1 ソフト性的サービスと労働基準法の『有害業務』の抵触
2 労働基準法に関する『通達』による『有害業務』の内容|ノーパン喫茶時代の古い記述
3 ソフト性的サービスの具体例|JKリフレ・ビンタなど
4 ソフト風俗の『違反行為』が不明確→萎縮的効果という悪影響

1 ソフト性的サービスと労働基準法の『有害業務』の抵触

一定の性的サービスは適法/違法の境界が分かりにくいです。
労働基準法に違反して,刑事罰の対象となるケースもあります。

事業主として既存の法規,解釈についてはしっかりと把握しておくと良いでしょう。

労働基準法に抵触するのは,キャスト(サービス提供者;従業員)が18歳未満,ということが前提です。
まずは法規の適用を説明します。
リレーになっているので順に説明します。

なお,JKリフレなどの具体的サービスについては後述します(後記『3』)。

<条文の適用>

あ 労働基準法

労働基準法62条2項
『満18歳に満たない者を・・・福祉に有害な場所における業務に就かせてはならない』
同法119条1号
6か月以下の懲役または30万円以下の罰金(法定刑)

い 年少者労働基準規則

年少者労働基準規則8条
『満18歳に満たない者を就かせてはならない業務は,次の各号に掲げるものとする』
45号
『特殊の遊興的接客業における業務』
ここで,『特殊の遊興的接客業』が,性的サービスを含むのです。
この時点で,文言解釈として逸脱していると思われます。

う 通達の基準本体

『いわゆるノーパン喫茶におけるウェイトレスの業務に対する労働基準法第63条の適用について』
2(2)②
『客に性的な慰安歓楽を与えることを一つの目的とするもの』が『『特殊の遊興的』なものであると解される』
上記のような名前の長い通達があります(後掲通達1)。
肝心のネーミングがちょっとうまくないです。
労働基準法63条という表記ですが,これは『坑内』の労働に関するものです。
他意はないと思います。
通達の内容はしっかりと62条2項となっているのです。

え 通達における例示的基準

上記通達2(3)をまとめたものです。
なお,通達自体は『ノーパン喫茶』を前提としています。
ここでは一般化して『キャスト』という表記に統一しました。

2 労働基準法に関する『通達』による『有害業務』の内容|ノーパン喫茶時代の古い記述

労働基準法の条文・通達ではあまり具体的に『禁止の範囲』が分かりません。
この点,通達では『例示』としていくつかの『有害業務』が挙げられています。

<通達における例示的基準>

あ 該当する場合

キャストの服装,行為が次に該当する場合に『特殊の遊興的接客業』に該当する
(あ)キャストの服装
『上半身シースルー,下半身ミニスカー卜着用,ノーパン』またはこれと同程度かこれ以上裸に近い服装
(い)キャストの行為
・客の傍らに座り,客と会話を交わす
・客の傍らにいて,客がその身体にさわることができる
 ボディペインティングをする,下着を脱がせる等を含む
・客の傍らで客に積極的に陰部を見せる等の行為を行う
・客の傍らで,あるいは客と一緒に踊りをする
・その他以上の行為に準ずる形態

い 該当しない形態

次のようなものは,当面は『特殊の遊興的接客業』に該当しないもとして扱う
・上記(あ)の服装未満の場合
 本来は,服装の程度,振舞,言動等によっては『積極的なもてなし』の意味あいをもってくる場合もあり得る
・キャストが一定の時聞に客席から離れたところで踊り等のショーを行う形態

3 ソフト性的サービスの具体例|JKリフレ・ビンタなど

近年の具体例としては次のようなものがあります。

<近年のソフト性的サービス>

・JKリフレ
・JKプロレス
・添い寝
・肩もみ
・ビンタ

上記の通達のうち『服装』が分かりやすい基準です。
『上半身シースルー,下半身ミニスカー卜着用,ノーパン』というものです。
ここで『かつ』(and)なのか,『または』(or)なのかは明記されていません。
少なくとも『シャツ+スカート+下着着用』であれば適用対象にならない,と考えられます。

