【積水ハウスvs地面師事件でなりすましを見抜けた可能性や方法】

1 積水ハウスvs地面師事件でなりすましを見抜けた可能性
2 司法書士の実務サイドからのコメント
3 難を逃れた(不正を見抜いた)他のターゲット
4 見抜けたであろう調査方法
5 司法書士の責任の有無(概要)

1 積水ハウスvs地面師事件でなりすましを見抜けた可能性

積水ハウスが地面師の詐欺にひっかかってしまった事件は規模が大きく世間に衝撃を与えました。地面師が所有者になりすました手口が徐々に明らかになってきています。
詳しくはこちら|積水ハウスvs地面師事件の内容(登記や報道による情報の集約)
地面師のなりすましを見抜いて被害を回避することはできなかったのでしょうか。後から見抜けた可能性やその方法を考えることは,今後の事故を防止することに大変役立ちます。不幸な事件ですが,本記事では,見抜けた可能性や方法を分析してみます。

2 司法書士の実務サイドからのコメント

積水ハウスvs地面師事件では,積水ハウス(買主)も司法書士の両方がなりすましを見抜けませんでした。
この点,司法書士の実務の業界からは,司法書士の調査が不十分であったというような推測が示されています。裏を返すと,司法書士に見抜いて止めて欲しかったという理想への願望ともいえます。
実際には,司法書士がどのような調査方法をとったのか,ということは公表された情報からは明らかではありません。

<司法書士の実務サイドからのコメント>

積水ハウス事件について
決済の際,現場において司法書士は登記名義人本人に面談していないばかりか,替え玉とさえ会っていないだろうと推測せざるを得ない
買主を含む取引当事者は,決済を司法書士の立会に委ねることを回避していたと思われ,逆に言えば,司法書士が本当に関与していたならこの事件(取引事故)は防止されたと考えられる
※司法書士総合研究所不動産登記制度研究部会主任研究員藤縄雅啓稿『副本・保証書から登記原因証明情報・本人確認情報へ』/『月報司法書士561号』日本司法書士会連合会2018年11月p23

3 難を逃れた(不正を見抜いた)他のターゲット

ところで,実際に所有者ではない(なりすましである)ことを見抜いた者も複数人存在します。所有者と名乗る者を撮影して近隣住人に聞き込みをする,とか,登記済権利証のコピーを法務局に持っていって登記済印の照合を頼むなど,しっかりした防衛策です。
一般的なマイホームの売買でも行うような方法ではありません。非常に高額であることからより慎重に調査したということです。

<難を逃れた(不正を見抜いた)他のターゲット>

あ 先行するターゲットの存在

売却や担保権設定による融資を持ち込まれた不動産業者(ターゲット)が複数あった

い 動画撮影+聞き込みによる発覚

自称所有者との面談の際にスマホで動画を撮影した
後日近隣住民に動画を見せて確認した
そこで『所有者とはまったく異なる』というコメントを得て不正が見抜けた

う 法務局での登記済印の確認による発覚

自称所有者から登記済証のコピーをもらった
これを法務局に持っていき,当時の登記済印と照合するよう頼んだ
※各メディアの報道

4 見抜けたであろう調査方法

実際になりすましを見抜いた調査方法が分かりました(前記)。
では,実際に買主や司法書士がどのような調査をしていればよかったのでしょうか。
まず,自宅訪問が挙げられます。一般的な本人確認の方法です。しかし,このケースでは,地面師(グループ)が建物を占有していたと思われます。自宅(対象物件)を訪問した時に,その建物に地面師の一員がいる,つまり,見抜けなかったということもありえます。
次に,近隣住民への聞き込みという方法もあります。例えばパスポートの写真部分のコピーを近隣住民に見せたとしたらなりすましが発覚した可能性は高いでしょう。

<見抜けたであろう調査方法>

あ 自宅訪問

買主or司法書士が売主(所有者)の自宅を訪問する
→見抜けたかもしれない
ただし仮に地面師(なりすまし役)が自宅建物に侵入(占有)していたら見抜けない

い 近隣への聞き込み

買主or司法書士が(自称)売主から提示を受けたパスポートの写しを近隣の住民に提示して確認する
(自称)売主の承諾を得て撮影することも考えられる(ハードルが高いが)
→見抜けたと思われる

5 司法書士の責任の有無(概要)

以上のように,少なくとも司法書士が近隣住民への聞き込みをしていればなりすましが発覚した可能性は高いでしょう。しかし,だからといって聞き込みをしなかった司法書士は調査義務違反があったということにはなりません。責任の判断基準でも,実際の裁判例でも,結果責任ではないのです。
詳しくはこちら|不動産登記申請を行う司法書士の確認義務の枠組み(疑念性判断モデル)
逆に,司法書士が(自称)所有者と会ってもいないとすれば,過去の裁判例の傾向としても,ほぼ確実に司法書士の責任が生じるでしょう。

本記事では,積水ハウスが地面師にだまされた事件について,なりすましを見抜けた可能性や方法を説明しました。
似ている事件は多くありますが,個別的な事情によって法的扱いが変わります。
実際に不正な取引や登記に関する問題に直面されている方は,みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。

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