1 更新料を有効・無効とする理論と平成23年判例による統一
2 更新料を無効とする見解の理由
2 更新料を有効とする見解の理由
3 平成23年判例の前の更新料に関する裁判例
4 平成23年判例による更新料に関する見解の統一
5 平成23年判例以降の裁判例(概要)
6 平成23年判例への反対説

1 更新料を有効・無効とする理論と平成23年判例による統一

建物賃貸借において,更新料を支払う特約(更新料条項)は,古くから,有効とする見解と無効とする見解が対立していました。そして,平成23年の最高裁判例で見解が統一されるに至りました。
本記事では,更新料条項の有効性に関する以前あった見解と,これが平成23年判例で統一された経緯について説明します。

2 更新料を無効とする見解の理由

まず,更新料条項が無効であるという見解の理由は要するに,賃借人に不利であるために不合理であるというものです。

<更新料を無効とする見解の理由>

『更新料』は,民法・借地借家法に規定がない
→不当な賃借人の負担である
→賃借人の利益侵害である
→更新料を定める条項は無効である
※民法1条2項,消費者契約法10条
※借地借家法30条
※星野英一『法律学全集26 借地・借家法』有斐閣1969年p495

2 更新料を有効とする見解の理由

更新料条項が有効であるという見解の理由は,賃貸人としては想定している収入であり,一方,賃借人も納得して契約(入居)しているということから合理性があるというものです。

<更新料を有効とする見解の理由>

あ 更新料の趣旨

更新料には家賃(賃料)の趣旨も含まれている
=更新料なしだとしたら賃料の金額はもっと高かったはず
例=オーナー(賃貸人)の金融機関への返済計画に更新料も含まれている
→合理的な賃借人の負担である

い 当事者の理解

賃借人は,更新料の金額を承知した上で契約を締結したはず
→不当な賃借人の利益侵害とは言えない

う 結論

『更新料の趣旨』『当事者の理解』のいずれも合理的である
→『更新料(の特約・条項)』は有効である

なお,平成23年判例は,この,有効とする見解を採用しています(後記)。

3 平成23年判例の前の更新料に関する裁判例

平成23年判例で見解が統一される前は,多くの裁判例で更新料条項の有効性の判断が分かれていました。
膨大な裁判例のうち主なものを整理します。

<平成23年判例の前の更新料に関する裁判例>

あ 有効と判断した裁判例

京都地裁平成20年1月30日
大津地裁平成21年3月27日
大阪高裁平成21年10月29日
京都地裁平成22年10月29日
東京地裁平成20年12月26日;合意更新のみ有効(※1)
東京地裁平成21年12月16日;合意更新のみ有効(※1)
東京地裁平成23年4月27日;合意更新のみ有効(※1)

い 無効と判断した裁判例

東京地裁平成12年9月8日(※1)
大阪高裁平成21年8月27日
京都地裁平成21年7月23日
京都地裁平成21年9月25日
大阪高裁平成22年2月24日
大阪高裁平成22年5月27日
※1 別の記事で内容を説明している
詳しくはこちら|建物賃貸借の更新料に関する過去〜現在の裁判例(平成23年判例の影響)

4 平成23年判例による更新料に関する見解の統一

前記のように,更新料条項の有効性については,判断が分かれていましたが,平成23年の最高裁判例で,見解が統一されました。
基本的に更新料条項が明確であれば有効であり,例外的に(特段の事情があれば)無効になるという判断基準が示されたのです。
詳しくはこちら|建物賃貸借の更新料条項を有効とした平成23年最高裁判例
詳しくはこちら|建物賃貸借の更新料支払義務(更新料条項の有効性)の判断基準

<平成23年判例による更新料に関する見解の統一>

本判決は,更新料条項が消費者契約法10条により無効となるか否かという,下級審において判断の分かれていた点について,最高裁として初めて判断を示したものである
重要な意義を有し,実務に与える影響は大きいと思われる
※森冨義明稿『時の判例』/『ジュリスト1441号』2012年5月p109

5 平成23年判例以降の裁判例(概要)

平成23年判例以降は当然,判例で示された基準に沿って個別的に更新料条項の有効性が判断されるようになりました。
ここでは,2つの裁判例を紹介します。

<平成23年判例以降の裁判例(概要)>

あ 明確性の欠如による法定更新への適用否定

更新料条項の内容が,法定更新に適用されることが明確でない
→法定更新の際の更新料支払義務を否定した
※東京地裁平成25年10月21日

い 条項の文言による法定更新への適用否定

更新料条項の『協議の上更新』という文言を合意更新の意味と解釈した
→法定更新の際の更新料支払義務を否定した
※東京地裁平成27年1月26日
詳しくはこちら|建物賃貸借の更新料に関する過去〜現在の裁判例(平成23年判例の影響)

6 平成23年判例への反対説

平成23年判例の判断に反対する見解もあります。もちろん,判例に反する見解なので,通常,実務で実際に採用されることはありません。しかし,協議や和解においてはこのような見解の主張が影響を与えることもありえます。

<平成23年判例への反対説>

あ 法定更新

建物賃貸借が更新されるか否かについて
賃貸人に正当事由があるか否かによって決められる
賃貸人に正当事由がない限りは当然に更新される
→金銭の授受がなくても当然に更新されなければならない

い 合意更新

賃貸人に正当事由のない場合における合意更新について
→法定更新の確認に過ぎない
→『あ』と同様である
=更新料の支払は必要ではない

う 更新料の特約の有効性

借地借家法の片面的強行規定に違反する
→無効である
消費者契約法の適用を待つまでもない
※借地借家法30条
※澤野順彦『実務解説借地借家法 改訂版』青林書院p392
※藤井俊二『借家契約における更新料支払特約の効力』/『マンション学42号』日本マンション学会 p262

本記事では,建物賃貸借の更新料条項の有効性に関する理論を説明しました。
実際には,個別的な事情によって有効性の判断が大きく変わってきます。
実際に更新料の問題に直面されている方は,みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。