゆるヤミ民泊の検挙として社会問題化しているテーマです。
本記事では旅館業法無許可営業の検挙のハードルを説明します。
まずは,このことを指摘した公的なコメントを紹介します。

<旅館業法違反×検挙ハードル|福岡市議会|引用>

(民泊のマッチングサービスについて)
このようなサイトでは、実際に予約した者でなければ、宿泊場所の住所やこれを提供する者の連絡先がわからない仕組みとなっております。
このことから、宿泊場所の提供者が旅館業法の許可を受けているかについて確認することが困難であるなどの問題点がございます。
※平成27年7月3日予算特別委員会・保健衛生課長発言

2 シェアリング×調査・検挙ハードル|要因・概要

検挙ハードルは『シェアリングサービス』に共通しています。
その要因の概要をまとめます。

<シェアリング×調査・検挙ハードル|要因・概要>

あ トリプル要因スパイラル

主に『い〜え』の3つの要因が相互に作用する
→調査・検挙のハードルが高くなってしまっている

い 事実把握|調査リソース不足

調査対象者の数が非常に多い
→調査する人員・設備が不足する

う 事実把握|調査権限

無許可サービスへの調査権限が小さい
いわゆる『非公認強化現象』の1つである

え 解釈論=違法の確実性の要求

違法という判断に曖昧な部分がある
さらに『曖昧さ』に便乗する者も多い
詳しくはこちら|シェアリング|ゲリラマーケット|調査・検挙ハードル|優先順序・実態

空部屋シェアが旅館業法違反となるケースでもこれらに当てはまります。
次に,旅館業法違反に関する検挙ハードルの内容を説明します。

3 旅館業×行政の調査権限・協力義務|概要

旅館業法では行政の調査権限が定められています。
調査権限や事業者の協力義務の概要をまとめます。

<旅館業×行政の調査権限・協力義務|概要>

あ 行政の調査権限

行政庁は次の調査権限がある
ア 営業施設への立入調査イ 書類検査

い 調査する行政庁

通常は保健所である

う 営業者の協力義務

ア 刑事責任=罰則イ 行政責任=営業許可取消・営業停止処分(※1) 詳しくはこちら|旅館業法|行政処分|調査権限・適合措置命令・営業停止・許可取消

問題となるのは『調査の対象者=協力義務のある者』です。
次に説明します。

4 旅館業×行政調査・行政処分|対象者

行政による『調査権限・協力義務』は対象者が限定されています。
これについてまとめます。

<旅館業×行政調査・行政処分|対象者>

あ 罰則・行政処分の対象者

行政の調査を拒否すると罰則・行政処分がある(上記※1)
罰則・行政処分の対象者は『営業者』である

い 『営業者』定義

営業許可を受けて旅館業を営業する者
※旅館業法3条の2

う 行政調査・行政処分×対象者

ア 許可業者 行政調査・行政処分の対象となる
イ 無許可業者 行政調査・行政処分の対象とならない
許可がないので『取り上げる』ことができない
→許可取消をできるはずがない

無許可の事業者に対しては保健所は調査しにくいのです。

5 旅館業×無許可営業|検挙ハードル

無許可営業は刑事罰の対象となっています。
理論的に『責任追及』の対象となります。
しかし『検挙』についてはハードルがあります。

<旅館業×無許可営業|検挙ハードル>

あ 無許可営業×刑事責任|概要

無許可営業として罰則の対象となる
法定刑=懲役6か月以下or罰金3万円以下
※旅館業法10条1項

い 刑事責任×捜査ハードル|一般|概要

捜査は大きな制限・高い精度の要求がある(※3)

う 旅館業無許可営業×捜査ハードル

『旅館業』に該当することが前提である
→『旅館業』の該当性判断が不明確なところもある(※2)
→捜査の遂行には大きなハードルとなる

『旅館業』の判断には明確ではないところがあります。
解釈の中にいくつか『幅のある』事項があるのです。
詳しくはこちら|『旅館業』の定義・解釈|全体|4つのカテゴリ・共通部分

6 旅館業|該当性判断・不明確|具体例

現実の調査のシーンで旅館業該当性が曖昧になる典型を紹介します。

<旅館業|該当性判断・不明確|具体例(上記※2)>

あ 違法性の判断

『ネットで知り合った友達を泊めているだけだ』と言われた場合
→違法(反復継続の意思・事業性)と断言しにくくなる

い 誰がホストをしているのかという実態把握

『建物所有者』と『ホスト=違法行為者』が別ということもある
所有者が『ホストを明かさない』場合は犯人隠避罪の可能性もある
→これ自体の立証・立件のハードルも高い

7 旅館業|該当性判断・不明確|マッチング|具体例

民泊のマッチングサービスに対する調査・捜査も考えられます。
これについても高いハードルがあります。

<旅館業|該当性判断・不明確|マッチング|具体例>

あ 一般論

マッチングサービス運営者について
→旅館業法違反の幇助犯の可能性が考えられる

い 個別事情|例

『違法行為の禁止』をユーザーに警告している場合
ユーザー=ホスト・宿泊者
→『違法』という判断のハードルが高い
詳しくはこちら|シェアリング|リアルサービス|適法性の確保方法|利用規約・説明文

8 違法民泊サービス×検挙例

以上のように違法民泊サービスの検挙ハードルは高いです。
それでも実際に検挙されているケースもあります。
規模が大きいとか,悪質な場合が検挙に至っています。
実例については別記事で説明しています。
詳しくはこちら|違法民泊サービス×検挙例|旅館業法違反|東京都足立区・京都・大阪

9 検挙ハードル→無許可強化現象

以上の問題は旅館業法だけのテーマではありません。
シェアリングサービスに共通する問題です。
許可を受けた適法なサービスは各種の監督・規制を受けます。
一方,無許可業者は『業法上の監督』を受けません。
刑事的な捜査の対象になりますが,ハードルが高いです(上記※1)。
結局『無許可業者』の方が普及する現象が生じることがあるのです。
『無許可』の方が『強化される・助長してしまう』現象と言えます。
これについては別に説明しています。
詳しくはこちら|無許可業者強化現象|行政調査権限対象外×刑事的検挙ハードル

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【衛生管理要領|改正・変更点|客室幅員・床面積・一般的緩和措置】
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