弁護士法20条2項|法律事務所は所属弁護士会の地域内——自宅執務が主でも違反

1 弁護士法20条2項|法律事務所は所属弁護士会の地域内——自宅執務が主でも違反

弁護士が法律事務所を置ける場所は決まっています。所属している弁護士会の地域内です。では、地域内に事務所を届け出てはいるが、実際には地域外の自宅で主に仕事をしている——この状態はどう扱われるのでしょうか。

本記事では、弁護士法20条2項が設置場所を地域内に限定している理由と、その判断が「職務上の本拠がどこにあるか」で決まることを説明します。地域外の自宅での執務が主である場合も違反になる、というのがこの条文の射程です。

そもそも何が「法律事務所」に当たるのかという判断基準は、別の記事で説明しています。

弁護士法の『法律事務所』の意味と判断基準

二つ以上の法律事務所を設けることの禁止は、別の記事で説明しています。

弁護士法20条3項|複数事務所の禁止と法律事務所の単一性の判断基準

2 結論——地域内に設けるべき法律事務所は職務上の本拠であること

この条文について押さえるべき点をまとめます。いずれも後述の各節で条文と文献を挙げて説明します。

弁護士法20条2項の押さえどころ

(ア)法律事務所は、その弁護士の所属弁護士会の地域内に設けなければならない(弁護士法20条2項)(イ)設置場所を地域内に限定しているのは、弁護士会が指導・連絡・監督(同法31条1項)をするために必要だからである(ウ)他の弁護士会の地域内へ法律事務所を移すときは、所属弁護士会の変更(登録換え)が必要になる(エ)地域内に設置されるべき法律事務所は、弁護士の職務上の本拠でなければならない(オ)したがって、事務所そのものを地域外に設置する場合にとどまらず、地域外にある自宅での執務が主である場合も20条2項違反となる(カ)20条2項違反は、多くの場合20条3項違反(複数事務所の禁止)を伴うことになる(キ)もっとも、地域外に設けられた法律事務所における受任行為と、この受任に基づく訴訟行為は有効と解すべきだとされている

3 条文と趣旨——弁護士会が指導・連絡・監督をするために設置場所を地域内に限定

弁護士法20条2項は、法律事務所の設置場所を所属弁護士会の地域内に限定しています。弁護士は弁護士会に入会しなければ業務を行えないので(弁護士法8条・9条・72条)、活動の中心地にある弁護士会に入会し、その地域内で事務所を設けることになります。

文献は、地域内に限定している理由を、弁護士会が指導・連絡・監督(弁護士法31条1項)をするために必要だからだと説明しています。あわせて、他の弁護士会の地域内へ事務所を移すときは所属弁護士会の変更、つまり登録換えが必要になるとしています。

弁護士法20条2項=法律事務所は所属弁護士会の地域内に設けなければならない

法律事務所は、その弁護士の所属弁護士会の地域内に設けなければならない。

※弁護士法20条2項

入会の必要と、設置場所を地域内に限定する理由

弁護士は、日弁連及び地方裁判所の管轄区域毎に設けられている弁護士会(個し東京は三つ)に入会しなければその業務を行うことができないから(法8条・9条・72条)、弁護士は、その活動の中心地にある弁護士会に入会し、その地域内で適宜法律事務所を設けることになる。
本条2項は、法律事務所の設置場所を、その弁護士の所属弁護士会の地域内に限定しているが、それは、弁護士会が指導・連絡・監督(法31条1項)をなすために必要だからである。
法律事務所を他の弁護士会の地域内に移転する場合は、所属弁護士会を変更(登録換え)する必要がある。

※日本弁護士連合会調査室編著『条解弁護士法 第4版』弘文堂2007年p145

4 地域内に設けるべき法律事務所は職務上の本拠——地域外の自宅執務が主でも違反

ここがこの条文の射程です。文献は、所属弁護士会の地域内に設置されるべき法律事務所は弁護士の職務上の本拠でなければならないとし、そこから、事務所そのものを地域外に設置する場合にとどまらず、地域外にある自宅での執務が主である場合も20条2項違反になるとしています。

