1 不動産(物権)以外の対抗要件
2 『賃借権』の登記|『債権』だけど例外的に登記ができる
3 賃借権登記の登記請求権(否定)
4 引渡・借地上建物の所有権登記による賃借権対抗要件
5 動産の対抗要件|引渡|4種類の方法がある
6 動産の対抗要件|動産譲渡登記
7 債権譲渡の対抗要件|通知・承諾|債務者の認識が軸になる
8 債権譲渡の対抗要件|債権譲渡登記
9 株式譲渡の対抗要件=株主名簿への記載

1 不動産(物権)以外の対抗要件

対抗要件の代表的なものは,不動産の物権変動の対抗要件となる不動産登記です。
詳しくはこちら|対抗要件・登記の基本(種類・獲得時期・不完全物権変動理論)
これ以外にもいろいろな対抗要件があります。
本記事では,不動産賃借権・動産・債権譲渡・株式譲渡の対抗要件について説明します。

2 『賃借権』の登記|『債権』だけど例外的に登記ができる

不動産登記の基本は物権変動を公示するものです(前記)。この点,賃借権物権ではなく債権です。本来的には登記の対象外です。
しかし不動産の賃貸借は生活や事業の基盤と直結する重大なものです。
そこで例外的に,不動産の賃借権の登記は認められています(民法605条)。

3 賃借権登記の登記請求権(否定)

賃借権債権であるため,賃借人が賃貸人に対して登記手続を請求することは認められません。つまり,訴訟を提起して判決により単独申請をするという方法は使えません。
この点,合意(契約条項)として登記できる内容がある場合は登記請求権が認められます。
しかし実際にこのような合意がなされることは通常ありません。現実に賃借権登記が行われることは,特別な必要性がない限りありません。
例外的に賃借権の登記を行う状況の典型は同意の登記を活用するケースです。
詳しくはこちら|所有権vs賃借権の対抗関係の例外|同意の登記|賃借権登記とのセットが必須

4 引渡・借地上建物の所有権登記による賃借権対抗要件

『賃借権』の対抗要件は『登記』以外に用意されています。
ただし,対抗要件としては登記以外の代替措置があります。

<登記に代わる不動産賃貸借の対抗要件>

土地賃貸借 土地上の建物の所有権登記 借地借家法10条1項
建物賃貸借 建物の引渡 借地借家法31条1項

詳しくはこちら|建物登記が土地賃借権登記の代わりになる
詳しくはこちら|建物賃貸借の対抗要件|同意の登記

5 動産の対抗要件|引渡|4種類の方法がある

動産にも対抗要件の制度はあります。
原則的には引渡が対抗要件とされます。
『登記』と比べると非常に簡易な方式です。

<動産の対抗要件>

あ 引渡
い 動産譲渡登記

『引渡』の中で,さらに4種類に別れています。

<『引渡』の種類>

あ 現実の引渡
い 簡易の引渡
う 指図による占有移転
え 占有改定

6 動産の対抗要件|動産譲渡登記

動産の対抗要件としては『登記』もあります。

<動産譲渡登記>

あ 基本的ルール

登記により対抗要件を得たものとする
※動産・債権譲渡特例法3条1項

い 注意点

ア 『譲渡人』は法人のみ
イ 譲渡の目的に限定はない
例;通常の譲渡・担保目的の譲渡
ウ 個別動産,集合動産のいずれも登記可能
エ 倉庫業者等の第三者が動産を占有する場合も登記可能

7 債権譲渡の対抗要件|通知・承諾|債務者の認識が軸になる

債権譲渡の対抗要件には,『債務者に対する対抗要件』と『第三者に対する対抗要件』があります。
一般的な意味=『重複する債権譲渡があった場合の優劣』は『第三者に対する対抗要件』のことです。

<指名債権譲渡・質権設定の第三者対抗要件>

次のいずれか

あ 確定日付のある証書による通知or承諾

具体例=内容証明郵便,公正証書
『通知』=譲渡人or譲受人から債務者への通知
『承諾』=債務者から譲渡人or譲受人への承諾(の意思表示)

い 債権譲渡登記+通知

※民法467条2項,364条

8 債権譲渡の対抗要件|債権譲渡登記

債権譲渡の対抗要件としては『登記』もあります。

<債権譲渡登記の制度>

あ 基本的ルール

登記+『譲渡人or譲受人→債務者への通知(登記事項証明書添付)』
→第三者への対抗要件を得たものとする
※動産・債権譲渡特例法4条1項

い 注意点

ア 『譲渡人』は法人のみ
イ 対象債権は『指名債権』かつ『金銭支払目的』に限定される

9 株式譲渡の対抗要件=株主名簿への記載

株式の譲渡についても『対抗関係』が生じます。

<株式譲渡の対抗要件>

あ 株券不発行会社

→株主名簿への記載
※会社法130条1項

い 株券発行会社

→株主名簿への記載+株券交付
(株券交付は『効力要件』である)
※130条2項,128条1項

本記事では,不動産賃借権・動産・債権譲渡・株式譲渡の対抗要件について説明しました。
実際には,細かい事情や主張・立証のやり方次第で結論が違ってくることもあります。
実際に権利の所在(帰属)に関する問題に直面されている方は,みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。