上記の『ソフト性的サービス』について,少なくともこの『服装』であれば労働基準法違反とならないはずです。

以上の解釈は上記通達を前提にしたものです。
しかし,通達は昭和56年のもので古いです。
そもそも通達は行政内部の解釈指針であり,ユーザー(国民)に直接適用されるものではありません。
そうすると,事実上,捜査機関の判断の幅が大きい,という好ましくない状態です。
刑罰法規については,このようなことは非常に不合理です。
『明確性の原則』違反→違憲→法規自体が無効,という考え方もあります。
詳しくはこちら|青少年育成条例の『みだらな性交』の解釈と明確性の原則違反

4 ソフト風俗の『違反行為』が不明確→萎縮的効果という悪影響

このようなサービスを行う事業者としては,大きな不確定要素を抱えることになります。
一般に再現性の低い解釈は,適法な行為も控えることになるという害悪があるのです。
これを萎縮効果と呼んでいます。
性的な法規制については,このような曖昧領域が多いのです。
詳しくはこちら|男女交際・性行為に関する刑罰|売春防止法・児童ポルノ法・青少年育成条例・強姦罪

条文

[労働基準法]
(危険有害業務の就業制限)
第六十二条  使用者は、満十八才に満たない者に、運転中の機械若しくは動力伝導装置の危険な部分の掃除、注油、検査若しくは修繕をさせ、運転中の機械若しくは動力伝導装置にベルト若しくはロープの取付け若しくは取りはずしをさせ、動力によるクレーンの運転をさせ、その他厚生労働省令で定める危険な業務に就かせ、又は厚生労働省令で定める重量物を取り扱う業務に就かせてはならない。
2  使用者は、満十八才に満たない者を、毒劇薬、毒劇物その他有害な原料若しくは材料又は爆発性、発火性若しくは引火性の原料若しくは材料を取り扱う業務、著しくじんあい若しくは粉末を飛散し、若しくは有害ガス若しくは有害放射線を発散する場所又は高温若しくは高圧の場所における業務その他安全、衛生又は福祉に有害な場所における業務に就かせてはならない。
3  前項に規定する業務の範囲は、厚生労働省令で定める。
(坑内労働の禁止)
第六十三条  使用者は、満十八才に満たない者を坑内で労働させてはならない。

第百十九条  次の各号の一に該当する者は、これを六箇月以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。
一  第三条、第四条、第七条、第十六条、第十七条、第十八条第一項、第十九条、第二十条、第二十二条第四項、第三十二条、第三十四条、第三十五条、第三十六条第一項ただし書、第三十七条、第三十九条、第六十一条、第六十二条、第六十四条の三から第六十七条まで、第七十二条、第七十五条から第七十七条まで、第七十九条、第八十条、第九十四条第二項、第九十六条又は第百四条第二項の規定に違反した者
二〜四(略)

[年少者労働基準規則]
(年少者の就業制限の業務の範囲)
第八条  法第六十二条第一項の厚生労働省令で定める危険な業務及び同条第二項の規定により満十八歳に満たない者を就かせてはならない業務は、次の各号に掲げるものとする。ただし、第四十一号に掲げる業務は、保健師助産師看護師法 (昭和二十三年法律第二百三号)により免許を受けた者及び同法 による保健師、助産師、看護師又は准看護師の養成中の者については、この限りでない。
一〜四十四(略)
四十五  特殊の遊興的接客業における業務
四十六(略)

判例・参考情報

(通達1)
[いわゆるノーパン喫茶におけるウェイトレスの業務に対する労働基準法第63条の適用について]
基監発第20号;年労発第34号;昭和56年8月11日;各都道府県労働基準局長,各婦人少年室長
労働省労働基準局監督課長,労働省婦人少年局年少労働課長

