賃貸住宅管理業者に対する監督と罰則|業務改善命令・登録の取消し・業務停止
1 賃貸住宅管理業者に対する監督と罰則|業務改善命令・登録の取消し・業務停止
賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律は、賃貸住宅管理業者に業務上の義務を課すだけでなく、守られていないときに国土交通大臣が動く手段を用意しています。業務の進め方を改めさせる命令から、登録そのものを取り上げる処分までが並んでいます。
どういう事業者が登録を受けることになるのかは、別の記事で説明しています。
賃貸住宅管理業の登録義務|200戸以上は登録が必要・無登録営業は罰則
本記事では、監督の手段とその段階、処分のあとの手続、国土交通大臣の報告徴収と立入検査、そして罰則の重さの分かれ方を説明します。
監督の対象になる業務上の義務の中身は、別の記事で説明しています。
賃貸住宅管理業者の業務上の義務|業務管理者・書面交付・分別管理・定期報告
2 結論——改善命令から登録の取消しまでの段階と、別に働く罰則
本記事の結論を先にまとめます。いずれの行も、後述の各節で条文を挙げて説明します。
監督の手段と、罰則の段
(ア)業務改善命令=適正な運営を確保するため必要があると認めるとき、必要の限度において、業務の方法の変更その他業務の運営の改善に必要な措置を命じられる(法22条)(イ)登録の取消しまたは1年以内の業務の全部・一部の停止=登録の拒否事由への該当、不正の手段による登録、法令または命令への違反が事由(法23条1項)(ウ)登録後1年以内に業務を開始せず、または引き続き1年以上行っていないときも取消しができる(法23条2項)(エ)登録が失効し、または取り消されたときは登録を抹消する(法24条)(オ)取消しと業務停止の処分をしたときは公告される(法25条)(カ)報告徴収と立入検査ができる。その権限は犯罪捜査のために認められたものと解してはならない(法26条)(キ)登録が失効・取消しになっても、締結済みの管理受託契約に基づく業務を結了する目的の範囲内ではなお賃貸住宅管理業者とみなされる(法27条)(ク)罰則は4段=1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金(法41条)/6月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金(法42条)/50万円以下の罰金(法43条)/30万円以下の罰金(法44条)(ケ)法人の従業者等が業務に関し違反行為をしたときは、行為者を罰するほか法人にも罰金刑を科す(法45条・秘密漏示を除く)(コ)廃業等の届出をせず、または虚偽の届出をしたときは20万円以下の過料(法46条)
3 監督の段階=業務改善命令・業務停止・登録の取消し
監督の手段は重さの違う3つで、条文の並びもその順です。業務の方法を改めさせるもの、業務を止めるもの、登録を取り上げるものです。順に見ていきます。
(1)業務改善命令(法22条)=業務の方法の変更その他の措置
法22条は、賃貸住宅管理業の適正な運営を確保するため必要があると認めるときは、その必要の限度において、業務の方法の変更その他業務の運営の改善に必要な措置をとるべきことを命ずることができると定めます。
要件は「適正な運営を確保するため必要があると認めるとき」で、具体的な義務違反があったことは条文上の要件になっていません。一方で「その必要の限度において」という歯止めが置かれています。この命令に違反すると30万円以下の罰金の対象になり(法44条8号)、さらに登録の取消し・業務停止の事由にもなります(法23条1項3号)。
法22条=必要の限度において、業務の運営の改善に必要な措置を命じられる
国土交通大臣は、賃貸住宅管理業の適正な運営を確保するため必要があると認めるときは、その必要の限度において、賃貸住宅管理業者に対し、業務の方法の変更その他業務の運営の改善に必要な措置をとるべきことを命ずることができる。
※賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律22条
(2)登録の取消しと1年以内の業務停止(法23条1項)=法令違反も事由
法23条1項は、各号のいずれかに該当するときは、登録を取り消し、または1年以内の期間を定めて業務の全部もしくは一部の停止を命ずることができると定めます。取消しと業務停止はどちらを選ぶこともできる形になっています。
事由は3つです。1号が登録の拒否事由(法6条1項各号。ただし3号を除く)への該当、2号が不正の手段による登録、3号が「その営む賃貸住宅管理業に関し法令又は前条若しくはこの項の規定による命令に違反したとき」です。
3号の射程は広く、同法の個々の義務違反だけでなく、賃貸住宅管理業に関する法令の違反が入ります。業務改善命令や過去の業務停止命令に従わないこともここに含まれます。
