1 建物賃貸借契約では,通常,連帯保証人が必要とされる
2 保証人は更新後も責任が継続する
3 『滞納』や『更新』を保証人が知らない場合は,保証人の責任が消滅する可能性あり
4 保証人が『賃貸借契約解除』をできることもある|特別解約権
5 建物賃貸借の『保証人』典型例=個人・家賃保証会社
6 家賃保証業務×法規制|法規制はない

1 建物賃貸借契約では,通常,連帯保証人が必要とされる

一般的に建物賃貸借において,入居者が連帯保証人を用意することを要求されることが多いです。
連帯保証人は,『賃借人がオーナーに対して負う債務』について,同一の保証債務を負います。

連帯保証人が負う債務|例>

ア 家賃・管理費(滞納した場合)
イ 更新料
ウ 原状回復費用
エ 遅延損害金

2 保証人は更新後も責任が継続する

(連帯)保証人は,賃貸借契約書に調印することになります。
当然,契約書の条項で自分が負う債務(責任)の内容を把握し,承諾してから調印するはずです。
この点,賃貸借契約の期間が満了→更新したという場合に,更新後の責任について問題となることが多いです。
民法には,更新後については,『敷金以外の担保』は消滅すると規定されています(民法619条2項)。
『保証人』も(人的)『担保』ですので,消滅することになりそうです。
しかし,最高裁の判例の解釈では,このとおりにはなりません。

<賃貸借契約更新後保証人の責任

あ 結論

原則として保証人の保証債務は継続する

い 理由(要約)

『建物賃貸借は更新が繰り返され,長期化する』ことは想定内である。
※最高裁平成9年11月13日

3 『滞納』や『更新』を保証人が知らない場合は,保証人の責任が消滅する可能性あり

例外的に『賃貸借契約更新後』については保証債務が継続しないという場合もあります。

<更新後に保証債務が継続しない場合>

あ 定期借家契約の場合

更新がないという,非常に特殊な契約です。

い 普通借家だけど特殊事情がある場合

《特殊事情の例》
ア 賃借人が継続的に賃料の支払を怠っている
イ オーナーが,保証人に『滞納』について連絡しなかった
ウ オーナーが契約の更新拒絶をしなかった or 合意更新に応じた
エ 以前の更新時には保証人の調印がなされたが,直近の更新時には調印等がなされなかった

う 判例

ア 最高裁平成9年11月13日
結論は責任肯定
イ 東京地裁昭和51年7月16日
債務名義(和解調書)があり,明渡の強制執行が容易であった→使用を継続させた→責任否定
ウ 東京地裁平成6年6月21日
滞納→合意更新2回→責任否定
エ 東京地裁平成10年12月28日
結論は責任否定

普通借家における『特殊事情』は,総合的に判断されます。
更新時には,オーナーの立場では,一定の手間がかかることと,保証債務消滅リスクのジレンマがある,ということです。
最低限,保証人に通知(知らせる)だけしておけば,保証債務が消滅したと判断されるリスクが大幅に軽減できます。

4 保証人が『賃貸借契約解除』をできることもある|特別解約権

通常,賃貸借契約の解除や解約申入は,『賃借人』が行うものです。
『保証人』にはそのような権限はありません。
しかし,例外的に『保証人』が賃貸借契約の『解約申入』をできる場合もあります。

<保証人が賃貸借契約の解約(申入)をできる場合|特別解約権>

次のすべての条件を満たす場合
ア 賃貸借契約における保証人が『金額・期間の定めのない保証』をしている
イ 貸借人が賃料債務の履行を長期間怠っている
ウ 賃借人に,契約当初予見できなかった資産状態の悪化があった
エ 将来保証人の責任が著しく増大することが予想される
※東京地裁昭和51年7月16日

なお,当該判例では,『預託していた保証金』が多額でした。
そして,滞納額と差引計算をすると『不足額』が賃料1か月程度でした。
そこで『将来保証人の責任が著しく増大』とは予想されませんでした。
結局『特別解約権』は認められませんでした。

5 建物賃貸借の『保証人』典型例=個人・家賃保証会社

建物賃貸借において『保証人』となる者の典型例をまとめます。

<建物賃貸借の『保証人』典型例>

あ 典型的な人選

ア 賃借人の身内のうち誰か
イ 賃借人と同じ職場の従業員個人
例;上司や同僚

い 最近の傾向

家賃保証会社
→賃貸人側で紹介・指定するケースもある
賃借人が一定の『保証料』を負担する

最近では『保証』自体をサービスとする事業者も普及してきています。

6 家賃保証業務×法規制|法規制はない

家賃保証業務についての法規制は現在のところありません。

<家賃保証業務×法規制>

あ 一般的な『保証』

『金銭の貸付』についての『保証』であれば
→貸金業に該当する
=登録が必要
※貸金業法2条3項,3条

い 家賃保証×貸金業法

家賃保証は『金銭の貸付の保証』ではない
→貸金業に該当しない
=貸金業登録は不要

う 新たな法規制→廃案

家賃保証業適正化法が国会で審議された
→平成23年末に廃案となった

え 結論

法規制はない
=許認可なく事業を行える

家賃保証会社は公的審査がなされていないということです。
利用する際は信用できる事業者かどうかに配慮すると良いでしょう。
この点,しっかりした仲介業者が紹介する事業者は安心できます。