昨年来、いわゆるノーパン喫茶が全国各地で営業を開始し、社会的な話題となっているところであるが、最近、そのウェイトレスが年少者である場合に、ウェイトレスの行っている業務が労働基準法第63条に規定する年少者の就業制限業務、「女子年少者労働基準規則第8条第44号(酒席に侍する業務)又は同条第45号(特殊の遊興的接客業における業務)」に該当するかどうかという照会が各地の警察本部又は警察署から都道府県労働基準局及び婦人少年室あてになされているところである。
この問題については、別添のとおり見解を取りまとめたので、当面、警察本部等からの照会に対してはこれにより回答する等適切に対処願いたい。
1 「酒席に侍する業務」の該当性
(略)
2 「特殊の遊興的接客業における業務」の該当性

いわゆるノーパン喫茶において年少者がウェイ卜レスとして働いている場合、ウェイトレスの業務が女子年少者労働基準規則第8条45号の「特殊の遊興的接客業における業務」に該当することはあるか。

(1)女子年少者労働基準規則第8条45号の「特殊の遊興的接客業における業務」とは、「接客業」であって「特殊の遊興的」なものにおける「客に接する業務」(昭22・11・11発婦2号)をいうものと解される。
このうち「接客業」とは、労働基準法第8条14号の「接客業」と同義であり、料理店や飲食店とは異なって、個々の客に対し、飲食の手助けをする、談笑の相手となる、歌や踊りを共とするなどの「積極的なもてなし」行為を行うことを営業の主体とするものをいうと解される(風俗営業等取締法違反被告事件大阪高裁昭46・3・10判決参照)。
(2) ① いわゆるノーパン喫茶が「接客業」に該当するかどうかについては、喫茶店は、労働基準法の適用上は一般的には「飲食点」に該当するものであるが、ノーパン喫茶の場合には、ウェイトレスの服装、ウェイトレスの行うサービス等により種々の形態のものがあるようであり、ウェイトレスの服装、ウェイトレスの行うサービスなどにより、個々の客に対する「積極的なもてなし」といい得る行為を行うことを営業の主体としている場合は、「接客業」に該当することとなる。
② ノーパン喫茶が「特殊の遊興的」なものであるかどうかについては、ノーパン喫茶は、一般的には、客に性的な慰安歓楽を与えることを一つの目的とするものであり、「特殊の遊興的」なものであると解される。
③ 「客に接する業務」とは文字どおり客に接する業務のことであり、ノーパン喫茶の場合には、ウェイトレス、レジ係等の業務がこれに該当するが、専ら飲食物の調製を行う者、ボイラーマン等の業務はこれに該当しないと解される。
(3) ノーパン喫茶のうちどのような形態のもの(どのような態様の行為を行うことを営業の主体としているもの)が「特殊の遊興的接客業」に該当するかについては、個別のケースごとに実態に即して判断されるべきであるが、一般的には、次のような形態のものはこれに該当するものと解される。
① ノーパンウェイトレス(「上半身シースルー、下半身ミニスカー卜着用、ノーパン」若しくはそれと同程度の服装のウェイトレス又はそれ以上裸に近い服装のウェイトレス。以下同じ。)が客の傍らに座り、客と会話を交わすもの
② ノーパンウェイトレスが客の傍らにいて、客がその身体にさわる(ボディペインティングをする、下着を脱がせる等を含む。)ことができるもの
③ ノーパンウェイトレスが客の傍らで客に積極的に陰部を見せる等の行為を行うもの
④ ノーパンウェイトレスが客の傍らで、あるいは客と一緒に踊りをするもの
⑤ その他①~④に準ずる形態のもの
なお、ノーパン喫茶のうち、ノーパンウェイトレスが、服装の点を除き、通常の喫茶店のウェイトレスとほぼ同様の態様で業務を行っているにすぎないものについては、ノーパンウェイ卜レスの服装(又は裸)の程度、その振舞、言動等によっては「積極的なもてなし」の意味あいをもってくる場合も考えられ、なお検討を要する点はあるが、当面は、「特殊の遊興的接客業」に該当しないものと解して取り扱うものとする。
また、ノーパンウェイトレスが一定の時聞に客席から離れたところで踊り等のショーを行うにすぎないもの等についても、同様に、一般的には、「特殊の遊興的接客業」に該当しないものと解して取り扱うものとする。