法23条1項=登録の取消し、または1年以内の業務の全部・一部の停止
国土交通大臣は、賃貸住宅管理業者が次の各号のいずれかに該当するときは、その登録を取り消し、又は一年以内の期間を定めてその業務の全部若しくは一部の停止を命ずることができる。
一 第六条第一項各号(第三号を除く。)のいずれかに該当することとなったとき。
二 不正の手段により第三条第一項の登録を受けたとき。
三 その営む賃貸住宅管理業に関し法令又は前条若しくはこの項の規定による命令に違反したとき。
※賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律23条1項
(3)1年以内に業務を開始しない・1年以上行っていないときの取消し(法23条2項)
法23条2項は、登録を受けてから1年以内に業務を開始せず、または引き続き1年以上業務を行っていないと認めるときは、登録を取り消すことができると定めます。
義務違反を理由とするものではなく、実体のない登録を整理するための定めです。1項と違って業務停止は選択肢になっておらず、取消しだけが置かれています。
法23条2項=1年以内に開始せず、または1年以上行っていなければ取消し
国土交通大臣は、賃貸住宅管理業者が登録を受けてから一年以内に業務を開始せず、又は引き続き一年以上業務を行っていないと認めるときは、その登録を取り消すことができる。
※賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律23条2項
4 処分のあとの手続=登録の抹消・公告・業務の結了
処分がされたあと、または登録が期間の経過などで失効したあとの扱いも条文が決めています。登録簿の整理、公表、そして進行中の業務の扱いです。
(1)登録の抹消と監督処分の公告(法24条・25条)
法24条は、更新を受けなかったことや廃業等の届出事由によって登録が効力を失ったとき、または法23条で登録を取り消したときは、当該登録を抹消しなければならないと定めます。登録簿は一般の閲覧に供されているので(法8条)、抹消は外から分かります。
法25条は、法23条1項・2項の処分をしたときは、国土交通省令で定めるところによりその旨を公告しなければならないと定めます。登録の取消しと業務停止については、抹消とは別に公告が義務づけられています。
法24条=登録が失効し、または取り消されたときは抹消しなければならない
国土交通大臣は、第三条第二項若しくは第九条第二項の規定により登録がその効力を失ったとき、又は前条第一項若しくは第二項の規定により登録を取り消したときは、当該登録を抹消しなければならない。
※賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律24条
法25条=取消し・業務停止の処分をしたときは公告しなければならない
国土交通大臣は、第二十三条第一項又は第二項の規定による処分をしたときは、国土交通省令で定めるところにより、その旨を公告しなければならない。
※賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律25条
(2)登録の取消し後も業務の結了の範囲では賃貸住宅管理業者とみなす扱い(法27条)
登録がなくなった瞬間に管理が止まると、困るのは委託者と入居者です。法27条は、更新をしなかったとき、廃業等により登録が効力を失ったとき、または登録が取り消されたときは、その者またはその一般承継人は、締結した管理受託契約に基づく業務を結了する目的の範囲内においては、なお賃貸住宅管理業者とみなすと定めます。
みなされる範囲は「結了する目的の範囲内」に限られます。新たに管理受託契約を締結することはできません。結了のための業務を行う間は、業務上の義務も引き続き当たります。
法27条=業務を結了する目的の範囲内では、なお賃貸住宅管理業者とみなす
第三条第二項の登録の更新をしなかったとき、第九条第二項の規定により登録が効力を失ったとき、又は第二十三条第一項若しくは第二項の規定により登録が取り消されたときは、当該登録に係る賃貸住宅管理業者であった者又はその一般承継人は、当該賃貸住宅管理業者が締結した管理受託契約に基づく業務を結了する目的の範囲内においては、なお賃貸住宅管理業者とみなす。
※賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律27条
5 報告徴収と立入検査(法26条)→犯罪捜査のためのものではない
法26条1項は、賃貸住宅管理業の適正な運営を確保するため必要があると認めるときは、業務に関し報告を求め、または職員に営業所・事務所その他の施設へ立ち入らせて業務の状況・設備・帳簿書類その他の物件を検査させ、もしくは関係者に質問させることができると定めます。
