1 合意による所有権移転×無権利|基本
2 即時取得|要件
3 即時取得|効果
4 即時取得|被害者の回復請求
5 回復請求|販売業者経由→有償
6 回復請求|古物商・質屋→無償
7 回復請求|有償/無償ルール|理由

1 合意による所有権移転×無権利|基本

所有権移転には『即時取得』というイレギュラーな方式があります。
本記事では即時取得について説明します。
まずはノーマルな状態での『所有権移転』についてまとめます。

<合意による所有権移転×無権利|基本>

あ 合意による所有権移転|基本

合意により所有権が移転する
例;売買契約・贈与契約
※民法550条,555条

い 所有権移転|メカニズム

『譲渡人』が『所有権』を有していた
合意により『譲渡人』から『譲受人』に移転する

う 無権利×移転

『譲渡人』が所有権を有していなかった場合
→『譲受人』は所有権を得られない

『無権利』の者から権利を受け取ることはできないのです。
この当たり前のようなことには例外があります。
それが『即時取得』なのです。

2 即時取得|要件

『即時取得』の要件を整理します。
なお『善意取得』と呼ばれることもあります。

<即時取得|要件>

あ 基本的事項

次の『い〜え』のいずれにも該当する場合
→即時取得が成立する(※1)

い 『取引』がある

例;売買・贈与など

う 占有

平穏・公然と動産の占有を始めた

え 善意・無過失

次の両方に該当する
ア 善意
占有取得者が『所有権がない』ことを知らない
イ 無過失
知らないことに過失がない

取得した人が,盗品や遺失物だとは知らないことが前提です。
さらに『分かるような状況』でもなかったことが必要です。

3 即時取得|効果

即時取得が成立したらどうなるか,についてまとめます。

<即時取得|効果(上記※1)>

あ 直接的効果

占有取得者が『所有権』を取得する

い 反射的効果

元の所有者は『所有権』を失う
→『返還請求』もできない
※民法192条

4 即時取得|被害者の回復請求

即時取得が成立する場合『元の所有者』は対象物を失います。
『返還請求』できなくなるのです。
これに対する例外があります。
『元の所有者』の救済措置です。

<即時取得|被害者の回復請求>

あ 要件|占有喪失原因

所有者が『盗難or遺失』によって占有を失った

い 期間制限

盗難or遺失から2年間以内

う 効果

所有者が占有者に対して回復請求をすることができる
=返還を請求できる
※民法193条

5 回復請求|販売業者経由→有償

回復請求の制度で『元の所有者』は保護されます。
対象物が戻ってくるということです。
しかし,代わりに『代金』を支払う義務が生じることもあります。

<回復請求|販売業者経由→有償>

あ 前提事情

占有者が対象物を次のルートで入手した
ア 競売or公の市場でor販売業者から
イ 善意で買い受けた
『売主が無権利であること』を知らなかった

い 効果|有償

回復請求は有償となる
=代金支払が必要である

う 支払金額

占有者が購入した代金と同額
※民法194条

6 回復請求|古物商・質屋→無償

回復請求が『有償』となる例外があります(前記)。
これに対する例外もあります。

<回復請求|古物商・質屋→無償>

あ 前提事情

次の両方に該当する
ア 占有者が『古物商or質屋』である
イ 回復請求の時期が盗難or遺失から1年以内である

い 効果

回復請求は無償となる
=代金支払は不要である
※古物営業法20条
※質屋営業法22条

7 回復請求|有償/無償ルール|理由

以上の説明のように回復請求は『有償・無償』の両方があります。
このようなルールの趣旨・理由を整理します。

<回復請求|有償/無償ルール|理由>

あ 占有者の保護

占有者が代金を払って購入した場合
→無償で所有者に返すと代金が無駄になる
→占有者を保護するべきである
→『代金分の金銭』を所有者からもらえるようにした

い 所有者の負担

所有者は『現物が戻る』意味で保護されている
遺失したor盗難されたことの落ち度がある
→代金分の支払を負担することはやむを得ない

う 古物商・質屋の特殊性

古物商・質屋には盗品・遺失物が持ち込まれるリスクが高い
→業法上,一定の義務が課されている
例;顧客の本人確認
→盗品・遺失物と見抜けなかった落ち度がある
→一定の負担が生じることはやむを得ない
→無償での返還に応じるべきである