【衛生管理要領|改正の履歴|平成28年改正の3点はいまどうなっているか】

1 衛生管理要領は、発出後に何度も上書きされている

旅館業の施設に何が必要かは、旅館業法と施行令・施行規則のほかに、厚生労働省の通達である「旅館業における衛生等管理要領」が具体化しています。この要領は一度作られて終わりではなく、発出後に何度も一部改正されています。

この記事はもともと、平成28年4月に行われた改正の内容を説明するものでした。その改正を行った平成28年3月30日生食発0330第5号は、いまの要領の冒頭にも一部改正として列記されています。ただし当時の要領の本文は当方で取得できていないため、「改正前はこうだった」という形では書けません。以下は、当時の改正点として挙げられていた3つが、令和8年1月20日付の改正を経た現在の要領でどうなっているかです。

2 改正の履歴——平成12年の発出から、直近は令和8年1月20日

現在の要領は、平成12年12月15日の通知に添えられたものを出発点として、11回の一部改正を経ています。平成28年3月30日の改正はそのうちの2回目で、そのあとにも9回の改正が重ねられています。平成28年当時の解説が現在もそのまま通用するとは限らないのは、このためです。

引用:文献・公開情報

平成12年に発出され、11回の一部改正を経ている

公衆浴場における衛生等管理要領等について
平成 12 年 12 月 15 日 生衛発第 1,811 号
各都道府県知事・各政令市市長・各特別区区長宛
厚生省生活衛生局長通知
平成 15 年2月 14 日健発第 0214004 号 一部改正
平成 28 年3月 30 日生食発 0330 第5号 一部改正
平成 29 年 12 月 15 日生食発 1215 第2号 一部改正
平成 30 年1月 31 日生食発 0131 第2号 一部改正
令和元年9月 19 日生食発 0919 第8号 一部改正
令和2年 12 月 10 日生食発 1210 第1号 一部改正
令和5年 11 月 15 日健生発 1115 第5号 一部改正
令和6年 12 月 18 日健生発 1218 第2号 一部改正
令和7年3月 11 日健生発 0311 第1号 一部改正
令和7年 12 月 23 日健生発 1223 第3号 一部改正
令和8年1月 20 日健生発 0120 第 48 号 一部改正

※『公衆浴場における衛生等管理要領等について』厚生労働省p1

3 フロントの要否——平成28年改正の中心だったもの

平成28年改正で最も大きかったのは、簡易宿所営業について玄関帳場(フロント)を設けなくてよい場合を定めたことです。この点は現在の要領にも引き継がれていますが、要件の中身は当時の説明から変わっています。いま何が要るかは、別の記事で説明しています。

簡易宿所営業×フロントの要否|基本|いま何が要るか

4 客室の幅員の数値基準は、いまの要領にない

当時の説明では、客室の幅について「2メートル以上を有すること」が「2メートル以上を有することが望ましい」へ改められた、とされていました。現在の要領に、幅についての数値の基準はありません。要領の全文で「幅」に触れているのは2か所だけで、どちらも「適当な幅」という定性的な書き方です(旅館・ホテル営業の廊下・階段と、簡易宿所営業の廊下・通路)。

引用:文献・公開情報

廊下・通路の幅は「適当な幅」とだけ定められている

3 廊下及び階層式寝台を置く客室の通路は、適当な幅を有すること。

※『公衆浴場における衛生等管理要領等について』厚生労働省p39

5 1客室あたりの床面積の基準も、いまの要領にない——残っているのは延床面積

当時の説明では、1つの客室の床面積について「おおむね4.8平方メートル以上」「7平方メートル以上が望ましい」とされていました。現在の要領に、1客室あたりの床面積の基準はありません。簡易宿所営業の客室について要領が置いている要件は6つあり、面積に関わるのは延床面積(33平方メートル。ただし宿泊者の数を10人未満として申請する場合は3.3平方メートルに人数を乗じた面積)と、収容定員に応じて十分な広さを有することの2つです。

延床面積の基準そのものは、別の記事で説明しています。

平成28年4月改正施行令・通達|基本|簡易宿所・延床面積基準緩和

引用:文献・公開情報

簡易宿所営業の客室——面積に関わるのは延床面積と「十分な広さ」

1 客室は、次の要件を満たす構造設備であること。
(1) 客室の延床面積は、33 ㎡(旅館業法第3条第1項の許可の申請に当たって宿泊者の数を 10 人未満とする場合には、3.3 ㎡に当該宿泊者の数を乗じて得た面積)以上であること。
(2) 客室は、収容定員に応じて十分な広さを有していること。

※『公衆浴場における衛生等管理要領等について』厚生労働省p37〜38

6 宿泊者10人未満の施設への一般的な緩和措置は残っている

宿泊者の数を10人未満として申請された簡易宿所営業の施設について、公衆衛生上支障がないと認められる範囲で基準の一部を緩和し、または適用しないことができるという定めは、現在の要領にも残っています。当時の説明が指していた項番は変わっており、いまは施設についての衛生に必要な措置の基準の末尾に置かれています。

引用:文献・公開情報

10人未満の施設は基準の一部を緩和できる

29 簡易宿所営業のうち、宿泊者の数を 10 人未満として申請がなされた施設の場合については、 旅館業法第3条の5第2項や第4条の2第1項等の法令や指針で定めるものを除き、 公衆衛生上支障がないと認められる範囲で、この基準の一部を緩和し、若しくは適用しないことができるものとする。

※『公衆浴場における衛生等管理要領等について』厚生労働省p51

本記事は一般的な説明です。個別の事案にそのまま当てはまるとは限らず、一見似ている事案でも、事情が異なれば結論は異なります。個別的事情により、法的判断や主張として活かす方法、最適な対応方法は違ってきます。本記事でご説明したものと同様の問題に直面されている方は、みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。

本記事の引用は、書籍・判例などの原文から範囲を選んで載せたものです。改行の位置は読みやすさのために当方で整えており、原文の改行と同じとは限りません。また、記号や外字の扱いにより、文字の一部が原文と異なって表示されることがあります。

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