2項は、立入検査をする職員に身分を示す証明書の携帯と提示を義務づけています。3項は、立入検査の権限は犯罪捜査のために認められたものと解してはならないと定めます。行政目的の調査であって、刑事手続のための捜索ではありません。
報告をせず、虚偽の報告をし、検査を拒み・妨げ・忌避し、または質問に答弁せず・虚偽の答弁をしたときは、30万円以下の罰金の対象です(法44条9号)。
法26条=報告徴収と立入検査。権限は犯罪捜査のためのものではない
国土交通大臣は、賃貸住宅管理業の適正な運営を確保するため必要があると認めるときは、賃貸住宅管理業者に対し、その業務に関し報告を求め、又はその職員に、賃貸住宅管理業者の営業所、事務所その他の施設に立ち入り、その業務の状況若しくは設備、帳簿書類その他の物件を検査させ、若しくは関係者に質問させることができる。
※賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律26条1項
第一項の規定による立入検査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解してはならない。
※賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律26条3項
6 罰則の4段(法41条〜44条)=最も重いのは無登録営業と名義貸し
罰則は第5章に置かれ、法定刑の重さで4つの段に分かれています。何を守らせたいかが段の分かれ方に出ているので、段ごとに見ます。
(1)1年以下の拘禁刑の段(法41条)=無登録営業・不正登録・名義貸し
法41条は、1年以下の拘禁刑もしくは100万円以下の罰金に処し、またはこれを併科すると定めます。対象は、法3条1項に違反して賃貸住宅管理業を営んだとき、不正の手段により登録を受けたとき、法11条に違反して他人に賃貸住宅管理業を営ませたときの3つです。
いずれも登録制度そのものを潜脱する行為です。個々の業務上の義務の違反より重く扱われています。
法41条=無登録営業・不正登録・名義貸しは1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金
次の各号のいずれかに該当するときは、その違反行為をした者は、一年以下の拘禁刑若しくは百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
一 第三条第一項の規定に違反して、賃貸住宅管理業を営んだとき。
二 不正の手段により第三条第一項の登録を受けたとき。
三 第十一条の規定に違反して、他人に賃貸住宅管理業を営ませたとき。
※賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律41条
(2)6月以下の拘禁刑の段(法42条)=命令違反とサブリースの不実告知
法42条は、6月以下の拘禁刑もしくは50万円以下の罰金に処し、またはこれを併科すると定めます。対象は、法23条1項の命令に違反したとき、法29条1号に違反して故意に事実を告げず・不実のことを告げたとき、法34条1項・2項の命令に違反したときです。
行政処分に従わないことと、相手方の判断をゆがめる行為が同じ段に置かれています。2号と3号はサブリースの規制に関するもので、別の記事で説明しています。
サブリースの規制|特定転貸事業者の誇大広告・不当勧誘の禁止と書面交付
法42条=命令違反と故意の不告知・不実告知は6月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金
次の各号のいずれかに該当するときは、その違反行為をした者は、六月以下の拘禁刑若しくは五十万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
一 第二十三条第一項の規定による命令に違反したとき。
二 第二十九条(第一号に係る部分に限る。)の規定に違反して、故意に事実を告げず、又は不実のことを告げたとき。
三 第三十四条第一項又は第二項の規定による命令に違反したとき。
※賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律42条
(3)罰金だけの段(法43条・44条)=書面の不交付50万円以下・その他30万円以下
法43条は、法30条1項・31条1項に違反して書面を交付せず、または記載を欠く書面・虚偽の記載のある書面を交付したときなどを50万円以下の罰金としています。
法44条は30万円以下の罰金で、13の号が並びます。変更の届出を怠ったとき、業務管理者を選任しなかったとき、選任を欠く間に管理受託契約を締結したとき、締結時の書面の義務に違反したとき、証明書・標識の義務に違反したとき、帳簿の義務に違反したとき、秘密を漏らしたとき、業務改善命令に違反したとき、報告徴収・立入検査に応じなかったときなどです。
法43条=サブリースの書面の不交付は50万円以下の罰金
