1 再販制度は,自由市場経済の原則論としては違法
2 再販制度の誕生経緯,根拠は不明である
3 公正取引委員会の見解|違法認定される方向性がある
4 書籍の『ポイント還元』促進→適法方向|Amazonポイント
5 公取見解から10年以上が経過→根拠が薄くなっている
6 大学生協での割引|独占禁止法上除外されている

1 再販制度は,自由市場経済の原則論としては違法

書籍,雑誌についての再販制度について説明します。
『再販売価格維持制度』ということもありますが,ここでは『再販制度』という表記に統一します。

<書籍・雑誌の『再販制度』>

あ 再販制度|概要

『出版社が定価を決める』制度

い 具体的な内容

出版社と書店の間で販売価格を合意する
販売価格=『エンドユーザー=一般の読者』に販売する価格

外部サイト|一般社団法人 日本書籍出版協会|書籍・雑誌の『再販制度』(定価販売制度)とは?

(1)需要と供給による自由市場が重要

販売価格を固定化することは,経済的にユーザーである国民の利益を害します。
マーケット・メカニズムによる自由競争が阻害されます。
そうすると,経済の最適化という機能が稼働しなくなります。
販売価格が高くなり,消費者が損失を受けます。
また,販売する者の『経済活動の自由』を害します。
そのため『価格協定=カルテル』は,法的に規制されています。
詳しくはこちら|マーケットメカニズムの基本|自由経済・商品流通の最適化・供給者の新陳代謝
詳しくはこちら|公定価格=公認カルテル|信書・書籍・タクシー・医療サービス|士業は撤廃済

(2)例外として再販制度が認められている

一般的に,『自由』な競争だと『公正』にならない,というものもあります。
そこで,独占禁止法の『価格協定の禁止』には例外もあります。
『再販制度』は,価格協定の禁止の例外の1つです(独占禁止法23条1項)。

2 再販制度の誕生経緯,根拠は不明である

昭和28年に独占禁止法により再販制度が誕生しました。
現在では,この当時の制度の趣旨,理由が定かではありません。

後付けでいろいろな解釈が加えられている。
平成13年に再販制度について,公正取引委員会が調査を行っています。
この中で『再販制度の維持を求める意見』としてまとめられています。
これを紹介します。

<平成13年の公正取引委員会の調査結果の一部;引用>

ア 書籍・雑誌
再販制度の維持を求める意見としては,文化商品である本について経済効率の面から流通制度を考えることは不適当である,再販制度が廃止されると価格競争が激化して,書店の品揃えは売れ筋のみに偏り,出版社は売れ筋のみを発行するようになる,また,地域の最寄り書店が淘汰されたり,書店間の価格差が発生する結果,特に地方 の消費者,高齢者,児童等に不利益を与えるなどの指摘が寄せられている。
※『「著作物再販制度の取扱いについて』平成13年3月23日公正取引委員会

これから再販制度の趣旨,存在意義をまとめます。

<書籍,雑誌の再販制度の趣旨のまとめ>

あ 出版社,書店の経営維持←情報流通手段の確保

自由競争で価格が下がる
→出版社,書店の経営が維持できない
→消費者が書籍を入手できなくなる

い 書店の確保

自由競争だと売れ筋の書籍だけを書店が扱うようになる
→マイナーだけど価値のある書籍が棚争奪戦に負ける
→消費者が価値のある書籍を入手できなくなる

3 公正取引委員会の見解|違法認定される方向性がある

平成13年の公正取引委員会の調査結果の見解として,再販制度は維持する,ということになっています。
概要を簡単にまとめます。

<平成13年の公正取引委員会の調査結果としての判断>

あ 原則論

『競争政策の観点からは同制度を廃止し,著作物の流通において競争が促進されるべきであると考える。』

い 許容性

書店において『ポイントカード制』が実施され,事実上の減額価格の設定が行なわれている。(※1)

う 必要性

同制度が廃止されると,書籍・雑誌の発行企画の多様性が失われる。

え 結論

同制度の廃止について国民的合意が形成されるに至っていない状況にある。

再販制度維持

許容性のところは抜粋して引用しておきます。

再販制度維持の許容性>

※平成13年公正取引委員会調査結果より引用
『公正取引委員会は,現行制度の下で可能な限り運用の弾力化等の取組が進められることによって,消費者利益の向上が図られるよう,関係業界に対し,非再販商品の発行・流通の拡大,各種割引制度の導入等による価格設定の多様化等の方策を一層推進することを提案し,その実施を要請する。』

4 書籍の『ポイント還元』促進→適法方向|Amazonポイント

前記の公正取引委員会の見解は重要なコメントが含まれています。
最後の再販制度維持の許容性のところです(『お』)。

既に行なわれていた『ポイントカード制』,つまり,ポイント還元減額(値引き)を推奨,促進しているのです。
逆にこのような自主的価格設定の自由がないと再販価格制度の適法性が維持できない,ということです。

つまり一定の割合や金額のディスカウントを認めない,ということの合理性はない,ということです。

5 公取見解から10年以上が経過→根拠が薄くなっている

再度,再販制度の趣旨に戻って考えます(前述)。
その上で,現在までの社会の変化,も検討に加えます。

<書籍,雑誌の再販制度と現在の社会の整合性が崩壊>

あ 出版社,書店の経営維持←情報流通手段の確保

紙の書籍以外の情報流通手段が非常に普及している(後述)

い 書店の確保

これは紙の書籍が前提となっている
インターネットによる情報流通の自由化,がない前提である
現在はブログなどによる情報発信,流通が爆発的に普及している
電子書籍も普及しつつある

