【『旅館業』の定義・解釈|人を宿泊させる営業|基本】

1 旅館業×『宿泊』|定義・概要
2 人を宿泊させる営業|解釈|通達|基本
3 人を宿泊させる営業|解釈|通達|補足
4 衛生管理責任
5 生活の本拠
6 人を宿泊させる営業×1か月基準
7 主要な要素による基準|賃貸借との比較の視点
8 通達の全文引用

1 旅館業×『宿泊』|定義・概要

旅館業の定義の中に『人を宿泊させる営業』があります。
本記事ではこの要件の解釈を説明します。
まずは基本的事項をまとめます。

<旅館業×『宿泊』|定義・概要>

あ 旅館業・定義×宿泊

『旅館業』の定義の中に『宿泊させる営業』という要件がある
詳しくはこちら|『旅館業』の定義・解釈|全体|4つのカテゴリ・共通部分

い 『宿泊』の定義

寝具を使用して施設を利用すること
※旅館業法2条6項

う 『寝具を使用』|解釈

ユーザーの持ち込み,も含めて解釈される
※保健所ウェブサイトなど
外部サイト|東京都西多摩保健所|旅館業のてびき

え 参考|寝具設置義務×条例

『寝具設置』を義務付ける条例が多い
詳しくはこちら|衛生措置義務|標準的内容|衛生管理要領・条例の規定内容
→これは『旅館業』該当性判断とは別の事項である

ところで一般的な賃貸マンションは当然『旅館業』に該当しません。
『寝具』を貸主が用意した『旅館業』だという感覚もあります。
しかし『寝具を用意したのがどちらか』では判別できません。
この解釈を示す通達があります。
次に説明します。

2 人を宿泊させる営業|解釈|通達|基本

『人を宿泊させる営業』の解釈を示す通達の内容をまとめます。

<人を宿泊させる営業|解釈|通達|基本>

あ 基本

次の2つに該当する営業形態である場合
→『人を宿泊させる営業』に該当する

い 判断基準|概要

ア 衛生管理責任が営業者にある(※1)イ 宿泊者の生活の本拠がないことを原則とする(※2) ※昭和61年3月31日厚生省指導課長通知(後記※3

3 人を宿泊させる営業|解釈|通達|補足

前記の解釈について,補足的な内容をまとめます。

<人を宿泊させる営業|解釈|通達|補足>

あ 判断基準|補足

旅館業法の目的に照らし,総合的に判断する
例;公衆衛生など
※昭和63年1月29日厚生省生活衛生局指導課長通知

い 該当しない・典型例

一般的な賃貸アパート・間貸しとは異なる
※昭和61年3月31日厚生省指導課長通知(後記※3

4 衛生管理責任

判断基準の1つである『衛生管理責任』の内容をまとめます。

<衛生管理責任(上記※1)>

あ 旅館業|判断要件

施設の衛生上の維持管理責任が営業者にある
詳しくはこちら|衛生措置義務|基本|法律の委任・違反へのペナルティ
→旅館業に該当する要件の1つである

い 判断基準|補足

宿泊者のいる部屋を含める
施設の管理・経営形態を総体的にみる

う 一般的賃貸借との区別

室内の管理が借主に全面的に委ねられている場合
→旅館業には該当しない
例;間貸し・一般的な賃貸借
※昭和61年3月31日厚生省指導課長通知(後記※3

5 生活の本拠

『生活の本拠』も判断基準の1つとなっています。
この内容をまとめます。

<生活の本拠(上記※2)>

あ 旅館業×社会性

旅館業は営業施設が『社会性を有する』ことが予定されている
=一般大衆に利用される

い 社会性×生活の本拠

宿泊者に生活の本拠を与える場合
→個々人の生活の集積に過ぎない
例;賃貸アパート
→旅館業に該当しない
※昭和61年3月31日厚生省指導課長通知(後記※3

6 人を宿泊させる営業×1か月基準

以上のように『人を宿泊させる営業』の判断基準は複雑です。
これについて一気に簡略化した目安があります。
滞在期間1か月を基準とするものです。
これについては別に説明しています。
詳しくはこちら|人を宿泊させる営業×1か月基準|公的判断|ホテル住まい

