【メール×証拠|成立の真正|立証方法・典型例・不当に争う→不利益】

1 アナログ/デジタル文書×成立の真正=本人の意思
2 デジタル文書×成立の真正|実務|相手の同意が多い
3 デジタル証拠×成立の真正|立証方法・典型例
4 文書の成立の真正|不当に争う×不利益|基本
5 文書の成立の真正|不当に争う×不利益|具体的内容
6 デジタル証拠×改竄可能性|証拠評価|事案
7 デジタル証拠×改竄可能性|証拠評価|裁判所の判断

1 アナログ/デジタル文書×成立の真正=本人の意思

民事訴訟における証拠の中で『文書』は重要性・使用頻度が特に高いです。
証拠として使うための前提条件があります。
『デジタル証拠』も含めて整理します。

<アナログ/デジタル文書×成立の真正=本人の意思>

あ 成立の真正|共通

民事訴訟で文書を証拠にする場合
→『成立の真正』の証明が必要
=『本人の意思』で作成された,ということ
※民事訴訟法228条

い アナログ文書

署名・押印により『成立の真正』が推定される
※民事訴訟法228条
(別記事『2段の推定』;リンクは末尾に表示)

う デジタル文書

原則的に『推定』は適用されない
『電子署名』で信用性を高める工夫があり得る
ただし現行法では『法律上の推定』は適用されない
典型例=メール
(別記事『メール・証拠方法』;リンクは末尾に表示)

メールは紙媒体の『文書』とは同じ扱いにはなりません。
(別記事『デジタル証拠・特性』;リンクは末尾に表示)
とは言っても『証拠として認められない』ということはありません。
『成立の真正』を証明する必要がある,ということです。

2 デジタル文書×成立の真正|実務|相手の同意が多い

デジタル証拠の『成立の真正』の実務的な対応をまとめます。

<デジタル文書×成立の真正|実務的対応>

あ 相手が『成立の真正』を争わない場合

『成立の真正』の立証は不要となる
実務上は『成立の真正を争わない』ケースがとても多い
不当に『成立の真正を争った』場合には一定のペナルティがある(後記)

い 相手が『成立の真正』を争う場合

証拠申出をする側が『成立の真正』を争う必要がある

3 デジタル証拠×成立の真正|立証方法・典型例

デジタル証拠の『成立の真正』を立証する方法の具体例をまとめます。

<デジタル証拠×成立の真正|立証方法・典型例>

あ 人証

メールの受信者・発信者の証人尋問・当事者尋問

い 客観的資料・情報|例

通信記録をプロバイダーから取り寄せる
→メールのヘッダ情報との整合性を主張する

う 通信記録取得×注意点

一般的にプロバイダー・通信キャリアーの記録保管期間は短い
数か月〜6か月程度ということが多い
詳しくはこちら|発信者情報開示請求|具体的手続|開示・消去禁止×仮処分・本訴

4 文書の成立の真正|不当に争う×不利益|基本

『文書の成立の真正』を認めると相手の立証のハードルが下がります。
そこで特に理由なく『認めない』作戦が考えられます。
しかしこの場合,一定の不利益が生じることがあります。

<文書の成立の真正|不当に争う×不利益|基本>

あ 前提事情

原告Aが『被告Bが作成・送信したメール』を証拠申請した

い ありがちな発想

メールを提出『された側=B』の立場
→すべてについて『成立の真正』を否定するという発想
→否定されるとAは『成立の真正の立証』ハードルが課される

い 成立の真正を否定する|Bの具体的主張例

『そのメールは私Bが送信したものではない』
『そのメールはAが捏造したものである』

う 虚偽の『成立の真正の否定』×不利益

後から『成立の真正』が立証された場合
→Bの『捏造された』という主張の方が虚偽であったことになる
→次の2つの不利益が生じる

具体的な不利益の内容は次に説明します。

5 文書の成立の真正|不当に争う×不利益|具体的内容

文書の成立の真正を不当に争った場合の不利益の内容をまとめます。

<文書の成立の真正|不当に争う×不利益|具体的内容>

あ 前提事情

被告Bが『A提出のメールは捏造である』と虚偽の主張をした
(前提事情は前述と同様である)

い 不利益|信用性失墜

Bが『虚偽の主張をした』ことが判明する
→Bの主張・立証の全体の信用性が落ちる

う 不利益|訴訟法上のペナルティ

ア 過料の規定 『故意or重過失によって文書の成立の真正を争った』場合
→過料10万円以下
イ 撤回による過料取消 『争う』主張を撤回した場合
→過料も取消となることがある
※民事訴訟法230条

6 デジタル証拠×改竄可能性|証拠評価|事案

デジタル証拠でも『証拠能力』をクリアすれば証拠として認められます。
実際の訴訟でも頻繁に証拠として使われています。
ただし『証拠にできること』とは別に『証拠力=証拠評価』の問題があります。
まずは判例となった事案を紹介します。

<デジタル証拠×改竄可能性|証拠評価|事案>

あ 事案

出版社=被告の週刊誌に次の内容の記事が掲載された
『大学教授=原告が学生に対してセクハラをした』
大学教授が出版社に対して損害賠償を請求した

い 証拠提出

別の教授Bの陳述書が提出された
陳述書には次の資料が添付されていた
『被害学生発信とされるメールのプリントアウト』

う 争点

メール内容の信用性
→裁判所が判断することとなった
※大阪高裁平成21年5月15日

証拠の評価に関しては次に説明します。

7 デジタル証拠×改竄可能性|証拠評価|裁判所の判断

前記の判例事案について裁判所は証拠評価の基準を立てました。
これについてまとめます。

<デジタル証拠×改竄可能性|証拠評価|裁判所の判断>

あ 電子記録×証拠評価|基準

証拠採用するためには次の2点の立証が必要である

い 電子記録×証拠採用|前提事情

ア 作成者本人により作成されたことイ 作成後に改ざんされていないこと

う 前提事情の立証方法

ア 作成者の尋問イ 客観的な改竄防止措置 例;ハッシュ関数などを用いた暗号化
※大阪高裁平成21年5月15日

メールなどのデジタル証拠は『肉筆がない』という特徴があります。
『書いてない』という人に対して『それはウソ・書いたのだ』と認める状況です。
当然,一定のハードルがあるのです。

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【借地の範囲|明確性・特定方法・解決手続|1筆の一部→曖昧になりがち】
【メール×証拠方法|書証・準書証・検証・鑑定|削除済み→再現】

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