<書籍,雑誌の再販制度の現在社会における影響>

・消費者(国民)への影響→マイナス
・出版,書店,流通などの事業者への影響→プラス

結論として,現在の再販制度は事業者の利益維持だけが存在理由になっていると思われます。
法的には制度が違憲である疑いが濃厚になっていると思います。

6 大学生協での割引|独占禁止法上除外されている

大学生協では,書籍が10%引きなどで実際に割引販売がされています。
これは『再販制度』に反するようにも思えます。
しかし,独占禁止法上の例外なのです。
『消費生活協同組合法』に基づいて設立された団体は除外とされています(独占禁止法23条5項3号)。
大学生協は『消費生活協同組合法』に基いて設立された団体(組合)なのです。
そこで,対象外なのです。

このように例外があることも『再販制度』つまり『定価販売の強制』の合理性を否定させる事情の1つと言えます。

判例・参考情報

(情報1)
[著作物再販制度の取扱いについて;平成13年3月23日 公正取引委員会]
<→著作物再販制度の取扱いについて>
公正取引委員会は,著作物の再販適用除外制度(以下「著作物再販制度」とい う。)について,規制緩和の推進に関する累次の閣議決定に基づき,独占禁止法 適用除外制度の見直しの一環として検討を行ってきた。その中で,平成 10 年 3 月に,競争政策の観点からは廃止の方向で検討されるべきものであるが,本来 的な対応とはいえないものの文化の振興・普及と関係する面もあるとの指摘があることから,著作物再販制度を廃止した場合の影響も含め引き続き検討し, 一定期間経過後に制度自体の存廃について結論を得る旨の見解を公表した。
これに基づき,著作物再販制度を廃止した場合の影響等について関係業界と対 話を行うとともに,国民各層から意見を求めるなどして検討を進めてきたところ,このたび,次のとおり結論を得るに至った。

1 著作物再販制度は,独占禁止法上原則禁止されている再販売価格維持行為 に対する適用除外制度であり,独占禁止法の運用を含む競争政策を所管する 公正取引委員会としては,規制改革を推進し,公正かつ自由な競争を促進することが求められている今日,競争政策の観点からは同制度を廃止し,著作物の流通において競争が促進されるべきであると考える。
しかしながら,国民各層から寄せられた意見をみると,著作物再販制度を廃止すべきとする意見がある反面,同制度が廃止されると,書籍・雑誌及び 音楽用CD等の発行企画の多様性が失われ,また,新聞の戸別配達制度が衰退し,国民の知る権利を阻害する可能性があるなど,文化・公共面での影響が生じるおそれがあるとし,同制度の廃止に反対する意見も多く,なお同制度の廃止について国民的合意が形成されるに至っていない状況にある。
したがって,現段階において独占禁止法の改正に向けた措置を講じて著作物再販制度を廃止することは行わず,当面同制度を存置することが相当であると考える。

2 著作物再販制度の下においても,消費者利益の向上につながるような運用も可能であり,関係業界においてこれに向けての取組もみられるが,前記の 意見の中には,著作物再販制度が硬直的に運用されているという指摘もある。
このため,公正取引委員会は,現行制度の下で可能な限り運用の弾力化等の取組が進められることによって,消費者利益の向上が図られるよう,関係業界に対し,非再販商品の発行・流通の拡大,各種割引制度の導入等による価格設定の多様化等の方策を一層推進することを提案し,その実施を要請する。また,これらの方策が実効を挙げているか否かを検証し,より効果的な 方途を検討するなど,著作物の流通についての意見交換をする場として,公正取引委員会,関係事業者,消費者,学識経験者等を構成員とする協議会を設けることとする。
公正取引委員会としては,今後とも著作物再販制度の廃止について国民的合意が得られるよう努力を傾注するとともに,当面存置される同制度が硬直的に運用されて消費者利益が害されることがないよう著作物の取引実態の調査・検証に努めることとする。
3 また,著作物再販制度の対象となる著作物の範囲については,従来から公正取引委員会が解釈・運用してきた6品目(書籍・雑誌,新聞及びレコード盤・音楽用テープ・音楽用CD)に限ることとする。
(略)
資料1
著作物再販制度の見直しに関する意見照会・意見聴取等の状況について
1 意見照会の状況
(略)
(2) 提出された意見の内容をみると,主に以下のようなものであった。
ア 書籍・雑誌
再販制度の維持を求める意見としては,文化商品である本について経済効率の面か ら流通制度を考えることは不適当である,再販制度が廃止されると価格競争が激化し て,書店の品揃えは売れ筋のみに偏り,出版社は売れ筋のみを発行するようになる, また,地域の最寄り書店が淘汰されたり,書店間の価格差が発生する結果,特に地方 の消費者,高齢者,児童等に不利益を与えるなどの指摘が寄せられている。
再販制度の廃止を求める意見としては,消費者が書店を選択する等の努力をして良 い商品を安く購入したいというニーズは満たされるべきである,再販制度を廃止して 市場原理に任せれば,優れた内容のものを含めたより多様な書籍・雑誌が発行され, 市場の活性化につながる,また,低価格販売を行う書店や価格以外の工夫をする書店 等消費者のニーズに対応した魅力ある書店が増加するなどの指摘が寄せられている。
(略)
資料2
関係業界における取組状況
公正取引委員会による著作物再販制度の運用の是正措置の求めに応じ,平成 10 年4月以降, 関係業界においては,以下のような取組がみられる。
(略)
4 サービス券の提供等消費者に対する販売促進手段の確保
(書籍・雑誌)
○ 書店が懸賞によらないで提供することができる景品類の最高額が取引価額の3%から5%に引き上げられたほか,書店において,ポイントカード制(購入額に応じて一定のポイントを与え,ポイント数に応じて金券の提供等を行うもの)を実施する動きがみられる。
(略)