1 共有物分割への参加の制度
2 共有物分割への参加ができる者の範囲
3 共有物分割への参加の権限・負担
4 共有物分割の参加権利者への通知・参加請求拒否の効果
5 共有持分の(仮)差押と参加請求の関係(概要)
6 共有物分割が担保権へ及ぼす効果と参加の影響
1 共有物分割への参加の制度
一般的には共有物分割は『共有者全員』で協議・合意します。
この点,一定の関係者が『参加』する制度があります。本記事では,共有物分割への参加の制度について説明します。
2 共有物分割への参加ができる者の範囲
共有物分割への参加ができる者は共有物について権利を有する者だけでなく,共有者(の1人)の債権者も含まれます。
<共有物分割への参加ができる者の範囲>
あ 制度・全体
次の『い・う』に該当する者
→共有物分割に参加できる
い 共有物について権利を有する者
ア 用益物権
地上権者・永小作権者・地役権者
イ 担保物権者
抵当権者・質権者
う 共有者の債権者
ア 賃借人
イ 一般的な債権者
※民法260条1項
3 共有物分割への参加の権限・負担
共有物分割の手続に参加する者の権限や負担について整理します。
<共有物分割への参加の権限・負担>
あ 参加者の権限
分割協議において参加者ができること
→意見を述べるのみ
参加者の意見は共有者・協議を拘束しない
※『新版注釈民法(7)物権(2)』有斐閣p485
い 参加の費用負担
共有物分割に参加する費用について
→参加者自身が負担する
※民法260条2項
4 共有物分割の参加権利者への通知・参加請求拒否の効果
分割への参加について法的効果が生じることもあります。
実質的な参加者の保護についてまとめます。
<共有物分割の参加権利者への通知・参加請求拒否の効果>
あ 参加権利者への通知
共有者から参加権利者への通知について
→義務・必要ではない
い 参加請求の拒否の効果
参加の請求を共有者が拒否した場合
→行われた共有物分割は参加請求者に対抗できない
※民法260条2項
う 詐害行為取消権との関係
詐害行為取消権とは別の制度である
※『新版注釈民法(7)物権(2)』有斐閣p484〜
5 共有持分の(仮)差押と参加請求の関係(概要)
ところで,共有持分に(仮)差押がなされている場合,このことが,共有物分割手続への参加請求にあたるという見解もあります。ちなみにこの場合,共有物分割自体ができるかどうか,ということについても見解は分かれています。これについては別の記事で説明しています。
詳しくはこちら|共有持分の抵当権・仮差押や共有物の賃貸借が共有物分割に与える影響
6 共有物分割が担保権へ及ぼす効果と参加の影響
担保権については共有物分割の影響が問題となります。
担保権者が分割協議に参加することの影響という問題もあります。
これらの解釈論について整理します。
<共有物分割が担保権へ及ぼす効果と参加の影響>
あ 客観的効果(概要)
持分について抵当権の設定があった
共有物分割が行われた
→共有物全部について持分割合の限度で抵当権は存続する
抵当権設定者の取得部分に限定されるわけではない
詳しくはこちら|共有持分の抵当権・仮差押や共有物の賃貸借が共有物分割に与える影響
い 参加との関係
抵当権者が分割に参加しても同じである
※大判昭和17年4月24日
※大判昭和17年11月19日
本記事では,共有物分割への参加の制度について説明しました。
実際には,個別的な事情によって,法的扱いや,最適な解決手段が違ってきます。
実際に共有物(共有不動産)に関する問題に直面されている方は,みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。