建設会社に住宅の建築を頼みました。
完成した後住んでいます。
しかし,壁や床に凹みなどの欠陥があると思います。
ただ,一見して分かるほどひどい状態でもありません。
欠陥と言えるのかどうかをきちんと調べるにはどうしたら良いでしょうか。

1 建築の欠陥の判断のために建築専門家の協力を得ると良い
2 建築専門家に調査を依頼する方法;私的鑑定鑑定人専門委員調停委員
3 私的鑑定の費用相場は,居住用住宅で30〜50万円程度
4 私的鑑定の費用は,原則的に相手(建設会社)に請求できない
5 裁判所の鑑定の費用は申立人が負担→判決では負担割合が指定される

1 建築の欠陥の判断のために建築専門家の協力を得ると良い

<事例設定>

建設会社に住宅の建築を頼んだ
完成した後住んでいる
しかし,壁や床に凹みなどの欠陥があると思う
ただ,一見して分かるほどひどい状態でもない
欠陥と言えるのかどうかをきちんと調べたい

(1)欠陥は程度によっては法的な瑕疵となる

欠陥,つまり,通常有する性能を有していないこと,を瑕疵と呼びます。
住宅などの建築物についての瑕疵は,判断が難しいことが多いです。

(2)欠陥不備の程度判断は難しい

もちろん,ドアが閉まらない,雨漏りがする,という,ハッキリと瑕疵と言えるケースもあります。
しかし,多くはわずかな床の傾き柱の接続の状況など,一見して瑕疵と言い切れないケースが多いです。
少なくとも,このような状態の場合に,見解が相違し,トラブルとなりがちです。

(3)欠陥の程度判断のために,建築専門家の協力を得ると良い

純粋な法律の知識では,瑕疵に当たるかどうか,を判断できません。
建築に関する情報に詳しい専門家の判断が重要です。
一級建築士や建築業に携わっている方で,知識・経験が豊富で信頼できる方が適切です。
建築の専門家に,特定の建築物についての瑕疵,つまり,通常の施工レヴェルに達しているかどうかを判断してもらった結果は有用です。

2 建築専門家に調査を依頼する方法;私的鑑定鑑定人専門委員調停委員

建築の専門家に調査,判断を依頼する方法はいくつかあります。

(1)直接調査,判断を依頼する方法;私的鑑定

建築の専門家に判断してもらう方法としては,まず,直接専門家に,調査・判断を依頼するというものが挙げられます。
個人的(私的)に鑑定を依頼するので,私的鑑定と呼ぶことがあります。

(2)裁判所を通して調査を依頼する;鑑定

一方,訴訟において,裁判所に中立な専門家を選任してもらう方法もあります。
これを鑑定と呼びます(民事訴訟法212条~)。
選任された専門家は鑑定人と呼びます。

(3)中間的な調査依頼もある;専門委員調停委員

それ以外の裁判所の手続において,建築専門家が関与する場合もあります。
民事調停における専門委員や調停委員です。

3 私的鑑定の費用相場は,居住用住宅で30〜50万円程度

鑑定(調査)の費用は,建物の規模や調査事項,その精度によって大きく異なります。

<鑑定(調査)費用に影響を生じる要素の例>

・所要時間
・手間
・必要とする知識の量
・責任の大きさ
・専門家の権威の大きさ

具体的には,建物の規模,調査対象箇所の数,などが主な算定要素です。

<ごく一般的な鑑定(調査)費用の目安>

あ 調査対象

個人の一般的居住用住宅

い 所要時間

現地調査2~3時間程度

う 費用目安

30〜50万円程度

これはあくまでも比較的簡単なケースです。
個別事情により大きく異なることもあります。

4 私的鑑定の費用は,原則的に相手(建設会社)に請求できない

<事例設定>

建物の瑕疵について建築の専門家に私的鑑定をしてもらおうと思っている
この費用は相手方(建築会社)が負担するようになるのか

私的鑑定は,文字どおり,私的(個人的)に依頼するものです。
相手方は関与しません。
当然ですが,依頼した時点では,依頼した者が鑑定の費用を支払うことになります。
この一旦払った鑑定費用を相手方(建築会社)に請求できるかどうかは別問題です。
多くの裁判所の判断をまとめると,次のようになります。

<私的鑑定の費用負担についての裁判例の傾向>

・原則 依頼した者(施主)が負担
・例外 相手方(建築請負人)が負担

<例外的に建築請負人が私的鑑定費用を負担する要件;例>

・建築瑕疵が認められる
・瑕疵の判断が困難・高度であり,専門家の鑑定がほぼ不可欠であった
・建築請負人が瑕疵の存在・責任を頑なに否定していた

<私的鑑定の費用負担の根本的な考え方>

※契約一般に該当する考え方
売買や建築の依頼という契約を行う時点で,事後的なトラブル発生,その場合のコスト負担というリスクを負っている
取引相手を選ぶ,取引することを判断すること,の中にこのようなコストの負担が内在している
取引相手として別の者を選べば避けられたコストである

5 裁判所の鑑定の費用は申立人が負担→判決では負担割合が指定される

<事例設定>

建築の瑕疵について,裁判所に鑑定の申立をしようと思っている
この費用は相手方(建設会社)が負担するのか

(1)鑑定申立をした当事者が鑑定費用を一時的に負担する

訴訟において,裁判所が鑑定人を選任し,鑑定が施行される場合,裁判所から費用が出る,立て替えるということは行われません。
裁判所の運用では,鑑定申立をした方が,鑑定費用相当額を裁判所に予納する扱いになっています。

(2)鑑定を双方申立した場合は,折半する

実際には,裁判所からの提案で,原告・被告双方が鑑定申立をしたという形になることも多いです。
双方申立の場合は,鑑定費用を折半して予納するという扱いがなされています。

(3)判決の際,訴訟費用の一環として負担割合が指定される

最終的に,判決に至った場合は,訴訟費用の一環となります。
訴訟費用については,判決の中で,原告・被告の負担が指定されます。
認められた瑕疵(請求額)の程度によって,割合的に指定されることが多いです。
例えば,『1000万円の請求のうち,認容された金額が700万円の場合は,10分の7を被告(建築請負人)が負担する』,という要領です。
請求認容割合と訴訟費用の負担割合が必ずしも一致するわけではありません。

(4)和解の場合,鑑定費用の清算を含めないことが多い

和解が成立して訴訟が終わった場合は,和解内容次第です。
原告,被告のいずれかが全額負担する,ということが明記されれば,当然そのとおりになります。
実務上は,鑑定費用を含めた訴訟費用は各自が負担する,つまりお互いに請求しない,ということが多いです。
言い換えると,この金額の清算も含めて和解金や解決金に織り込む,ということです。

なお,鑑定ではなく,訴訟の専門委員や調停の調停委員としての関与であれば,費用がかかりません。
<→別項目;裁判に伴って専門委員,調停委員として建築専門家が関与すると鑑定費用がかからない

条文

[民事訴訟法]
(鑑定義務)
第二百十二条  鑑定に必要な学識経験を有する者は、鑑定をする義務を負う。
2(略)

(鑑定人の指定)
第二百十三条  鑑定人は、受訴裁判所、受命裁判官又は受託裁判官が指定する。