1 賃料滞納→解除|『賃料』『遅延損害金』の請求ができる
2 『明渡義務』の遅延損害金の金額|条項の規定or賃料額|賃料相当損害金
3 賃料・賃料相当損害金に対する『遅延損害金』の算定|遅延時点・率
4 『遅延損害金』にさらに『遅延損害金』が付く|法定重利

1 賃料滞納→解除|『賃料』『遅延損害金』の請求ができる

建物の賃貸借で,賃借人が『滞納』している場合,オーナーから『賃貸借契約の解除』を行うのが通常です。
このような場合に,オーナーから賃借人に金銭的に請求できるものをまとめます。

<賃料滞納|オーナーから賃貸人への金銭請求>

あ 滞納賃料

賃貸借契約が終了する前までは『賃料』が契約どおりに発生する

い 『明渡義務』不履行の損害金|賃料相当損害金(後記『2』)

賃貸借契約が終了した後は,賃借人には『返還義務』(明渡義務)がある
明渡をしない間は,『返還義務遅滞』→損害賠償義務が発生する
※民法415条

う 遅延損害金

『あ』『い』の金銭について,(さらに)遅滞した期間期間に応じた遅延損害金が発生する

『賃料支払義務』や『明渡義務』などの『義務』が遅滞になると『遅延損害金』が発生します。
『金銭が上乗せになる』という性格から『利子』と似ていますが,法的には『損害金』です。

2 『明渡義務』の遅延損害金の金額|条項の規定or賃料額|賃料相当損害金

(1)明渡義務不履行→損害金発生

賃貸借契約が解除されると賃借人は『明渡義務』が生じます。
『退去しない』期間については,『明渡義務不履行』となり『遅延損害金』が発生します(民法415条)。
この遅延阻害金の金額についてまとめます。

<明渡義務不履行|損害金の金額>

あ 契約上合意(条項)がある

合意(条項)どおりとなる

い 合意(条項)がない

原則的に『賃料と同額』となる

(2)一見すると『賃料発生』にみえるが『損害金』である

『解除後も退去しない』ということは『居座っている』ような状態です。
一見,住み続けているから『家賃(賃料)が発生する』とも思えますが,そうではありません。
すでに『賃貸者は終了』しているからです。
もちろん,その代わりに『損害金』は発生します。

(3)『損害金』についての条項の例

損害金については,民法に明記されているわけではありません。
この点,一般的な賃貸借契約書では,そのような時のために,『損害金』が規定されています(損害額の予定;民法420条)。
例えば,『賃料の2倍』や『3倍』というものがよくあります。
損害金が賃料と同額だとペナルティにならない,という考えから,より高く設定している契約書が多いのです。
しかし,極端に高額である場合,損害金の規定が『無効』とされるおそれもあります。

(4)『損害金』の条項がないと『賃料額』となる

仮に賃貸借契約書などでそのような規定がない場合は,解釈で決めることになります。
一般的には『従前の賃料(+共益費)と同額』ということになるでしょう。
結局は『賃料と似ているけど,法的性質は賃料ではなく損害金』という状態です。
そこで,実務上『賃料相当損害金』と呼んでいます。

3 賃料・賃料相当損害金に対する『遅延損害金』の算定|遅延時点・率

『賃料』,『明渡義務遅滞による賃料相当損害金』ともに,遅れた分の『遅延損害金』が付きます。
いずれも,一般的な『金銭債権・債務』のルールが適用されます。
『遅滞時』から損害金が生じます。
『遅滞時』がいつになるのか,また『率』についてまとめます。

<『賃料・賃料相当損害金』に対する『遅延損害金』|算定>

あ 『遅滞』時点
金銭債務の種類 遅滞時点
賃料 契約上の支払期限(前月末日など)
賃料相当損害金(明渡義務遅滞による損害賠償) 催告した時

※民法412条3項)

い 遅延損害金の『率』
状況 根拠条文
通常 年5% 民法419条1項,404条
商行為の場合(当事者が株式会社,など) 年6% 商法514条

4 『遅延損害金』にさらに『遅延損害金』が付く|法定重利

『遅延損害金』は,ある債務が遅滞(債務不履行)したことによる損害を金銭に見積もったものです。
要は『遅れた分のペナルティ』と言うべきものです。
ペナルティ自体を履行しないことによる,さらなるペナルティ(ペナルティの上乗せ)は,過剰な感じがします。
一方で,長期間遅延損害金を無視しても,『上乗せペナルティ』はない,というのも不合理です。
そこで,民法上,一定の場合には『上乗せペナルティ』が発生することになっています。
利息に例えると,利息が利息を生むという意味で『(法定)重利』と呼ばれています。
条文上は『利息を元本に組み入れる』という旨の表現となっています。
規模の大きいサブリースなどのケースで活用されることが多いです。

<『法定重利』のルール>

あ 要件

『(損害金の)1年以上の滞納』+『催告をした(が払わない)』

い 効果

損害金を元本に組み入れる
※民法405条

法定重利の条文上は『利息』が組入対象ですが,判例において『損害金』も対象と認められています。

<法定重利→『損害金』への適用>

『損害金』も法定重利の規定が適用される
※大審院昭和17年2月4日
※東京地裁平成26年3月27日