7 主要な要素による基準|賃貸借との比較の視点

上記の『1か月基準』は簡略化し過ぎとも言えます。
つまり『期間』以外の要素を排除しているからです。
一方『一般的な賃貸借』との比較という視点でも検討できます。
『期間』も含めた主要な要素を整理しています。
これは別に説明しています。
詳しくはこちら|賃貸借/宿泊サービス|判断|基準類似・結果連動

8 通達の全文引用

以上で説明した通達の内容を引用しておきます。

<昭和61年通達の全文引用(※3)

○下宿営業の範囲について
(昭和六一年三月三一日)
(衛指第四四号)
(各都道府県各政令市・各特別区衛生主管部(局)長あて厚生省生活衛生局指導課長通知)
旅館業法(昭和二三年法律第一三八号。以下『法』という。)第二条第五項に規定する『下宿営業』については、昭和三二年八月三日衛発第六四九号公衆衛生局長通知第一(四)により、『なお、いわゆるアパート、間貸し等のように一時的又は比較的短期間の止宿のための施設と通常目されないものは法第二条第五項の下宿には該当しないものであること』として、下宿営業に該当するか否かの判断についての例示がなされている。しかしながら、これまでの運用において下宿営業と貸室業との区別が必ずしも十分ではなかつたため、本来下宿営業の許可の対象とならない施設についても許可が求められている事例も見受けられるとの指摘がなされている。
『下宿営業』とは、法第二条第五項に定義するとおり、『人を宿泊させる営業』であつて、一月以上の期間を単位とする宿泊料を受けるものをいうが、『人を宿泊させる営業』という旅館業の営業の本質においては、他の旅館業の営業と相違はないものである。
ここで、『人を宿泊させる営業』とは、アパート、間貸し等の貸室業との関連でみると、
一 施設の管理・経営形態を総体的にみて、宿泊者のいる部屋を含め施設の衛生上の維持管理責任が営業者にあると社会通念上認められること。
二 施設を利用する宿泊者がその宿泊する部屋に生活の本拠を有さないことを原則として、営業しているものであること。
二点を条件として有するものであり、これは下宿営業についても同様である。このような観点からみると、例えば、いわゆる学生下宿は、部屋の管理が専ら学生に委ねられており、しかも、学生がそこに生活の本拠を置くことを予定していることから、営業の許可の対象とはならないものである。
今後とも、以上の観点から、許可の要否につき判断されたい。
(付記)
一について
法は、営業者がその営業施設の構造設備についてのみならず、施設の管理面についても責任を負うことを前提として必要な規制を行つている。このため、法第四条は、営業者に宿泊者の衛生に必要な措置を講じることを義務づけており、施設についての衛生上の維持管理は営業者において行うことを予定している。この点において、室内の管理が間借り人に全面的に委ねられている間貸し等と根本的に異なるのである。
二について
旅館業においては、その営業施設が社会性を有する形で、一般大衆に利用されるものであるからこそ、公衆衛生又は善良の風俗の維持の観点から必要な規制を行うのである。従つて、宿泊者に生活の本拠を与えることを予定したアパートのような形の営業形態は、個々人の生活の集積に過ぎず、少なくとも現行の旅館業法による規制は予定しないものである。
なお、いわゆる『ホテル住まい』として、他に生活の本拠を有さない者が、長期間ホテル等に滞在する場合等においては、その者は、そこに生活の本拠があると認められることもあろうが、営業全体としてはそうした形態を予定していない場合、当然、前記二に該当することとなる。

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【下宿営業|定義・解釈|一般用語との違い】
【人を宿泊させる営業×1か月基準|公的判断|ホテル住まい】

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