1 通達|意味・基本|行政内部ルール
2 通達|種類・ネーミング
3 通達×裁判所への影響・拘束力
4 通達×裁判所の判断|ハードル|概要
5 行政×公開情報・非公式|ガイドライン・手引き系
1 通達|意味・基本|行政内部ルール
『通達』は多くの場面で使われています。
この法的な位置付け・性格はちょっと複雑です。
まずは通達の基本的事項をまとめます。
<通達|意味・基本>
あ 通達|法的性格・内容
行政機関内部の文書である
上級機関が下級機関に対して法令の解釈などを示す
統一的な解釈を図る目的である
※国家行政組織法14条2項
い 『内部』という性格
本質的には『行政組織の外部』に示すものではない
官報公告の対象ではない
国民・裁判所を拘束しない(後記)
う 現実的な位置付け
実際には国民・企業への事実上の影響が大きい(後記)
→Webサイトなどで公表されるものも多い
え 種類・ネーミング
法律上は『訓令』『通達』が規定されている
※国家行政組織法14条2項
実際には他のネーミングもある(後記)
2 通達|種類・ネーミング
『通達』にはいくつかの種類があります。
<通達|種類・ネーミング>
種類 | 性格 | 発信者・宛名の記載 |
通達(狭義) | 命令的 | あり |
通知 | 助言的 | あり |
事務連絡 | 簡略的 | なし |
現実には状況によって『通達』という用語は違う意味で使われます。
本記事ではごく一般的な呼称・用法として説明しています。
3 通達×裁判所への影響・拘束力
通達が裁判所を拘束するかどうかが問題となります。
<通達×裁判所への影響・拘束力>
裁判所は通達に拘束されない
裁判所は,通達による解釈とは異なる独自の解釈ができる
※憲法81条,前文
※最高裁昭和43年12月24日
当然ではありますが,裁判所の判断の方が優先です。
これは『法の支配』という憲法の基本原理そのものです。
4 通達×裁判所の判断|ハードル|概要
通達よりも裁判所の判断の方が優先です(前記)。
しかし,現実的には大きなハードルがあります。
<通達×裁判所の判断|ハードル|概要>
あ 基本的事項
通達の有効性を裁判所が判断するにはハードルがある
い 処分性の要件
通達そのものは『処分』には該当しない
→行政訴訟の対象にはならない
ただし,例外として認められる傾向もある
詳しくはこちら|処分性|名宛人なしの行為|法的根拠のない行為|通達・告示・条例制定
う コスト・ブロック現象
行政訴訟提起・遂行は大きなコストを要する
詳しくはこちら|行政の肥大化・官僚統治|コスト・ブロック現象|小規模事業・大企業
5 行政×公開情報・非公式|ガイドライン・手引き系
行政が公表するルールはほかにもあります。
非公式なものをまとめます。
<行政×公開情報・非公式>
あ 非公式な公開情報|概要
行政が国民・企業に対してルールを公開する
法令(上記)としての正式なものではない
い 非公式な公開情報|種類
ア 綱領・要綱
イ ガイドライン
ウ ◯◯の手引き
う 非公式・個別伝達=行政指導
行政が特定の個人・企業に対して伝達・助言する
法的拘束力はない
詳しくはこちら|グレーゾーンはベンチャーの聖域|濃いグレー・薄いグレー|大企業バリアー