第三十条第一項若しくは第三十一条第一項の規定に違反して、書面を交付せず、若しくはこれらの規定に規定する事項を記載しない書面若しくは虚偽の記載のある書面を交付したとき、又は第三十条第二項(第三十一条第二項において準用する場合を含む。以下この条において同じ。)に規定する方法により提供する場合において、第三十条第二項に規定する事項を欠いた提供若しくは虚偽の事項の提供をしたときは、その違反行為をした者は、五十万円以下の罰金に処する。
※賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律43条
法44条=届出・業務管理者・書面・帳簿・標識・秘密などの違反は30万円以下の罰金
次の各号のいずれかに該当するときは、その違反行為をした者は、三十万円以下の罰金に処する。
一 第七条第一項の規定による届出をせず、又は虚偽の届出をしたとき。
二 第十二条第一項の規定に違反して、業務管理者を選任しなかったとき。
三 第十二条第二項の規定に違反して、管理受託契約を締結したとき。
四 第十四条第一項の規定に違反して、書面を交付せず、若しくは同項に規定する事項を記載しない書面若しくは虚偽の記載のある書面を交付したとき、又は同条第二項において準用する第十三条第二項に規定する方法により提供する場合において、同項に規定する事項を欠いた提供若しくは虚偽の事項の提供をしたとき。
五 第十七条第一項若しくは第二項又は第十九条の規定に違反したとき。
六 第十八条の規定に違反して、帳簿を備え付けず、帳簿に記載せず、若しくは帳簿に虚偽の記載をし、又は帳簿を保存しなかったとき。
七 第二十一条第一項又は第二項の規定に違反して、秘密を漏らしたとき。
八 第二十二条の規定による命令に違反したとき。
九 第二十六条第一項の規定による報告をせず、若しくは虚偽の報告をし、又は同項の規定による検査を拒み、妨げ、若しくは忌避し、若しくは同項の規定による質問に対して答弁せず、若しくは虚偽の答弁をしたとき。
十 第二十八条の規定に違反して、著しく事実に相違する表示をし、又は実際のものよりも著しく優良であり、若しくは有利であると人を誤認させるような表示をしたとき。
十一 第三十二条の規定に違反して書類を備え置かず、若しくは特定賃貸借契約の相手方若しくは相手方となろうとする者の求めに応じて閲覧させず、又は虚偽の記載のある書類を備え置き、若しくは特定賃貸借契約の相手方若しくは相手方となろうとする者に閲覧させたとき。
十二 第三十三条第一項又は第二項の規定による指示に違反したとき。
十三 第三十六条第一項の規定による報告をせず、若しくは虚偽の報告をし、又は同項の規定による検査を拒み、妨げ、若しくは忌避し、若しくは同項の規定による質問に対して答弁せず、若しくは虚偽の答弁をしたとき。
※賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律44条
7 法人も罰金刑を受ける両罰規定(法45条)・届出を怠れば過料(法46条)
法45条は、法人の代表者または法人もしくは人の代理人・使用人その他の従業者が、その法人または人の業務に関し法41条から法44条までの違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人または人に対して各本条の罰金刑を科すと定めます。法44条7号の秘密漏示だけが除かれています。
法46条は、法9条1項の廃業等の届出をせず、または虚偽の届出をしたときを20万円以下の過料としています。過料は行政上の秩序罰で、刑罰ではありません。
法45条=従業者等の違反行為について、法人にも各本条の罰金刑を科す
法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、第四十一条から前条まで(同条第七号を除く。)の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対して各本条の罰金刑を科する。
※賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律45条
法46条=廃業等の届出をせず、または虚偽の届出をしたときは20万円以下の過料
第九条第一項の規定による届出をせず、又は虚偽の届出をしたときは、その違反行為をした者は、二十万円以下の過料に処する。
※賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律46条
本記事は一般的な説明です。個別の事案にそのまま当てはまるとは限らず、一見似ている事案でも、事情が異なれば結論は異なります。個別的事情により、法的判断や主張として活かす方法、最適な対応方法は違ってきます。本記事でご説明したものと同様の問題に直面されている方は、みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。