つまり届出の形だけでは決まりません。届出をした事務所が実際に職務上の本拠になっているか、が判断の軸になります。

地域内に設置されるべき法律事務所は職務上の本拠であることを要する

所属弁護士会の地域内に設置されるべき法律事務所は、弁護士の職務上の本拠でなければならない。
従って、法律事務所を所属弁護士会の地域外に設置する場合にとどまらず、所属弁護士会の地域外にある自宅での執務が主である場合も本条2項違反となる

※日本弁護士連合会調査室編著『条解弁護士法 第4版』弘文堂2007年p145

5 裁判例——自宅でのみ執務した例、自宅執務が主であった例、登録換えを拒まれた例

文献が挙げている裁判例は3件です。いずれも別の記事で説明しているので、ここではどの形の事案かだけを示します。

所属弁護士会の地域内に法律事務所を設置せず、地域外にある自宅で職務を行っていた例です。

東京高判昭和32年2月12日|所属弁護士会の地域外の自宅で業務・会費2年余の滞納→退会命令は正当

所属弁護士会の地域内に法律事務所を設置しながら、地域外にある自宅での執務が主であった例です。

東京高判昭和38年2月25日|届出事務所で執務せず封筒・名刺に別の事務所→弁護士法20条違反で退会命令

同じく地域外での執務が問題になりましたが、争点は登録換えの進達を拒めるかでした。20条違反があることを認めたうえで、拒絶の可否を弁護士法12条の側で判断しています。

東京高判昭和50年1月30日|やむを得ない事情で地域外に執務→20条違反でも登録換の進達拒絶事由に当たらない

6 20条2項違反は多くの場合3項違反を伴うが、地域外の事務所でした受任行為は有効

最後に二つの補足です。文献は、20条2項違反は多くの場合20条3項違反(複数事務所の禁止)を伴うことになると述べています。地域外に事務所を構えれば、届出事務所と合わせて二つになるからです。複数事務所の禁止そのものは、別の記事で説明しています。

弁護士法20条3項|複数事務所の禁止と法律事務所の単一性の判断基準

もう一つは、違反があったときの行為の効力です。文献は、所属弁護士会の地域外に設けられた法律事務所における受任行為と、この受任に基づく訴訟行為については有効と解すべきだろうとしています。昭和23年の最高裁判決を参照として挙げていますが、本記事ではその判決自体を確認できていないため、文献の説明として示します。

2項違反は3項違反を伴う/地域外の事務所での受任行為の効力

なお、本条2項違反は、多くの場合、本条3項違反を伴うこととなる。
但し、所属弁護士会の地域外に設けられた法律事務所における受任行為及びこの受任に基づく訴訟行為については、有効と解するべきであろう

※日本弁護士連合会調査室編著『条解弁護士法 第4版』弘文堂2007年p145

7 おわりに

本記事では、弁護士法20条2項が法律事務所の設置場所を所属弁護士会の地域内に限定している理由と、その判断が職務上の本拠の所在で決まることを説明しました。届出の形だけでは決まらず、地域外の自宅での執務が主であれば違反になります。

そもそも何が「法律事務所」に当たるのかという判断基準は、別の記事で説明しています。

弁護士法の『法律事務所』の意味と判断基準

二つ以上の法律事務所を設けることの禁止は、別の記事で説明しています。

弁護士法20条3項|複数事務所の禁止と法律事務所の単一性の判断基準

本記事は一般的な説明です。個別の事案にそのまま当てはまるとは限らず、一見似ている事案でも、事情が異なれば結論は異なります。個別的事情により、法的判断や主張として活かす方法、最適な対応方法は違ってきます。本記事でご説明したものと同様の問題に直面されている方は、みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。

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